2020年02月08日

しっかり視ていた社会保険審査会


先週の2月1日(土)に、短期給付である退職(平成30年9月8日資格喪失、資格喪失後の給付は、中断があると以後の給付は復活しない旨の規定がある)後の傷病手当金を止められた事件(20191221(土)アップ「社会保険審査会の公開審理には極力出席すべき」右変形性膝関節症原因の事件)に係る社会保険審査会からの令和2年1月31日付け裁決書が届いた。

予想通り完勝であったが、私は、3人の参与が皆「請求人の主張を認めるべき」との意見であったと思っていたが、裁決書には、なぜか、「(1名)」と書かれていた。

公開審理では、審査長以外の2人の委員の発言が多くの時間を占めた。質問というより、むしろ、保険者に対する追及の感じであった。

@ 委員:「本件について、病状の変化について主治医に照会したのはなぜですか。」、保険者代表:「来社時に、杖もなく普通に歩いているように見えたからです。」。
A 委員:「退職後のケースでは、全ての場合にこのような症状照会をしているのですか。」、保険者代表:「いいえ。」。
B 委員:「平成31年4月以降の病状について、主治医に照会をしていますか。」、保険者代表:「照会はしていません。」。
C 委員:「3者択一の医師への照会状は、一般的に使用している様式ですか。それとも、本件申立て人用に独自に作ったものですか。」、保険者代表:「研修で使用したサンプルを加工したものです。」等々のやり取りが続いた。

私が、当初、この事件は、逆転は無理!? と懸念したのは、資料に「療養を担当した医師が本人の訴えにより労務不能とした為」との表現があったからである。

しかし、よくよく調べてみると、主治医は、そのような判断をしていないのである。結論から言うと、「重作業は不能であるが、軽作業ならできる」という医学的判断である。

その事実が、「療養を担当した医師が本人の訴えにより労務不能とした」と変わってしまったのは、三者択一の照会状に、一番近い状況に〇を付したからである。

これに対して、私は、医師が錯誤した誘導に相当すると主張し、保険者は、自由記載欄があるので、誘導に該当しないと主張したのである。

これを問題ありと見た委員が、上記Cの的確な質問をしたのである。

本件の争点は2つで、一つは、主治医の診断書の記載が本人の訴えのみに基づくものかどうか、であり、今一つは、軽作業なら就労可能な場合に、既に退職し、職務変更ができない場合にも就労可能と判断して良いのかどうかの問題であった。

実は、後者の解釈については、既に定着した判断が通知として出ていた(末尾(参照)参考)のであるが、私はこの点について、それを知らないので、推論において主張したが、これを承知している社会保険審査会は、専ら前者の事実関係等について審理したのである。


このような事情で、当初困難に思えた事件も無事解決したが、後始末もある。

裁決書が届いたのが、2月1日(土)、保険者は、その後6カ月以内に提訴もできるのである。

そこで、実務上、公開審理参加の効果が現れる。保険者は3人の代理人が参加したが、私は、3人ともが提訴は無理と判断していると分かった(公開審理に参加していなければ、これは分からない)ので、2月6日(水)に保険者の担当者に電話したのである。

未払い分は、本人が審査請求した平成30年12月分〜平成31年3月分と支給申請書提出済みの平成31年4月分、及び未申請の令和元年5月分〜令和元年6月分である。

この後の対処について、担当者に打診したところ、既に支給申請書が出されている平成31年4月分までは、次回支給日の3月19日(木)に一括支払いを予定しているとのことであった。

未申請の2カ月分については、申請書は、1枚で構わないので、医師の診断書と共に提出してもらえば、次回支払日に間に合えば、全て同日に支払っていただけるとの回答であった。

社会保険審査会は、私の主張と下記参考の解釈は、相当かつ合理的なものということができると判断した。

公開審理出席のメリットは、請求容認のみならず、後処理の円滑化にも役立つのである。

(参考)
法第99条1項「療養のため労務に服することができないとき」(労務不能)の解釈運用について 平成15年2月25日 保発第0225007号

「被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により労務可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、それによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能に該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお、労務不能に該当するものであること。」
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2020年02月01日

裁判所は、なぜ入口論においてまで国の味方をするのか ―障害年金支分権消滅時効に係る異議申立て却下事件について―


令和2年1月15日、名古屋地裁岡崎支部において、単独制の裁判ではあるが、標記について、明らかに国に味方した棄却判決が下された。想定の範囲内のことではあるが、残念なことである。これはあってはならないことであるので、最高裁まで争い逆転させる。

理由は、争点のすり替えと、一般論としていえることを事案の異なる本件に当て嵌めたことである。

これは、裁判の体をなさない余りに酷い判決であるので、後日、これに対する控訴理由書(案)を何回かに分けて公開することにする。

本日は、この誤判決の概要を紹介する。

この裁判では、裁定の内容としてなされた年金決定通知書への「付記」の行為、詰まり、「裁定とは、切っても切り離せない、年金決定通知書に同時不可分一体として一件の例外もなくなされた時効消滅した旨の付記の行為」の行政処分性を問題としたのですが、それを、「本件通知」と定義してまで、別の物として、単なる事実行為であるから、行政不服審査法の対象とはならないと判示したのです。

本件年金支分権の消滅時効については、「裁決例による社会保険法」を著し、年金支分権の消滅時効については第一級の見識をお持ちの加茂紀久男氏が、支分権時効問題も不服申立ての対象となると判断しているのは、本件「付記」を裁定の内容と考えているからです。

にも拘らず、この判決は、「会計法31条1項後段により、その消滅時効については時効の援用を要せず、また、時効の利益を放棄することもできず、時効消滅の効果は絶対的に生じるものとされていた。」との前提事実(当事者間に争いがないか当裁判所に顕著な事実)を置いて、棄却したのです。これは、時効が完成してる場合に初めていえることですので、この手法は、論理法則にも経験則にも反し、基本からして誤っています。

時効の援用は、どんな場合であっても、消滅時効が完成して初めて問題になる事柄であり、未だ時効消滅していない本件異議申立て事件、又は、時効消滅していないと主張している「本件異議申立て」については、「援用を要せず」の規定は、全く関係しない。従って、本件支分権は、会計法が適用されるからといって、順次自動的に消滅し、その効果が絶対的に生じることは絶対にあり得ない。

ここまで無理をして国を勝たせる必要はどこにあるのだろう。瀬木比呂志教授がいうように、最高裁や最高裁事務総局の意向を忖度してのことだとしたら、それは本件を担当した裁判官の思い違いである。

本題について国を勝たせることは、国にとって有利な側面はあるが、入口論について国を勝たせても百害あって一利なしである。
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2019年12月21日

社会保険審査会の公開審理には極力出席すべき


今週の木曜日、12月19日には、標記の公開審理に代理人として出席してきた。

退職後の傷病手当金を7カ月分止められたという珍しい事件であるが、結果は、請求が容認されるものと思っている。3人の参与は、共に「支払うべきである」と発言していただけたし、委員の二人は、私に確認事項を済ませた後、保険者代表に対する厳しい質問の連続であった。

保険者代表は、3人が出席されたが、誰もが回答できない場面もあり、私が余分な口出しをせざるを得なかったのである。

担当者への質問時、これに回答できないのは、色々変なことになると思った私は、私が余分なことを言ってはいけないですが、「この事務をやったのは、前任者で、担当者が替っています」と発言し、収めたのである。

以下、なぜ公開審理に出席すべきかについてお話しする。この事件は、ご本人が知的障害者であり、療育手帳の保持者である。ご本人は、4度も社会保険審査官に対して口頭陳述により審査請求をしている。

しかし、その請求内容も回答も、資料はないし、私が、担当した社会保険審査官に直接聞いても教えてくれなかったのである。勿論、個人情報開示請求をすれば、入手できたかもしれないが、それまでする必要性すら判断できないのである。

公開審理の案内時には、判断に必要な資料はほとんど添付されており、審査請求書(写)を見ると、「傷病手当金を支給して欲しい」と書かれているだけで、理由が全くなく白紙であったのである。これでは、本人の想いは、社会保険審査官に伝わっているわけがなく、審査請求が認められることはない。

このこと自体、公開審理の案内がなければ分からないことであり、今まで申立人が主張していない部分である。

2つ目の理由は、関係各氏から質問をしていただける点である。審査長からは、私に対して、本人と会ったことがあるかとの質問をいただいた。勿論会っており、3回も詳しい事情をお聞きしていると回答できた。

また、内情についても、お話しでき、実体を正しく伝えることができたのである。この事件は、仲間の社労士から依頼された事件で、私も最初は、主治医が、「右変形性膝関節症の為労務不能ではないが、本人の訴えにより労務不能とした」(実は、これは、3者択一で、他の2事項に該当しなければ、主治医は、これを選択しなければならない設定になっていた)と言っているのであれば難しいと考えたこと。しかし、詳しく調べてみると、そうではなく、主治医は、医学的見解として、重労働はできないが軽作業はできるといっているにすぎないことが分かったのである。従って、退職者に代替作業を与えることはできず、「療養の為労務不能」に該当することが証明できるのである。

他の委員からは、定年少し前に退職している事情を聴かれたので、これについても、本人は、「辞めさせられた」と言っており、「これに対しても不満があるようです。」と話すことができたのである。

私も当然疑問を持っていた事柄に対しても質問をしてくださり、私の社会保険審査会に対する評価も随分と上がったのである。

その内容というのは、主治医に対する3者択一の質問についてである。「これは本件に限って作成されたものか、一般的に使用しているものか」という点についてである。関連質問として、退職者に対しては、全て「病状照会」状を出しているのかとの的確な質問もあって、私も詰問したいところでもあったので、私の溜飲も下がった。

3つ目は、保険者から、「保険者意見陳述書」が出されており、この矛盾点等について、私から追及しなくても、2人の委員がこれでもかというほど質問をしてくれたのである。保険者代表は、3人で相談しても何度も回答できないことがあり、私はこの様子から容認の裁決を確信した。

最後には、書類には書けなかったこととして、短期給付まで止められて困窮も甚だしいので、早急にお支払い願いたい旨の一言も発言できた。

副次的なメリットもあった。帰りのエレベーターでは、お3方と同室となり、担当者(女性)から、丁寧な挨拶をいただき、色々な資料要求や調査依頼をした私に対して、決して悪い印象をお持ちでないことが分かったのである。

実は、妻が若いころ、この会社の企業内高校の音楽の講師をしていたこともあったのである。実に、世間は狭い。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 13:33| Comment(0) | 13 社会・仕組み