2022年08月12日
提訴、控訴の経緯について
平成22年3月31日に国に対して提訴を決意した経緯について私見を述べる。
私は、障害年金支分権消滅時効の取扱いについて、以下で述べる問題点及び実務上の矛盾を踏まえ、年金事務所、社会保険庁(日本年金機構)、厚生労働省及び社会保険審査官に対して、現在の運用を改めるべきである旨折衝した。
「(1)国及び裁判所が、法を遵守せず、国民を欺いていること
@ 支分権の問題であるのに、基本権への権利不行使を支分権への権利不行使があったとして時効消滅させていること
A 障害等級認定において、裁量権がないとしながらも、現実の認では、裁量をしていること
B 国及び裁判所が、行政処分前に時効消滅させるという通常あり得ないことを強行していること
C 裁定前に権利行使期待可能性がないものを、裁定前に時効消滅いること
D 司法(最高裁及び高裁)でも行政(社会保険審査会)でも、見解が割れているのに、徹底的な検証がされていないこと
E 裁定前には、時効中断措置が採れないのに、裁定前に時効消滅させていること
(2)救われてしかるべき受給権者が、救われていないこと
(3)44号判決の悪影響が、余りにも大きいこと」
ほとんどの担当者は、深く吟味することなく否定的であったが、日本年金機構本部時効特例第4グループのU氏は、著者の考え方に同調し、どっぷり漬かっていると気が付かない点がある旨発言され、お礼の言葉までいただいた。
しかし、社会保険庁解体前後の話であり、厚生労働省保険局の国民年金法担当のM氏は、著者が、社会保険庁の厚生年金保険法担当のF氏(愛知のA係長の懇意な本部の担当者が国民年金担当ではなかったため)と電話で話をしていたことに対して、訴訟は大変であるから、もう一度、愛知を経由しなくてもよいから、国民年金法担当としっかり話をした方が良い旨のアドバイスがあった。
私は、これに従い、既に組織変更していた、日本年金機構に電話して、国民年金担当の方と話をしようとしたが、各県からの色々な照会の処理だけでも忙殺状態で、徹夜作業の連続であり、愛知のA係長からの件を特定することは難しい状況にあるとの回答であった。
私は、仕方なく、成年後見人としての本人訴訟として平成22年3月31日に、民法第158条1項を根拠に、名古屋地裁に提訴した。
係争中、被告の主張には、無理が多く、ほかにも論点があるのではないかと疑問を抱き、主な請求原因を、障害年金においては、裁定前には時効消滅していないことに変更した。
原告は、第一審では平成23年8月29日付準備書面(11)にまで及ぶ論争を繰り拡げたが、よく話を聴いてくれた増田稔裁判長の判決理由とは思われない、「権利の上に眠るものは保護されない」との引用を用いた棄却判決であった。実態を誤認したこのピンぼけな理由にはびっくりした。
ところが、異例のことと思われるが、担当書記官が、「ここまでやって来られたのだから控訴すべきだ」との助言をしてくれたのである。
早速控訴して、1回目の口頭弁論では、次回平成24年4月20日に判決を言い渡すとの裁判長の言葉があり、更なる論争を期待した私は、このことに詳しい弁護士を付けるから弁論を延期していただきたい旨を申し出た。
理由を聞かれたので、第一審の結果に影響され、弱気になっていた私は、「民法第158条が適用されるべきである具体的事例について意見を補充する」旨の回答をした。
3人の裁判官は、奥で相談をして、受任予定の弁護士から書面で申出をしてもらい、その書面に理由ありと認めたときは、弁論を再開するとの回答であった。
結果、受任弁護士からは、弁論再開願を提出したが、再開は許されず、あ一部逆転勝訴判決となった。
本件に係る核心部分の争点について、判決理由を引用する。
「被控訴人は、社会保険庁長官の裁定は、単なる確認行為にとどまるから、控訴人の上記主張は理由がない旨主張するので、検討する。」と述べ、212号判決を引用して、「そうすると、国民年金法が、受給権の発生要件や年金給付の支給時期、金額について定めており(同法18条、30条、33条等参照)、社会保険庁長官の裁定は、上記のとおり、確認行為にすぎないことを考慮しても、受給権者は、基本権について、社会保険庁長官に対して裁定請求をし、社会保険庁長官の裁定を受けない限り、支分権を行使することができないのであって、社会保険庁長官の裁定を受けるまでは、支分権は、未だ具体化していないものというほかはない。」
2つの争点共に、被控訴人の主張を、「被控訴人は、上記と異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することができない。」と退けた。
これに対して、被控訴人からは、上告受理申立書が提出されたが、私からは、反論書を3通、受任弁護士からは、意見書を2通提出した。
因みに、受任弁護士の2回目の意見書は、私が反論書として作成した内容について、受任弁護士が、この内容は、事務所から提出した方が良いと判断して法律的主張を補充したものであった。
判決後、2年弱経過した、平成26年5月19日、最高裁からは、調書(決定)平成26年(行ヒ)第259号が出され、この事件は確定した。
その後しばらくして、共同通信社のT.M 記者から、厚生労働省で大騒ぎになっている旨の電話があった。
関係者が集まり、法改正又は運用改正を要するかどうかの検討をしているといわれる。
その会議の結果は、最高裁は、69号判決の争点のうち、民法第158条1項の適用を認めたものであり、支分権消滅時効の起算点については、認めたものではないと結論が出たようである。
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| 1 障害年金
2022年06月25日
15年間超 国と争い続け 未だ初志貫徹を 目指してみえるK.I 氏
大阪府堺市の K . I 氏は 障害年金支分権消滅時効の問題について 今後も国と争う姿勢を示してみえる
この方は 平成19年2月22日に障害厚生年金 3級の 認定日請求による 受給権を得た旨の通知を受けた方であるが 遡及5年を越える部分に対する不支給というその処分の通知を受けて以来 一貫して 国の運用を 批判してみえる
この方の受給権発生は 昭和59年11月であったのだが 標準報酬月額が 高額であったと思われ 16年10ヶ月分で 2280万 9456の 支給制限を受けている
この方は 軽いうつ病であったので 考え方も信念も しっかりしており その後しばらくしてからは 障害の状態も解消され 現在は年金については 障害年金でなく 老齢厚生年金を受けてみえる
行動力も抜群で 遡及5年を超える分の 不支給について不合理であるとして 関係すると思われるあらゆる機関等((現職・前職)の担当大臣、長官等、厚生労働省、社会保険庁、日本年金機構、年金事務所、 街角の年金相談センター、 関係事項ついて発言をした国会議員 (長妻昭、世耕弘成、浅尾慶一郎、小宮山洋子等 ))及びマスコミに対して 訴えてみえた
私が投稿した朝日新聞への寄稿「私の視点 幻の障害年金 解消へ 時効の起算点改めよ」(20130914)欄にも 私よりも早く投稿しておみえ(20071222「声 時効で消滅の障害年金返せ」)で この面でも 保険者に対する苦情についても私の先輩に当たる
私がK.I 氏から 厚生労働大臣に対する 異議申立てに関し 受任したのは 裁定請求の通知を受けてから すでに 7年ほどが経過しており 審査請求期間については 基本的には 請求できない事件となっていたし 裁判についても 私が正しいと主張する 裁定通知書を受けてから5年以上が経過していた
しかし 裁判等においては この経過について 正当な理由ありと認められ このこと自体について問題とされることはなかった
従って この方の信念に基づき 訴訟についても 最高裁まで 争った
最高裁に 事件が 到達した頃には 平成29年10月17日最高裁判決 いわゆる44号判決 が 既に出されており 上告についても 上告受理申立てについても 上告審として受付されなかった
通常の人はここで諦めるのであるが この方は違っていた
何としても この不合理な運用を 止めさせようという強い信念をお持ちなのである
そこで 私もいろいろ考えた末 却下される可能性は高いが 「消滅時効という事実行為」について争うのではなく 「行政処分の取消 」を求める審査請求は 受理される可能性のある旨を話した
これについては 実行を決断され進めたが 近畿厚生局 社会保険審査官は 審査請求申立て期間の経過について 正当な理由と 認められないと判断し 却下したが 社会保険審査会はその点については正当な理由があったと 再審査請求を受理してくれた
私もご本人も 公開審理に出席したが 瀧澤泉審査庁は 「遅延損害金の請求は 放棄することで良いのですね 」(処分の取消であるので)と念を押され 公開審理での陳述も文章にしていただいているので よくわかる旨の 発言があった
従って 「もしや? 」と期待したが 先例がある及び44号判決がある旨の理由(本来理由となっていない理由) による棄却裁決であった
たぶん審査長は 国の運用は 不合理であることを認めながら このような 棄却裁定を したものと思われた
私は K . I 氏には6ヶ月以内に 提訴はできるが 多分 裁判においても同じような判決理由しか 出されないだろうからここで諦めるのが 得策である旨 及び仮に 提訴をするのであれば 私が日本年金学会に提出した 寄稿論文「障害年金の支分権は 本当に裁定前に 時効消滅しているのかどうか」が学会誌に掲載が決まってから行うのが良い旨を示した
ご本人の意向は あくまで争いたいというものであり 余生に 対して 絶好の生き甲斐・チャンス を与えてもらい 私に対して 感謝している旨の 発言であったので 私は本人訴訟支援を 継続することで合意した
私は負ける可能性の方が高い この訴訟に対して 着手金をいただくことはできないので着手金等については 勝てた時のみ 清算する方法を提案し話が進んだ
しかし 不服申立てと違い 裁判となると 訴訟物の価格が高額であるので 裁判所の手数料相当に当たる 収入印紙代だけでも 40万500円の 経費(第一審89000円、控訴審13万3500円、上告審17万8000円)が必要で 加えて 各審級において 予納郵券代が 8000円から6000円程度必要となる
ご本人は このような 具体的な話をしても 私の心配をよそに それでも争い続けたいとの強い意向である
そこまで言われると 私も及ばずながら 業務から 切り離したところで 少しは協力しなければならない
3回予定されている 訴訟にかかる着手金については 勝訴した場合のみ 頂くこととして 特別の契約を結んだ
この方とは特別な関係があり 最初の出会い以来 事あるごとに色々な相談を受けてきた
日本年金学会に提出した 寄稿論文についても 調べごとをしたり 弁護士や学者等に 相談したりで 収入はゼロに対し 必要経費が 必須であったが 折に触れ 経済的支援も してくださっていた 方である
加えて 季節の挨拶は もちろん 私が 入院をした時には 多額のお見舞いまでいただいている
このような方に対して 何の役にも立てない私は ふがいないというより 存在意義がなくなってしまう
心を新たにして 心機一転 頑張り続ける覚悟である
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| 1 障害年金
2022年06月18日
30年以上も 国と争い通したK.F氏
石川県羽昨郡のK.F氏は国による 裁定請求の受付自体の 拒否行為 及び遡及請求が 認められてからの 訴求5年間支給制限に対し 一貫して 争い続け 最終的には 30年間以上もの間 その意志を 貫き通した
事の始まりは 年金事務所等の 裁定請求の 意思表示に対して 受付はもちろん 裁定請求様式の 交付拒否 の 継続にある
この方の障害は 生後5 〜6ヶ月から 10ヶ月くらいの間に 囲炉裏に転落し火傷により 右手の5指を 失くした障害である
この場合 障害年金について考えた場合 二十歳前障害に該当する
この方があの有名な中坊公平弁護士の強い勧めで 裁定請求の意思表示を始めたのは昭和63年頃からであるが 年金事務所等は裁定請求の受付はもちろん 裁定請求様式の公布さえ 拒み続けた
その理由は初診日が 何年何月何日と 特定できなければ 請求できないというものであった
確かに 年金事務所等の 当時の運用はそのような指導をするよう 規定されていたようであるが 事の 本質から考えれば 二十歳前障害であれば 何年何月何日とまで特定しなくても 二十歳前障害に 該当することが 確認でき 初診日要件としては十分であるところ この点につき 深く考えることなく 拒否し続けたのである
この方は色々な面で運も良かった
時系列的に述べれば 第1は 中坊公平弁護士に 会えたことである
年金事務所等を13回にもわたり 訪問し続けられたことは 中坊先生が 「障害年金が 絶対にもらえる」と言われるからには 裁定請求様式を手に入れ丁寧に分かり易く申請書を提出すれば 支給されるに違いないと考えたことにある
そして実際に裁定請求が 受け付けられた 前年には 親切な担当者に出会い 「F様大丈夫ですよ 私の妹も障害者で障害年金を受給しています」 等と 励ましてくれた 担当者もいたのである
実際に裁定請求をして 遡及請求が 認められた後の審査請求や 再審査請求 提訴等に関しては 地元の弁護士が お二人揃って 「99.9%勝てない 止めておけ」とおっしゃったことに対して 新聞記事等から 私を探して電話をしてきて その後 長時間をかけ 3回も 事務所を訪問しているのである
社労士 多しといえども この事件に関する国の運用が 間違っていると 名言できる社労士は少ないのである
ここで 私は ご自分の認識として 請求人が年金事務所等に対して 継続していた行為は 一貫して裁定請求の意思表示であるということを 自覚していただいた
しかし私が 受任したときは すでに ご自分で 審査請求 再審査請求 提訴にまで 進められておりその 請求の趣旨は 「処分の取消」であった ので このまま進めば 却下の可能性が 極めて高いものであった
実際に 請求が認容された後も 信義則違反の請求も棄却され 国家賠償に基づく 損害賠償請求の側面のみであるので そのことを考えれば 容易に ご想像いただけると思われる
ところが運のいいことに 被告国は2回目の準備書面で 答弁の趣旨を 「棄却」から「却下」に 訂正してきたのである
私は これをチャンスとばかり 提出済みの訴状を提出し訴状の内容を 全面的に入れ替えた
つまり 請求の趣旨は 「処分の取消」ではなく 実質的当事者訴訟として 「消滅時効の成否」の問題に置き替えたのである
実際の裁判の世界は 必ずしも 論理に従った 進行に なっているとは限らない
従って いくら国の運用が 誤っていると主張しても これはなかなか 裁判所が認めてくれるものではない
そこで 併せて 信義則違反及び 国家賠償法に基づく 損害賠償請求の 主張を展開する必要があるが この件に関し 抜群の 能力と経験を有する 弁護士に受任を 要請することでK.F氏と協議をした
協議は整ったが K . Fには 弁護士に支払うべき 通常の着手金を 支払える 用意はない
そこで失礼を承知で 私が その弁護士に 電話をし 請求者の事情を話し 着手金については 形ばかりの金額として 勝訴した時に清算する方式で 受任していただけるものかどうかの打診をした
これに対して 神戸の S . F 弁護士は 本人の説明を聞いて 勝てると確信した時は その条件で良いとおっしゃったのである
この先生と 綿密な連絡をし 進めた第一審はいずれの請求も認められず敗訴した
これに対して もちろん控訴をしたが これも 本来は 信義則違反の 請求が 認められてしかるべきところ 国家賠償法を認めると言う 判決が下された
国は そうそうたるたる メンバーを 指定代理人に 26人も並べ 上告受理申立をしてきたが これに対しては 最高裁第三小法廷が 三行半の定型文により 受付を 拒否した
私に言わせれば このような事件に対してまで国が上告受理申立てを してくること自体おかしなことであるが 国としても 十分に 協議して後の判断と思われるので この結果を深く 反省の材料として頂きたく思うところである
特段の事情のある事案とはいえ 現実に勝訴確定させた実績を積み上げたことは 大きな意義のあることである
中に入ってみないと 分からないことの多い事案 であるので すっきりしない方は なんなり遠慮なく相談していただきたい
タグ:裁定請求の意思表示
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:15| Comment(0)
| 1 障害年金