今日の話は、生活保護費の返還請求問題である。私は、少し前に、「同じような事件が続くものだ」と書いた記憶がある。偶然とは全く面白いものである。以前から疑問に思っていたことに私自身が実際にぶち当たった。相談内容は、「長い間、生活保護を受けており、2カ月前に障害年金の裁定請求をした方が、市の生活保護の担当者から、遡及5年間分の一時払いの年金から支給済みの生活保護費の返還を求められた」というものだ。
過日、隣の支部所属の親しくしている社労士から、その社労士への委任者の色々な事情を話されたのち、「もし障害年金が認められなかった場合、この人の場合、生活保護しか道はないのか」との相談を受けた。その時は、私もひとり親家庭の福祉、及び生活保護に関する漠然とした知識しかなく、日本法令の「年金相談第5号」の終りの方に生活保護の記事があったよ、と言って、後日PDFファイルを送った程度で事を済ませていた。今度は私が実際の事例に遭遇したのだ。少し研究してみたので、訪問者の皆様にも、貧困に苦しんでいる方への支援をお願いしたい。
労働社会保険諸法令には生活保護法はない。しかし、実務では、障害年金を担当しておれば、強い関連性のある事柄で、これに関する知識は必須事項だと思う。いわば、障害年金と生活保護との併給調整のような問題である。実際に、返還請求手続きに入る場合は、行政書士の専門分野になると思うが、司法書士でも弁護士でもこれを業としても違法にはならないものと推測する。ところが社労士が行う場合は、法に抵触する筈だ。私は、行政書士の資格は有するものの登録はしてないので、これを業として行うことはできないと認識している。
私へのホームページ経由での問合せは遠方の方が多いのだが、今回は豊田市内の、しかも比較的近くにお住まいの方だつた(この方は、平成2年から2級相当の障害をお持ちで、ご自分で、認定日請求と事後重症の違いも分からず裁定請求をしているので、補充意見書等を出す必要があるのかもしれない)ので、市の担当者に直接電話で遣り取りした。市の実際の取扱いはどのようにしているのかをお聴きしたところ、「返還を求めている」との回答であった。根拠規定を確認したところ、生活保護法の第63条とのことである。
そのような併給調整を聞いたことがなく、道理にも合わないと感じたので調べてみた。すると、第63条は、本来生活に充てられるべき資力があるものの、直ちに最低生活のために活用できない事情がある場合に、取り敢えず保護を行い、当該資力が換金されるなどして最低生活ができるようになった段階で、既に支給した保護金品と調整を図ろうとするものであることが分かった。
従って、生活に充てることができる形(現金あるいは現物)に具体化しない資力(資産)を保有している場合には、保護費用が生活の糧として当該資力(資産)を代替する期間(保護受給期間)の支給済み保護費用に相当する額が法第63条返還金の対象となるものである。従って、生活保護の申請時に未だ裁定請求もしていない障害年金は返還の対象ではないのである。※
大豊田市において、間違った法解釈により貧困者をなお更苦しめていては大問題と思い、電話で教えを受けたTさんと再度電話で話をした。第63条の趣旨を伝え、第78条(不実の申請その他不正の手段により保護を受けた者)該当者への返還請求とは、全く別物であるので、正しい措置をお願いした。
Tさんは、全く素直な方で好印象を受けた。「私の一存ではできないので、上司と相談して対処させていただきたい」との回答であった。念のため、Tさんも実際にお客様対応をされているのかをお聴きした。ケースワーカーだから、勿論対応しているとのことであった。ということは、今までに、返還請求により苦しい中返還をしてきた人が相当数いるものと推測される。例の私の事件については、公の機関としては最高位にある国においても法解釈を誤っている(違法の要素は約10コあるが、国はその内の1コについても、名古屋高裁を説得できていない)のだから、このような公共機関による法解釈誤りは、日常茶飯事になっているのが現状である。困ったことではあるが、俄かには直らない。
前述した親しい社労士について触れる。この方は、開業して数年になる私の先輩になるのだが、障害年金を専門に精力的に活躍してみえ、障害年金の裁定請求を何百件と経験してみえる。企業の顧問先も友達に引き渡し、今では障害年金に特化してみえる。彼女曰く、「将来は、気の合った10人で障害者支援のNPOを作りたい、個人では公共機関や医療機関に話しも聴いてもらえないが、NPO法人であれば聴いてもらえる!!」
既に、その道の先輩である千葉の社労士を尋ね、勉強させてもらってきたとのこと。私とは意気込みが違う。このような事情で、今後もこのブログに登場するかもしれないので、以後彼女をM.Sさんと言わせてもらう。
M.Sさんが言うには、既述の返還請求の取扱いは、市町村等によってまちまちで、全く違うという。概して、東京都は、「これからの分でいいですよ」、九州では、「徹底的に追及する姿勢」、岐阜も同様という。愛知県では、刈谷市、知立市は隣の行政区に転居すれば追及なしとのこと。また、どこの県の話かは忘れたが、中には、「気持ちがあったら、返してください」という担当者もいたという。これってなにー!?と興奮してみえた。同じ法律の下にある取扱いが、こんなに違うのは、おかしなことであるので、例え、周辺(又は附属)業務といえども、真実を探究する必要がある。
※ ここでも、「支分権がいつ発生するか」の解釈によって、取扱いが変わってくる要素がある。
2014年03月22日
士業の周辺業務
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:58| Comment(0)
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