私の場合、不思議なほど類似事件が続く。先週のブログに、 「再審査請求からの大逆転を期して A」を書いたばかりであるが、翌週7日の月曜日には、表題の事態となった。続けて、余り起らない再審査請求からの受任である。しかし、これは私の理想形である。先ず、ご自分でやってみることも重要である。しかし、潮時と、限界を冷静に判断していただきたい。
今日の主人公は、昨年9月の朝日新聞の私の投稿記事「私の視点」を読んだ東京都荒川区の女性である。電話相談当時、統合失調症による障害基礎年金の認定日請求をして約2カ月経過とお聞きした。お聴きした状況では、そのまま放置しておいても、障害基礎年金の2級は認定されるだろうと思われたので、幻の障害年金問題は、決定通知が来てから相談しましょうと約束してあった。ところがその後音信不通で、3カ月ほど経過した時点で、こちらから電話してみても留守番電話での応答で、その後の返信もない。後で聴けば、デェイサービスに通い、辛うじて入院を免れているとのことである。帰宅後は、私の時間外になってしまうと遠慮していた模様だ。
何があったのだろうと色々心配していたところ、決定はお聴きしたとおり無事下りたが、これには例により、「遡及5年を越える分の、消滅時効理由の不支給通知」があったという。ご主人からは離婚され、息子さんは、お金を持って兵庫県に逃げて行ってしまったそうで、たぶんそのためと思われるが、ご自分で審査請求をされ、過日ご自分で再審査請求をして来たと言われる。弁護士でも負けている事案に対して、私の投稿記事を読んだだけの知識による勇気ある行動である。
手続は、全て口頭である。社会保険審査官及び社会保険審査会法には、審査官に対しては、口頭申出(官会法第5条)、及び口頭意見陳述(同第9条の2)ができる旨の規定があるが、不思議なことにこれらについて、審査会での準用規定がない。心配になって、審査会に事件番号を聴いてもらったところ、一週間から10日程度経ってから通知がある旨の回答であったという。ということは、間違いなく受付けてもらっていることになる。一安心だ。
ところが、行動派というか、直ぐにでも私に書類を書いてもらい、ご自分で提出する積りで、公開審理もご自分で意見陳述をされる勢いである。今頼れるのは、私しかおらず、着手金も今直ぐ払いたい、夜行バスなら安いから、豊田まで会いに行きたいと言われる。ご自分でさいたままで出かけて口頭申出をしたり、審査会まで出向き口頭申出をされるくらいの行動派ゆえ、気持ちは分からないでもないが、じっくり順番にやりましょうと、先ずは、ご本人の基本情報と各ポイントでの状況をお聴きして、必要最小限の書類の写しの送付をお願いした。
ここで、口頭意見陳述と担当審査官の見解について触れる。関東信越厚生局の審査官が却下していることは、想像されたと思うが、問題はその理由である。彼女は、幻の年金部分について、「時効を理由に国が障害年金を支払わないのは不当である」、「障害年金の受給権があることを知らなかったのだし、本人も知り得なかった受給権発生時から時効期間を計算するのはおかしい」としっかり結論を伝え、担当審査官もそのように請求の趣旨を受けとめたようである。
棄却理由は、概ね次の3点である。
1 消滅時効の進行は、その事由が生じた日から5年を経過したときは、時効によって、消滅すると国年法第102条1項に定められている。
2 民法第166条1項には、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」と規定され、この時効の中断理由については、請求、差押え、仮差押え又は仮処分、承認である(民法第147条)とされているところ、本件においては、この中断事由に該当する事実は認められない。
3 従って、本件審査請求は、法律の規定に対する不服であり、審査請求対象事項以外の不適法な不服申立てで、補正する余地のないものであると判断する。
訪問者の皆様は、この決定理由に納得されますか。
私は、全く納得しません。彼女が申立てている内容は、法律の規定の当否ではない。1についても2についても、国による解釈の違法を訴えている。この審査官の聴聞では、請求人の請求の趣旨については聴いているが、請求の理由については聴いていないのと同じだ。従って、自分勝手な判断から、請求人の請求内容を決めているので、結論についても誤ったものになってしまっている。しかし、この問題の正しい解釈は、1については、実際に支分権について権利を行使できる時から時効期間を計算することであり、2については、実際に権利が行使できる時から起算することである。この考え方は、既に昭和45年に最高裁によって明らかにされている。東急コンクリート事件、最大判1970(昭和45).7.15民集24.7.771(弁済供託事件)である。その後、数々のじん肺訴訟でも最高裁がこの考え方を明らかにしている。そして、その旨を明らかにした最高裁判所調査官解説もある。
彼女は、裁定(決定)通知書を受けてから60日以内に審査請求し、かつ、却下の決定通知を受けてから60日以内に再審査請求をしている。これが一番大事なことで、私がこの問題について受任する場合も、この60日を越えてしまった請求事件の攻略方法に苦慮している。勿論、この場合も、日本年金機構や厚生労働大臣との折衝を最初から諦めて、訴訟を提起してしまえばことは簡単だが、諸費用、所要期間、及び依頼者の重圧を考えると、できることなら再審査請求までで決着させてあげたいと考える。60日以内であれば、難なく再審査請求まで行くので、請求側の負担は各段に軽くなる。しかも、審査請求受付日から2カ月が経過すれば、現在判断を避けている審査官の決定を飛ばして、審査会に飛躍請求できる。現在、東海北陸の場合、決定までには約5カ月程度が必要とされているので、3カ月間も短縮できる。
重要な権利が、国により違法に侵害されていることは、許し難い重要な問題である。私は、運用改正なり法改正を目指しているので、一人でも多くの方が現実の請求手続きを起こし、問題の重要性を政府に伝えることができるよう、負けてしまった場合は、完全に赤字になるほどの低廉な着手金で受任している。主な受任内容は、不服申立てと本人訴訟支援である。
2014年04月12日
幻の障害年金問題 再審査請求から受任
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 00:53| Comment(0)
| 1 障害年金
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