2018年12月15日

セクハラ・パワハラあっせん事件の和解成立


今週12月10日(月)、本年5月15日(火)に社労士会労働紛争解決センター愛知にあっせんを申請していたセクハラ・パワハラ事件の和解が最後のチャンスである第3回期日で成立した。他の機関に依頼していたら、スタートまでに待たされ、1回の期日で終わってしまうので、結果、本件のように相手方とのやり取りの中で証拠固めをするより仕方ない事件では、地元の機関を選択したのは正解であった。

相手方代理人弁護士は、セクハラ・パワハラ(相当因果関係、有責性のある)の事実自体の存在を否定し、従って、使用者には安全配慮義務に基づく責任はないというものであったが、搦手からの攻撃の効果があったのか、和解は何とか成立した。

相手方は、解決金については、30万円は当初から払う意思があったようであるが、申立人がこれで納得できる事件ではなかった。まだうつ病は完治しておらず、不本意な退職を迫られた身としては、これで清算条項まで入れられた和解はできず、同様の被害者も多くいたので、依頼者は弁護士を含めあちこちに相談していたのである。

当方に積極的な保有証拠がなかった事件であるので、結果、80万円で和解できたことにはほっとしている。当初の請求額は360万円であったが、それは証拠の揃った類似事件からの概算であったのでこれとは比較できない。依頼者も、一人では、とても続けてこれなかった事件であると振り返り、和解には喜んでいただけた。

メールやライン情報を申立人は一刻も早く忘れたく削除していた等の関係で直接的な証拠を保持せず、専門業者にラインの情報の復活依頼もしたのだが、事件となった事実以前のごく一部のデータしか復活できず、これについては効果はなかった。

通院回数も相当数あったのだが、主治医が労災申請等に消極的な方であったので、取り寄せたカルテにも、労災がらみの表現は意識的に書かれておらず、主治医は、仮に申請したとしても、「苦労ばかり多くて、せいぜい50万円も取れればよいところ」との姿勢であった。

相手方には、セクハラ・パワハラのあったこと自体は認めさせようと、これ以外に原因となる要因はないことを色々な側面から主張したが、相手方は、最後まで、指導・教育の範囲内、業務上の必要の範囲を越えていない等争う姿勢であった。

それではどうして和解ができたのか? となるが、主な理由は、残業代の誤った支給方法にあったものと思われる。

加害者(被疑者)T.Mは、「帰るな」、「明日までにやれ」と命令しており、相手方も、その言葉自体を否定はしていなかった。岡山から豊田への電話の回数については、1日に50回程度との当方の主張に対して、1日に10回程度はあった旨を弁解している。そして、その内の2〜3回は、昼食時間帯に及び、食事やトイレの時間が取れないほどであったのである。この弁解は取りも直さず書面による自白である。

先の残業命令についても、労使協定を結んでいる形跡はなく、残業手当の支払いが、日ごとに30分未満の端数が切り捨てられており、労災申請については、平均賃金の回答はあったものの、事業主が記載押印(企業コードを含む)して返送すべき、申請書自体を返してこない事実もあった。

残業代の請求については、申立人は5万円ほどで、ほとんどの期間分が時効対象であったのだが、相手方はそれでも時効援用を主張してきた。しかし、仮に労災の申請をすれば、相手方は、少なくとも約250名の違法な残業分の清算をしなければならなくなり、大きなダメージを食らう。

加えて、当方のライン情報がセクハラ・パワハラの事実前のものであったことに乗じ、相手方は銚子に乗って、「削除して存在しない」と主張していたライン情報を書証として提出してきたのである。

和解不成立の場合は、労災申請は勿論のこと、労働審判、裁判まで行う意思のある旨を示したところ、あっせん委員からは、証拠の不存在を懸念している旨の発言があった。

住所の分からない同様の被害者、及びセクハラ・パワハラの事実以後のラインの情報につき、証拠提出の嘱託をする旨をはっきりと発言し、これが相手方にも伝わったようで和解成立の鍵となった。

正攻法ではなかったのが残念だが、結果、依頼者にも満足していただけた。


本日は、勤務等部会と政治連盟との合同研修会に参加し、帰宅が遅くなりブログのアップも遅くなってしまった。定期訪問者に対してはお詫び申し上げる。
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2018年05月12日

セクハラ・パワハラ事件のあっせん申請について


私があっせん申請に係る代理人及び訴訟になった場合の補佐人の受任を受けている事件で、私は、早期解決を目指し、先ずもって、被申立人(以下「相手方」という)との裁判外和解を勧めた。結果、金額の隔たりが大きく、和解は成立しなかった。

私が上記の和解を勧めたのは、委任者(以下、原則として「当方」という)側には手持ちの証拠がないことと、徹底交戦の場合解決までに長期間を要することである。まして、申立人は重度のうつ病が治っていないのだからなお更である。

相手方にとっても悪い話ではないので、相手方受任弁護士もある程度の妥協をしてくるものと思っていたが、私が立ち会った2回の面談ではそれがなかった。しかし、当方は、度重なるセクハラ・パワハラで重度のうつ病になり、意に反して退社しなければならなかったのであり、原因や相当因果関係に係る立証がないからという理由だけでは到底納得できるものではない。

徹底的に争う覚悟はできているが、当方の武器となる客観的、具体的、積極的な証拠は今現在何もない。ほとんどの証拠は相手方のパソコンに入っており、当方のスマホに入っていたラインの情報は、裁判所からの令状等がないといただけない。相手方はこの問題のパソコンは、不具合があったので、廃棄したといっているのである。

裁判になれば、申立人同様の理由で辞めた人が多数いるので、その内の一人を選び証人になっていただく予定である。しかし、本件では在職中申立人は営業部に属しており、直属の上司である営業部長からセクハラ・パワハラの被害を受けたのであるが、総務の担当者及び営業部の主幹等に何度も相談しており、管理者である主幹に対しては、具体的に配置転換の希望も出していたのである。

結果、相手方は何の手も打たず、これらの被害の防止に係る策も、教育もしていなかった。この不作為は、労契法第5条の定める安全配慮義務に違反しており、これは民法415条に定める債務不履行に当たる。債務不履行については、基本的に債務者側に立証責任がある。従って、本件について上記の証拠がないからと言って当方に一方的に立証責任があるものではなく、双方に一定の立証責任があるのである。

しかし、これだけでは相手方は折れてこないものと思われる。就労実態は、深夜まで拘束されているいたことが何度もあるが、給与明細書を見ると、残業手当についてみると、早出残業手当相当分のみの支払いしかなく、実際の残業時間の1/3も支給されていないのである。また、天引き内容にしても、労使の書面による協定はあると思われず、36協定も結ばれていないようである。

所轄の労働基準監督署に聞くと、労災申請した場合調査した結果は、本人であれば資料がいただけるとのことである。また、事件の内容もセクハラを通り越して、ストーカー行為の疑いも濃いものであり、刑事告訴も含め徹底交戦の準備をしている。労基署には申し訳ないことだが、当方は、この労災申請が通らなくても申請のメリットは大きいのである。しかも、事件の進捗によっては、当方から取下げも可能なのである。

既に、5月10日(木)には労災申請をしており、同日中に負傷又は発病年月日、及び療養のため労働できなかった期間等に係る相手方の証明をもらう第7号様式及び第8号様式を既に送付済みである。続いて、5月15日(火)には、社労士会労働紛争解決センター愛知へのあっせん申立てを予定しているので、相手方に出席を促す意味と、和解のメリットを考えさせるタイミングとしては、これらの申請は、絶好の時期に重なったのである。

一応は、あっせん、労働審判、提訴、及び刑事告訴と段階を踏んで進める予定で、裁判にまで発展した場合の委任先弁護士事務所まで決めてあるが、相手方の出方次第では和解についても選択肢の一つとしているのである。

相手方受任弁護士は若く経験も浅いことが目に見えているが、この事件がいかに労力を要し、実入りの少ない事件であるかを知らないはずがない。従って、直接関係しない側面からの攻撃は、相手方への和解勧告の意味をも持つのである。少し先にならないと結果は分からないが、世の中には色々な事件があるので、こんな場合の使用者側の反応の一類型として、読者諸氏にも見守っていていただきたい。
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2017年08月19日

増加傾向にある許しがたいセクハラ・パワハラ事件


昨日の相談である被害者の女性M.Y様は、2年強勤めた職場を、上司によるセクハラ・パワハラでいたたまれなくなり退職している。

これが原因で、現在健康保険法に基づく傷病手当金を受給中である。治療費及び精神的・経済的損害を会社から支払ってもらうべく愛知労働局のあっせんの手続きにつき相談した。

上司である男性営業部長は、当初親切で油断したが、今思えば必要以上の仕事上の手伝いをしてくれていた。ある日、交際を求められ、お断りしたところ態度が急変しセクハラだけではなくパワハラも始まったと言う。

本日はセクハラ・パワハラの内容自体については省略するが、少し変わった組織でM.Y様の場合、部長の下に課長、係長等の職位はなく部長直轄で仕事をしていたとのこと。

この営業部長が昨年4月に地元豊田市の勤務地から、営業部長を兼務したまま岡山工場の副工場長に就き、数日後には岡山に赴任した。

ところが、その後も営業部長を兼務しているのでM.Y様は、毎日日報をその営業部長に送らなければならない。ほぼ毎週金曜日になるとM.Y様を罵倒する内容の多量のメールが来て耐えられなくなった。住居近隣○○心のクリニックに通院し完治に努めたが治らず、生活の当てもなかったが止む無く退職した。

本日私が言いたいことは、これら事件の増加対策の重要性と労働局の指導等に対する疑問である。

前者については人道上の見地からも許されることではないが、個人的には経済的基礎を失うことがどれほど大変なことかを加害者にも知らしめたいほどの憤りを覚える。被害者が選択も回避もできない職務上の権限を悪用する利己的行為であるのだから、これは断じて許せない。

後者について、おや!?と思ったのは、労働局の担当者が事情を聞いた後、会社の方も行き成り労働局から呼び出し状が来てもびっくりするからM.Y様から会社宛にメールを出すよう勧めた点である。

その際いくらくらい請求するのが妥当かも一切言わず、M.Y 様が決めることだと言うのである。彼女はこのようなケースの世間相場が分かる筈もなく、そのメールで30万円を請求してしまった。これが慰謝料だけかと思ったら、医療費及び精神的・経済的損害を含めた請求額であるという。

さらに質問すると、本当は、労災請求までしたい意向がある。結果、退職までしているものの請求額が30万円では相場の感覚がゼロといえる。

しかし、請求者本人が会社に対してメールで30万円を請求したのだから、会社がこれで承諾してきた場合、通常その金額で一件落着となってしまい、M.Y様は、後に後悔をすることとなる。

会社の担当者も知り合いのようであるが、会社からは、回答を今月25日(金)まで待ってくれと言って来ているという。

回答次第では、再度の相談があるようであるが、これを労災請求までするとなると相当の手間暇を要する事態となる。業務起因性等の相当因果関係の立証は勿論だが、直接の証拠となる受信メール自体が、会社のケイタイに来ていたもので、既に機器を返還してしまった現在手元に最も重要な証拠がないのである。証人になってくれる人は複数いるというが、そんなに簡単なものではない。

相談者は大学は法学部であったが、さぼっていたので、今、法律の重要性を知り、一所懸命勉強しなかったことを後悔していると言われる。自分なりに、色々な市販本を読み研究しているようで、私への相談の前には、既述の労働局のほか、短い時間の無料相談ではあるが、弁護士相談も受けてみえる。

しかし、当事者が、経験もないのに実務の急所を把握するのは容易なことではなく、現実は、市販書を通読した程度で、立ち向かえるものではない。どんな本でもそうだが、自分の本当に知りたい部分について、満足できるまで書かれている本はほとんどないのが現状である。

労働局紛争調整委員会のほかにも、社労士労働紛争解決センター愛知があること、その特徴をお話しし、H.Pの案内もした。

宣伝になり恐縮だが、当センターは、サポート社会保険労務士のほか、弁護士もお一人サポート体制に入っていること、期日は、問題によって、1回から3回が予定されること、及び平成30年3月31日申立てまでの手続き費用が無料になっていることを強調させていただいた。

私は ADRを担当する者の姿勢として、世間相場に全く触れないのはどうかと思うのだが皆様はどの様にお考えでしょうか。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 16:40| Comment(0) | 3 人事・労務