私は、今月7日(火)から、ツイッターを始めた。翌日早朝には、少しは、長妻議員に期待してツイートしている。今回はツイッター向けに件の問題の要点を発信する。ツイッターには、タイトルとURLのみしか表記されないが、一人でも多くの受給権者等が気付いてくれたらと願う。
認定日請求の場合、法の定めに従い、障害認定日が属する月に受給権が発生し、その支分権(隔月に支払われている年金の具体的請求権)は翌月から支払われるべきものである。ところが、保険者(国)は、色々な事情で裁定請求が遅くなった場合、裁定から5年間分は時効の進行を逆進させて支払っているが、遡及5年を越える年金は消滅時効が完成しているとして支払っていない。この取扱いは、昭和45年9月10日付で発出された内簡という内部文書により行われているが、これは法律の根拠のない運用であり違法である。
しかし、国は、裁判ではこの実際の運用方法を隠し、最初に支払われるべき年金の支分権の消滅時効は、受給権発生の翌月初日から進行すると主張(この主張と実際の運用とでは、約2カ月間の誤差が生じている)している。この運用の根拠として、国は、民法第166条1項に基づくものと述べている。この規定の趣旨は、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」とするものであるところ、国は、歪曲して解釈し、裁定請求は受けようと思えば、いつでも受けられるものであるので、「権利を行使することができる時」は、「裁定請求ができ得る時」であると主張する。
また、基本権(年金受給権の発生の元となる権利)に対する権利行使と、支分権に対する権利行使は全く別物であり、基本権と支分権は、各々独立した権利である。従って、この基本権と支分権を混同した国の主張は失当である。結論を言えば、受給権者が、「権利を行使することができる時」は、正しくは、裁定(決定)通知書が本人に届いた時である。
基本権と支分権は独立した権利であるので、基本権に対する権利不行使は、当然には、支分権には接続されないというのが、正しい考え方であるが、ほとんど全部の裁判では、この接続が認めれている。なぜかというと、老齢年金では、国は、何度も何度も裁定を促す努力を重ねている。そして、遺族年金では、受給者死亡時の法定の届け出義務があり、その際に、未支給年金と遺族年金の案内がある。それでも裁定請求しないのであれば、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使として接続されても仕方ない面があるが、障害年金では事情が全く違い、国が通知することも、状況を把握することもできない。また、別の面の障害年金特有の事情もある。
国は、ほとんどの裁判で勝ってきているのだが、これは老齢年金の事例がほとんどである。障害年金に係る事件も無い訳ではないが、稀で、この場合も、裁判において、原告又は控訴人が、障害年金特有の事情を十分に主張していないので、裁判所は、国の主張に基づき、従来の老齢年金や遺族年金に関する考え方を障害年金にも準用し、ほとんど全部の裁判で、国が勝訴しているのが現状である。ところが、国は、消滅時効に関する裁判や不服申立てがどうしてこんなに多いのかを考えなければいけない。その主な原因は、余りにも不合理な運用を継続しているからにほかならない。
ここで、裁判所が基本権に対する権利不行使を支分権に対して接続させている部分の理由付けを披露させていただく。これは岡山地方裁判所の事例であるが、これが広島高裁岡山支部でも支持されているので、他の裁判所の判決理由も類似したものではあるが、意識的に代表例とさせていただいた。
「受給権の発生要件や年金給付の支給時期・金額について明確な規定(国民年金法18条、30条、33条など)が設けられていることや、長官による裁定が確認行為であることに照らすと、年金給付の支給事由が生じた後は、受給権者が給付を受ける権利(基本権)についての裁定請求をしないままに経過した場合においても、給付の支給を受ける権利(支分権)は、その支給事由が生じた日の属する月の翌日から、各支払期月ごとに順次潜在的・抽象的に発生するものと観念することができる。そして、受給権者は、給付を受ける権利(基本権)についての裁定を請求して長官の裁定を受けさえすれば、直ちに、当該裁定時までに支払期月の到来した給付の支給を受ける権利(支分権)を行使することができるのであって、給付を受ける権利(基本権)に係る裁定請求を行うことについて、法律上の制限や特段の行為、負担を要するものとは認められない。」としている。
これは、一般的な老齢年金について言えることで、障害年金については、主要な要素が全て当て嵌まらない。受給権の発生要件については、精神障害の障害認定基準は抽象的な表現で、認定する人によって判断が分かれるものであり、支給時期については、例外の但書きがあり、金額については、障害等級が決まらなければ、裁定請求時には分からない。分からないどころか、受給できるのかできないのかも分からない。また、具体的請求権について問題にしているのに、潜在的・抽象的に観念されては、幾ら裁判官の心証形成の問題にしても行き過ぎである。そして、基本権の権利行使は、基本権について権利行使しても支分権について直ちに権利行使できるものではなく、数カ月の誤差が生じることからも分かるように、基本権と支分権は独立した権利であり別物である。詰まり、障害年金については、裁判所が権利不行使の接続を認定した前提となる事柄に事実誤認があり、この接続に無理があることが明白である。時効に関しては、老齢年金も障害年金も遺族年金も、同じ法律の同じ条項の下に置かれているので、区別しずらいところではあるが、法解釈上は、明確に区別しなければならないところである。
これにより侵害されている権利は、憲法第25条2項に基づき具体化した重要な権利であり、既に具体化した財産権に対する権利の侵害は憲法第29条(財産権の侵害)違反にも該当する。しかし、そのように認識する者は少ない。問題は、この違法な権利侵害行為が、法律の根拠もなく国により公然と行われていることだ。これは大問題であるが、政府も国会議員も、学者でさえもこのことを認識していない。そして、聴く耳を持たない人が多い。
年金時効特例法の施行に呼応し、平成20年には、辻泰弘参議院議員、及び長妻昭衆議院議員が、公的年金の消滅時効は撤廃すべきとの見解を表明し、衆参両院に質問主意書を提出している。これらに対する答弁は、「法律関係を早期に安定させることは引き続き必要と考えられることから、消滅時効の規定自体を削除するのは適当でないと考えている。政府としては、民法の規定に基づき、個別の事案を勘案して、時効の援用を行うかどうかを判断することとなる。個別に時効の援用を行った場合に限り、当該権利が消滅時効することとされたものである。」旨回答されている。しかし、現実には、答弁以降5年以上が経過しているのに、未だ、そのような運用はされていない。
私は、消滅時効の運用解釈に関する一般論でも、自らが成年後見人となっている事件の本人訴訟で、平成24年4月20日(金)の名古屋高裁の判決において、ほぼ完全勝訴している。しかも、判決理由では、「国は、判決理由とは異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することができない」と述べられており、国はこの裁判での主な争点の2つ(@ 支分権消滅時効の起算点、A 民法第158条の適用等)共について同じことを言われているのである。
私が裁判の係争中は、単に、道理とリーガルマインドだけを武器として争ってきたのだが、名古屋高裁は私の真意を理解してくれた。拙い読み難い膨大な資料をしっかり見ていただいた。謝意を伝える手段はないが、私は深く感謝している。ここで、時効の起算日に限定した一般論について、当時の私の主張を一口で言えば、「障害年金には、障害認定という条件が付いているので、停止条件付き債権的債権である」というものだ。
このリーガルマインドに基づく、支分権消滅時効の起算日に関する私の考え方は、実は、最高裁の判例(著名判例、本村年金訴訟上告審判例、H7、11、7)、及び社会保険審査会先例【平成20年(国)第330号、平成18年(国)第110号、平成14年(国)第61号】等があり、基本権と支分権の独立等については、青谷和夫の論文(年金の基本権と支分権およびその消滅時効、1966、5)があることが判決後に分かった。
社会保険審査会の先例については、ごく最近になって、新たに驚くべき事実が明らかになった。国第16条(厚第33条)の解釈に関する考え方につき、既に平成8年に、国の代理人が、従前の見解を変更し、社会保険審査会の見解と同じ見解を、社会保険審査会の公開審理の場で述べた事実が判明したのである。そうすると、国は、社会保険審査会向けの顔と、受給権者向けの全く正反対の二つの顔を持った二重人格者になってしまう。
また、社会保険審査会は、さればといって、長期間経過した支分権についてまで無条件に支払いを認めるのは適当でないとしており、遡及5年を越える年金の支払いをしないのは、特別の法律の規定に基づかない「行政措置」であるといわなければならない、としており、この不支給が適当であるとしている。
しかし、裁定(決定)通知書の「時効理由不支給通知部分」は、国は、「行政処分性はない」と、私の裁判の第一審の始めの方で、裁判例を提出して釈明しており、行政措置により不支給としているという考え方も成り立たない。他の根拠は、デュー・プロセス上なお更見付からない。そして、デュー・プロセスは、刑法だけではなく、行政法についても適用されるとするのが有力説である。更に言えば、「時効理由不支給通知部分」に行政処分性があるとした場合でも、行政庁にそのような裁量権は認められておらず、明らかに越権行為であり、違法である。
今となっては、私は、この消滅時効の起算点に関する一般論で、国と議論して負けることはないと思っているが、私の事件について、最高裁は未だ国の上告受理申立てを棄却していない。おそらく、申立人が一般国民であれば、こんなに待たせることはないだろうと考えると、最高裁にも問題があると思わざるを得ない。待たせ過ぎである。
国は、法の定める要件を充足した時(障害認定日の属する月)に受給権は発生し、その翌月には、支分権の支払期月(国第18条3項、厚第36条3項)は到来していると主張する。しかし、障害年金については、停止条件が付いているので、条件成就前には基本権も支分権も発生せず、条件成就後、法の定めに従って、遡及効が顕在化するものだ。条件成就前には、決して、支分権消滅時効は進行しない。しかも、国第18条3項等には、例外規定である但書きがある。このような場合に、抵抗なく適用できる「但書き」という規定が存在し、国は実際に5年遡及分の支払については、この但書を適用して遡及分を一括して支払っている。
ここでは、詳しい内容までは述べられないが、国の主張内容はいずれも道理が通らず、支離滅裂であり、これを続けることはできないものである。こんなことを続けていたら、とても法治国家と言えないことになる。ただでさえ、国民からの信頼を失った公的年金について、信頼回復は不可能になってしまう。国は、一刻も早く目覚めて、正しい運用にするか、法改正をすべきである。私は、これを政府に決断させることをライフワークとしている。
ほとんどの障害者は、この権利行使を自ら主張することはできない。社労士や弁護士がこの権利を守らなくて誰が守れるのか。私は、上記のライフワークを実現させるため、また、障がい者が困らないよう、低廉な着手金で、支払い請求や審査請求等の代行をしている。一人でも多くの方が、権利の実現手続に参加されることを希望している。政府に法改正等を決断させるためには、今のところ、残念ではあるが、この方法しかない。
2014年01月11日
障害年金5年間遡及支払いの業界の常識は法解釈誤りであり 違法な権利侵害である
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 00:00| Comment(2)
| 1 障害年金
訴訟は大変ですが、先ず、厚生労働大臣に異議申し立てができます。これは、結論が出るまでに、ある程度の時間は覚悟する必要はありますが、裁判のような気苦労や多額の費用はかかりませんので、具体的にメール等で相談をしてください。