2023年07月22日

令和5年6月23日大阪地裁判決の大きな欠陥


既にこのブログでも紹介しているように 大阪府堺市の 井原毅士生様の 事件では 既に 受給済みの 過去5年間分の一括 支給に対する 平均 約2年半分の 遅延損害金を請求している

これは逆からの証明(原告の考え方ではなく被告の考え方によれば請求できるという主張)で 被告 国の主張に基づけば このような不合理な事態(国にとっての不都合)が生じるということを 証明するものである

この大阪地裁の判決 の 判決 理由を見ると 「遅延損害金は義務の履行を 遅滞した結果として 債務者に生じた損害を 填補 するものであるところ」 という表現を用い 遅延損害金が発生するには 原告に実際の損害が 生じていることが前提となるという趣旨の 説示をしている

ところが 金銭債権債務の債務不履行については 民法419条 第2項及び第3項に 金銭債権債務の特則があり 債権者は 損害の証明を要せず 債務者は 債務不履行について いかなる 抗弁もできない 絶対的責任がある とされているのである

この判決では この条文が関係することすら触れられておらず それだけで重大な欠陥があるのであるが この債権債務の特則に従えば 被告が単に 支払期限を徒過した事実があれば これ自体が損害の発生とみなされ この 判決が前提とした 条件は結論を導くために必要のないものである

東京地裁に次ぐ大阪地裁でさえ このような落ち度があるのであるから 行政事件については 全国のあちこちで 誤った判決が 頻発していることが 予想できる

瀬木比呂志(2015.1.20 )『日本の裁判 』(161頁8列目 )講談社 現代新書 によると 「行政事件についてまともな審理を行う裁判官は10人に1人である 」とされている

誠に 残念というほかない
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2023年07月15日

詰将棋と裁判での証明との関係


私は 現在 同時進行で 年金支分権の消滅時効に係る 7件の 本人訴訟支援を係争中である

ほとんどの裁判官までが 行政 の 味方をするのが 常である事件である 従って 並みの証明では 役に立たない

現在行っているのが 国 (行政) の主張に従えば 遡及 5年間 分について 約2年半分の 遅延損害金を 生じるという 逆の側面からの 攻撃である

同じ年金の 裁定前における 時の 経過 進行という 共通の問題であるので この点の運用の矛盾を 追及しているのである

法定利率が5%の場合 国民年金のみの 場合は 約50万円〜60万円 厚生年金 等の加入がある場合は 約100万円〜110万程度が 請求額であるが 国は 痛みを感じなければ なかなか 法改正に動かないので 偶然の事件から この手法を取っている

国や 裁判所の考え方は 消滅時効と 遅延損害金は 趣旨を異にする 別々の制度であるので 必ずしも 統一的に 解釈する必然性はないとの考え方であるが それは間違っている

そもそも 金銭債権には 民法に特則があり 損害の証明をしなくても 良い (民法419条2項) 及び 債務者は いかなる 抗弁もできない( 民法419条3項 )ことになっている

ということは 正しい 支払い期限を徒過しておれば 遅延損害金が 発生しているということであり 裁判所がいくら 行政の見方をしても 国を勝たせることは 難しいはずである

損害の証明がいらないということは 単に 正しい 支払い期限を 徒過しているかどうかの事実であるが これは 顕著な事実でありこれこそが裁定の前後を問わない事象である

このような主張をした弁護士は1人もおらず 裁判所も慣れていないようである

私がなぜ このような 考え方 を 思いつく かと言えば 基本的には 優秀な友人から教わったリーガルマインドであり QC手法の 活用であるが 最近では 詰将棋 が裁判での証明に 役立たないかと 自分の実力よりも 難しそうな 問題に取り組んでいる からでも ある

月間社労士には ちょうど 程度のあった 問題が 毎月 掲載されており その 月の 別の ページに 解説が載っている

その時に解けて しまった問題は 別として 少し手こずった問題は 時間が取れる時に いつにかやってみようと 記事を 保存しておいたのである

この資料の保存が 約70問 ぐらいあり 1日 10問程度で 解いてきたのである

これが直接 裁判に役立っているかどうかは 定かではないが 歳をとった 私には 頭の体操にはなっている

違法な運用を 改善させるのは なかなか 困難な問題であるが あらゆる手段を駆使して 改善に結びつけたく思っている
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2023年07月01日

期待が大き過ぎた大阪地裁の判決理由


同じ 裁定前の 未だ 具体化しておらず 権利行使できない年金支分権について 時の 経過・進行が あるのかないのかと いう基本的問題について いわゆる支払期説(過去分の支分権についても暦どおりの偶数月の支払期月に時効が進行するとする説)が不合理であることを国に痛みを伴う逆説的な主張で試みたが 重要な争点につき 理由を欠くコピペ判決を出され大阪地裁には 失望している

この大きな争点というのが 法の定める支払期月について 年金法本文 所定の 偶数月の支払期月になるのか ただし書 が適用になり 過去分の支分権については 裁定のあった 月の 翌月になるのかの 点である

判決の 正否は別として この論点(ただし書適用の正否)が最も大きな争点であるので 裁判所としては これに 判決理由を つけることが 求められているのであるが 一言も触れないで 判決が出されているのである

大学者の著書である 国民年金法 全訂社会保険法2 においては 受給権者の 事情による 裁定請求遅れについても ただし書が 適用になる旨の 記載があり 原告は正しい 主張をしているのであるが 大阪地裁は これに一言も触れずに 判決を下した

この文献は 国側も 度々 証拠として提出しているものであり 権威あるものであるので 裁判所として これを否定することが難しく 避けて通ったものと思われる

しかし 行政訴訟とはいうものの 裁判所は国の味方ではないのであるから 公正な判断をしなければならないところ 明らかに 絶大な国家権力を持つ 行政の味方をした 判決であり 全く納得がいかない

上記で述べたように 訴訟の目的が目的であるので 裁定前に具体化していない 支分権は 履行遅滞に 陥らない旨の 結論自体は 間違いではないので文句は付けないが 政府の有権解釈が いわゆる 支払期説を採っているのであれば これに従って支払う必要があるという結論になり これを否定するのであれば 消滅時効についても 成立していないこととなる

裁定前の 未だ 具体化していない 支分権については 権利行使できないのであるから 時効 消滅する はずがないのであるが この両方について 行政に有利な判決をしたところが問題である

「統合して解する必然性はない」などという論理は 時の経過・進行というテーマであるので 自然の摂理に反しており 論理が 整合していない

どちらか一方になるはずであるが 屁理屈をつけた 矛盾した判決には 徹底的に 対抗していく必要がある
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