2017年12月17日

社労士法に基づく私の補佐人経験について


昨日は、愛知県社労士会による「補佐人シンポジウム」に参加してきた。帰宅後ブログを更新する予定であったが、その後の懇親会にも参加した等で、2週続けて日曜日の更新になってしまった。

初めに、愛知県弁護士会副会長の長谷川ふき子先生に基調講演をいただき、我々5人の社労士パネリストが一人約10分間の経験談を発表した。その後、質疑応答に移ったが、本日は、主に。その10分間の私の発表内容の概要及び私の感想を含めアップした。

既に実施済みの経験回数でいうと、合計6回で、地裁1回、高裁3回、最高裁2回です。事件の内容は、いずれも国を相手方とする行政事件です。内5件は、年金支分権消滅時効の成否を争う事件であり、結果、今のところ、勝訴実績はありません。残り1件は、障害年金の裁定請求が診断書の誤記により事後重症とされたため、訂正後の診断書を提出し障害厚生年金の認定日請求を求めた事件です。これについては、控訴審から受任したが、判決はまだ出ていません。

未実施の事件では、セクハラ・パワハラの労働者側からの事件につき、あっせんに入った場合の代理人、及び訴訟になってしまった場合の補佐人の業務につき受任しています。これについては、事前の話し合いを2回程度予定しており、1回は、相談・指導業務の立会人としての立場で、相手側受任弁護士及び会社代表1名と初回の話し合いを済ませています。

初回は、話し合いというより、この時の弁護士は、代理人というよりは使者の役割しか果たしておらず、当方の質問にも肝心なところで答えていませんでした。聞き取った内容を録音しながらパソコンに投入しただけです。従って、次回までに、行為者の具体的な言動について、思い出せる内容を追加した後、その資料を基に行為者等に事実関係を確認し、2回目の話し合いをすることとなりました。

私は、できればこの話し合いで解決できればこれに越したことはないと思っており、それを進め易くする要素として、裁判になった場合の補佐人まで受任しているという事実が少し役に立っているように感じました。
 
前者の行政事件について概要を説明すると、障害年金の遡及請求が認められた場合、裁定請求時点を基準にして遡及5年間分は支払ってもらえるが、それ以前の年金は消滅時効が完成しているとして支給されない運用になっていることが違法というものです。詰り、全期間分の年金を請求した事件です。

被告側保険者国は、受給要件等の年金法の規定は明確であり、裁定請求しさえすれば、実際に年金は支給されるのであるから、月単位で支給されている最初の支分権は、裁定請求の翌月に発生し、その消滅時効も発生月の翌月の初日に進行すると潜在的抽象的に観念することができ、以後支払期月ごとに同様としています。

従って、そこから5年が経過するごとにそれぞれ消滅時効が完成していると主張し、ほとんどの裁判所もこの国の考え方を支持しています。

しかし、この潜在的抽象的観念論は、社会保険審査会や、法務省内社会保険訟務実務研究会からも、国の考え方を否定されていますが、実際には、通知や事務連絡よりも効力は弱いとされている旧社会保険庁の3課長から発出されている内簡により上記の運用がされてしまっています。

このような一般の方たちには分かりにくい事件であるので、障害年金支分権消滅時効の問題自体が一般には広まっておらず、私の補佐人就任は、弁護士の先生からの依頼によるものではなく、私が弁護士の先生を選んでいるという特徴があります。

詳しい内容は、時間制限内には説明不能につき、以下は、補佐人としてお役立ちできた点につき、論点・争点を紹介し、聞き手の考察を促しました。

・裁定に裁量権!?
・過去分の支払期月は1回!?
・行政処分は裁定時!?
・不服申立て期間との整合性!?
・年金法の受給権保護規定(差押えや公課まで禁止)!?
・初診日証明を含む裁定が停止条件(法定条件)!?
・実際の権利行使可能性!?
・付記は単なる事実の通知か時効の援用か!?
・3課長発出の内簡による運用!?
・2020年4月施行の改正民法の明文の規定に反する!?
・民法第158条1項の類推適用等!?

この事件については、私が、成年後見人として平成24年4月20日に名古屋高裁で逆転勝訴した新聞記事を見た受給権者等から、代理人を立てて全国で訴訟が提起されていますが、本年10月17日に、最高裁が札幌高裁から上がってきた左下腿切断の障害について、判決を出したので、これ幸いと下級審の裁判官がこれを引用して、精神の障害の事件まで煽りを食っているのが現状です。

私が全く係っていない事件の突然の最高裁判決により、私が係っている事件まで大きな影響を受け不本意ですが、これは考えようで、より多く出されている精神の障害に係る上告受理申立てを選ばなかったのは、最高裁は、より簡単な方を選んだのではなく、精神の障害については、請求の可能性を残したとも考えられます。従って、私は、一刻も早く、2件目の勝訴実績をお示しできるよう日夜頑張っています。具体的には、来年の3月か4月には可能と考えています。

5名のパネリストの発表の後、コーディネーターから2点の質問がありました。
1点は、就任に当たり注意すべきこと、してはいけないことであり、2点目は、補佐人として求められる資質や技能、補佐人制度の可能性です。

後者について、基調講演後パネリストに加わった長谷川弁護士は、怒りが必要であり、粘りのある方と結論付けられました。これについては、お一人のパネリストから、「怒り」ではなく、「憤り」ではないかとの意見もありました。言葉や定義は重要である旨の念押しもあり、この方の強い信念を感じました。

なお、この方は、障害年金支分権消滅時効については、私の考え方と同じである旨の意見表明をしていただけました。

私は、このように答えました。「おかしいことはおかしいと考えることができる力」である旨、そして、受任弁護士は、一般的な法律の知識等は十分にお持ちでも、私の争っている理論が主軸になる事件でも、通知、運用、実務等の実態についてはご存じないことがほとんどであるので、この点に係る主張や証拠提出に大きなお役立ちの可能性がある。負けてしまっては、元も子もないので、この点での価値評価が分疑点となる、と。

面白いお話が長谷川弁護士からありました。この方は、東京理科大学理学部化学科と東京大学法学部を卒業されたリケジョです。それ故の発言と思われるが、「裁判官は、法律には詳しいが、それ以外のことに関しては、幼稚園生と思ってください」とうものである。私は、少し前までは、中学生と思っていましたが、間違っていました、といわれた。

実は、この点が大事なことで、我々の主張が理解されないのは、ここに誤解があったのではないかということです。分かってくれる筈だと思っても、伝わっていない。幼稚園生にも分かるように丁寧に主張説明をする必要があるのです。私は、今まで、分かっていても、政治的判断で故意に国よりの判決を下していると思っていたが、長谷川先生の説をなるほどと思いだし始めました。

これらの経験から補佐人制度の発展可能性について少し触れます。我々の担当する、労働や年金の分野は、弁護士の先生方は忙し過ぎて、中々研究が進んでいない場合が多いという特徴があります。

従って、法令と実務との関係、攻めどころ、矛盾点、証拠の収集等我々社労士でなければできない、又は困難な部分について、弁護士の先生に喜んでいただける部分があり、制度の利用価値は高いものと考えます。

実施上の注意点としては、受任弁護士の先生は、必ず主張の軸としている部分をお持ちですので、それを補充する主張とするのが重要と考えます。これは、考えられないことですが、受任弁護士の先生の主張と矛盾する表現があれば、早めに打合せをして修正する必要があります。一言一句の誤りも許されません。

なお、実務上は、訴状の段階から補佐人が登場することは少ないように思いますので、相手方の主張に対抗する場面での準備書面補充書等は、訴状の場合とは異なり、十分な時間のない状態で対応しなければならない場合がほとんどです。従って、常日頃、受任弁護士の先生とは、基本的な部分の考え方をすり合わせしておく必要があるものと考えます。
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2017年12月03日

本日は社労士の日


本日(アップした日は翌日になってしまったが)は社労士の日である。全国で色々な催しが行われていることと思うが、愛知県社会保険労務士会では、大きな新聞広告を出したり、市の広報誌に載せていただいたりして、例年各支部において労働・年金問題に関する無料相談会を実施している。

今年は、一般社団法人社労士成年後見センター愛知においても、この会場を借りて、成年後見についても無料相談を実施することとなった。私は、この法人の三河中支部代表の理事の役をお受けしているが、岡崎を会場とする三河中支部の担当者は、若い人を配置させていただき、私は、何かあったら岡崎まで出向く用意をしていた。

ところが、結果、副会長からの急遽の依頼で、本日は三河西支部、会場は刈谷のアピタ、明日は知多支部、会場はパワードーム半田と連続で応援に出向くこととなってしまった。

本日に関しては、統合失調症の妻を娘たちも預かれなかったので、本人には、家から出ないように言い聞かせ、自宅の玄関ドアーに、危険だから一日中家から出ないようにと大きな文字で張り紙をして出かけたのであるが、買い物袋をもって出かけてしまい、大騒ぎとなって日付けの変わる頃になってブログを書くこととなってしまった。

本日の相談者は、労働・年金関係が15名、成年後見が3名であったが、年金の相談者が一番多かった。考えてみると、成年後見の相談をしたい方は、ご本人が直接買い物に訪れることは少ないのかもしれない。需要自体は多くあるのであるから、地域包括センター等への日頃のアプローチの欠如を反省したところである。

こちらの関係では、相続の関係、特に、遺言に関する悩みをお持ちの方が多いように感じた。しかし、私が相談を受けた方は、新聞広告等で予め相談を予定してみえた方ではなかったので、本当はもっと深く相談したいが当面の買い物優先といった感じの方ばかりであった。

まだまだ、成年後見自体の知名度は低いようで、内容を正確に理解しておみえの方は更に少ないように感じられた。さて、明日は、どんな状況だろうか。

1週間あるとブログにアップしたいテーマは、いつも2〜3は頭に浮かぶが、必然的に、その内緊急性の高いものを選ぶことになっている。障害年金については、一般的な裁定請求絡みの記事ではなく、かなり狭い範囲に限定された」支分権消滅時効の運用誤りを正すべき活動」関係に絞られてきているので、相当に専門的な内容に至ってしまっている。

にもかかわらず、多くの定期訪問者がおみえで、最近は、読者に朗報となる明るい記事はほとんどないのであるが、定期訪問者はむしろ増えている。身体(左下腿切断)の障害に係る最高裁判決を始め、最近逆風が吹き始めたが、それにより、運用の違法自体が替わるものではないので、これからも頑張っていく旨を宣言し、明日も行事が続くので、本日はこれで失礼することとする。
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2013年08月17日

更正決定申立て 無料相談の拡大!!

 消された年金奪還請求について、いよいよ佳境に入ってきた。社会保険審査会の適法性の審査だけ(とはいうものの、中味まで見ているので、通常の案件より長くかかったのかもしれない)で7カ月以上待たされたが、その挙句の果てに、門前払いである。しかも、明らかに、その判断の基礎となる言葉の定義を誤認しているのである。

 事務局に説明し、更正決定申立ての了解を得て、早速、更正決定申立書を作成して投函した。誤認部分は、決定(裁定)通知書の「時効消滅不支給通知部分」を、行政処分としているところである。国の、法廷での釈明は、この部分は、「単なる事実の通知であって、行政処分性はない」としているのです。

 従来は、門前払い(却下)されないための対策に、多大な労力やスペースを割かざるを得なかったが、偶然ではあるが、今後は本論に傾注できる環境になった。コンパクトに核心を突く表現が可能となり、幸運(巡り合せ)に感謝している。

 従って、この一方的不支給の行為が、何の法的根拠もなく、単なる事実の通知によってなされていることになります。既に、最高裁で、国民年金法第16条(厚生年金保険法第33条)の意義(支分権の行使可能時点 ≒ 裁定と支分権発生時点 ≒ 消滅時効の起算点)関する正しい解釈が出されており、同じ考え方は、社会保険審査会においても3回も裁決例があります。そして、これに反する最高裁判例はありません。

 この考え方によれば、支分権の行使可能時点( ≒ 支分権の発生時点 ≒ 消滅時効の起算点)は、決定(裁定)通知が受給権者に届いた日の翌日からとなります。従って、その日から5年以内であれば、奪還請求ができるのが当然であり、国は、既に、履行遅滞に陥っています。

 また、平成19年7月6日以降は、会計法の適用がなくなり、支分権の消滅時効に関する規定、「援用を要さず、放棄もできない」という部分が排除されたのです。これに伴い、平成20年には、衆議院においても参議院においても、公的年金の時効の規定は、基本権についても、支分権についても撤廃すべきであるとの質問主意書が提出され、これについて、時の内閣総理大臣が、「個別の事情を勘案して時効の援用を検討し、民法の規定に基づき、個別に時効の援用を行った場合に限り、当該権利が時効消滅することとされたものである」と答弁しているのです。ところが、現実の運用はそのようにはなされていないので、その面でも国の運用は不当です。また、こんな時代に、議論の入り口の段階で数カ月も使う愚は改善の余地があります。

 私が、成年後見人法定代理人として、争った事件では、名古屋高裁で完全勝訴していますが、「国は、判決理由とは異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することができない」とまで明言されています。しかも、国第16条等についても、民法第158条1項の準用、又は法意に照らした解釈についても、両方で同じことを言われているのです。

 それでは、この場合の請求方法として、何がベストかとなりますが、今のところ、社会保険審査会への再審査請求を目指すのが最善と考えます。3回も先例があり、しかも、3回目には、社会保険審査官等が、同じ間違いを繰り返すので、裁決としては異例の、遺憾の意の表明までされているので、請求を認めてもらえる可能性が高いと言えます。行き成り社会保険審査会へは再審査請求はできないので、前段の措置が必要ですが、これは、極端な場合、本人でも、ご家族でもできます。もし、社労士に委任する場合でも、弁護士の場合の着手金と比べたら、一般的には格段に安い筈(現在は、自由報酬制ですので、この場合は見積書をもらってください)です。また、訴訟のような、印紙代も郵券代も不要で、一番大きなメリットは、比較的短期間で結論が出ることです。そして忘れてはいけないことは、時効中断上は、訴訟と同様の効果があることです。

 先に紹介した名古屋高裁の事件の上告受理申立てが却下されない段階で、訴訟を提起し、勝訴(今後は勝訴する筈)しても控訴され、これに勝っても必ず上告受理申立てとなります。その都度高額の着手金を払っていたら大変な額になります。

 時の経過と共に、更正決定の成り行きも明らかになりますので、読者の方を含め、楽しみにしていていただきたい。ご注意いただきたいのは、消滅時効により不支給とされた公的年金のある方は、裁定から5年以内であれば、合法的に奪還請求ができますが、裁定通知を受けてから5年経過すると、支分権(支払期月ごとに受ける年金の具体的請求権)の消滅時効が完成してしまい、請求は不可能となってしまうことです。このため悔しい思いをされた相談者の方もみえましが、どうすることもできませんでした。

 本件に関する無料相談をここ1年間ほど恒常化して全国対応で実施してきましたが、従来は、正式には、事務所、又はメールに限定していました。母の初盆を期して、これにFAX、又は郵送(返信用封筒要)による相談を加えたので、IT環境にない方等も、遠慮なく相談してください。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:42| Comment(1) | 5 広報