2013年12月28日

正に 隠された障害年金

 私は、岡山県に住むY.Mです。本ブログの「生の声」版3人目の登場です。私の妻が障害年金を請求できたきっかけは、5年前に月一回の通院で、受診した時の主冶医の助言でした。いつものように診察室に人るとすぐに、障害年金を貰っているのかと聞かれて初めて申請できることを知ったのです。精神科に入院(初診)してから主治医に言われるまで29年間、だれ一人として妻が障害年金が受けられると言ってくれた人はいなかった。本人も、私も、初診当時、精神分裂病が障害年金の受給対象となっているなど、まったく知らなかったのです。

 早速診断書を作成して頂いて、同病院のソーシアルワーカーの援助で申請書を提出した。約 5カ月後に障害等級の2級の裁定通知書が届いた。しかし、5年分は遡って受給できたとはいえ、それ以前は時効消滅で給付されないといわれた。なぜ、権利があって全額を受けられないのか不信感と不満がつのった。裁定通知書に、時効消滅とされた期間にそれぞれ年金額が記載されていて、なぜ5年分しか絵付されないのか疑問に思い、社会保険労務士や、市の年金担当に相談したが、この回答に納得ができなかった。インターネットを駆使して関係の法律等を調べたら、国民年金法と制度に不備があり、運用にも問題(制度の周知)があるのではないかと疑問を持った。

 問題が発覚後、国民年金加入時に、市の年金課からもらって保管していた冊子が出てきたので、内容を確認すると、あまりにも簡素で、「危険時代といわれる今日このごろです。保険料を1年以上納めた人が、病気やケガで体が、不自由になったとき」と記載されているのみで、車椅子に乗っている人物がイラストで描かれていた内容で、あたかも身体障害者を対象とした内容であった。その後の市の広報でも「病気やケガで体が不自由になった時」とあり、これでは、身体障害しか該当するとは思えず、精神障害者が排除されたのと同然である。訴訟で、今回妻の、障害年金 申請が遅れたのは、市が、給付に繋がる情報提供を怠ったと主張したら、市は、情報提供義務がないと反論した。また、国も年金制度の情報提供(周知・広報)の重要性は認めるが、国民年金法上かかる法的義務がないと準備書面で主張してきた。つまり、国は法律に欠陥があることを認めているのだ。

 私が考えるには、「周知徹底義務は、特定の者にではなく、不特定多数を対象として、行政庁に課せられた法的義務である。周知徹底義務の対象となる給付を受けるべき通常の受給権者」は、一般市民よりも注意力が劣ると考えられるため、一般市民に向けた周知努力と比較して、障害者に対する周知努力は高い水準の努力が求められる。
(藤沢僚太氏の研究論文一部引用)

 しかし、障害年金制度の周知度は厚生労働省の平成8年度の調査では38%である。妻の障害認定日である、昭和55年頃の、精神障害制度の周知度は、ゼロに近かったのではないかと推測できる。

 年金時効特例法による請求書を提出したがダメで、審査請求書、再審査請求書を提出したが、いづれも、「制度の、不知による請求遅れである」という理由で却下された。妻は、国民年金に加入し、障害年金が受給出来るようになるまで、保険料をずっと支払ってきた。

 精神障害者が、昭和39年から年金の受給対象となっていたことを昨年になって知り、社会保険庁も、市もずつと隠蔽していたことがわかったのです。周知徹底義務違反どころか、障害年金を奪った確信犯である。

 障害年金の受給率は、厚生労働省サンプル調査によると、身体障害者の3割以上、精神障害者では6割以上が未受給者で低い受給率となっている。厚生労働省は未支給の要因として以下の点を挙げている。

@ 疾病に起因するものは対象にならないと思っている ⇒ 障害年金制度の周知徹底不足
A 初診日の問題で、精神障害の場合、初診から5年、10年を経過してからの請求が多いこともあり、初診日を証明する書類が整わないケースが多々出てきている ⇒ カルテの保存期間が5年である。病院を変わるなどが一因
B 認定基準が分かり難い。老齢年金や遺族年金と違い支給条件を満たしているかどうかの判断がつきにくいことが請求をためらわせる原因となっている ⇒ 国民年金法施行令別表(4条の6関係)が身体障害用で精神には不明瞭である等の周知徹底不足
C 保険料の納付要件を満していない ⇒ 制度の周知徹底不足、雇用形態の多様化などがあるのではないか
D 診断書の書き方に問題がある場合等があげられている ⇒ 病院、医療関係者への障害年金制度の周知徹底がされていない

 以上から判断して、受給に必要な情報提供をしてこなかったこと、障害年金制度の不備と、制度の周知徹底を怠ったことが、多くの未支給者を発生させてきた原因で、障害年金は本人が申請困難な場合が多いので、時効消滅の撤廃を前提とした国民年金法の改正が必要である。国民年金に加入していて障害者になっても、年金が正しく全額が受給できない?こんなことがあって良いのか。何のため、誰のための障害年金なのか。責任は行政にあるのは明白で、既成事実として追認し、障害者のために早期に解決を図ることが行政の信頼回復につながる。本来なら受給できていた者が、行政権力の横暴で、給付されるべきものが支払われないために、多額の訴訟費用の準備と、多くの時間と労力を費やして、保険者(国)を相手に争わなければならないことに憤りが増幅する。

 障害年金の申請漏れ、申請遅れに伴う時効の撤廃、障害年金の周知に関する質問等で、国会議員が、政府と問題を共有していて、制度の見直しと、法改正ができなかったことは、長期にわたる立法府と行政府の怠慢と無責任の証である。障害者は、弱者で声を上げられないので放置しても、社会問題として表面化しないと思っていたのではないか。

<障害年金関連の「国会質問主意書」(障害年金問題関連)は別紙に項目を記載>

 年金記録問題の発覚で、大きな社会問題となったとき、年金時効特例法を成立させている。請求時から遡及5年を越える分は、遡って給付を受けることはできなかったが、この法律により5年を越える前の分も全額受給できるようになった。他方、妻の障害年金の未支給事件は、政府と法律の不備が原因で発生しているので、本人に何ら責任はない。その点は、年金記録問題と同等に扱われなければ国民年金法第1条(国民年金制度の目的)、第2条(国民年金の給付)に反するので、日本国憲法第14条の法の下に平等でなくなり、結果として、憲法第25条の違反でもある。

 市民感覚から、本人が知らない内に時効で消滅していく仕組み(取扱い)が不条理で納得できないので、社会保険労務士の先生に何人も相談したが、5年で時効消滅すると言われたり、明解な回答が得られなかった。そうしたなか、3年前に、ある社会保険労務士の方に出会った時、訴訟で争ったなら、もしかしたら勝てるかもしれないので、この制度について一石を投じる(風穴を開ける)という意味で、本気で争うなら弁護士の先生を紹介すると言われて、現在の弁護士事務所のお世話になり訴訟を起こした次弟です。弁護士の先生に、私の強い思いを理解して頂いて、争ってきたのですが、一審判決の直前の準備書面を作成していたころ、タイミングよく木戸先生のブログに出会ったのです。

 ”障害年金時効起算点”でインターネット検索したところ「遂に出た画期的判決 時効問題控訴審完全勝訴」の記事でした。しかも高裁の判決であるだけに意義があり、私たちの、心強い味方になっていただけると確信した。早速、木戸先生のブログの内容を当方の弁護士に伝えて準備書面に反映させて頂きました。ところが、地裁、高裁判決も敗訴となり、上告状と上告受理中立書を出したあと、予てから気になっていた木戸先生の裁判の経過を聞きたくて電話をしたら、気さくに対応して頂き、さらに地裁、高裁の判決文、控訴理由書等を送付して助言していただいた。

 込み人った話なので、電話やメールのやり取りより直接お話した方が良いとの意向で、豊田市の木戸事務所まで、弁護士の先生と二人で遠慮なく訪問した。木戸先生は豊富な年金の知識をお待ちで、貴重な経験をしておられる方で、明解な助言により、上告理由書と上告受理申立て理由書を修正し、より説得力のある内容で提出することが出来たことを衷心より感謝しております。

 行政が間違った運用を長年していたなど、専門的なことは先生方にお任せして、私の想いはすべて主張したので、今の心境は、「人事を尽くして天命を待つ」というところです。これからも木戸先生のブログの更新を楽しみにしています。同じ問題で悩んでおられる方で、この記事を読まれた方は、障害年金制度の不条理を正すためにも、一人でも多くの方々に、勇気を出していただいて、「隠された障害年金」の奪還に向けて、木戸先生を先頭にしてみなさん頑張りましょう!!
 末筆になりましたが、木戸先生の事件も、一日も早く最高裁が名古屋高裁の判決支持の判断を出されることを心待ちにしております。木戸先生の益々のご健勝とご活躍を祈念しております。
                                      2013/12/14 (Y・M)

 別紙

国会質問主意書 (障害年金問題関連)

1 平成20年5月19日第I69回国会(常会)衆議院提出(質問第402号)提出者 長妻 昭
  障害年金の申請漏れに関する質問主意書
2 平成20年6月18日第I69回国会(常会)衆議院提出(質問第553号)提出者 高井 美穂
  障害生食に関する質問主意書
3 平成20年6月18日第I69回国会(常会)参議院提出(質間第I7I号)提出者 辻 泰弘
  公金年金制度における年金給付の受給権の消滅時効に関する質問主意書
4 平成20年11月25日第170回(臨時会)衆議院提出(質問第278音)提出者 長妻 昭
  年金申請遅れによる時効撤廃に関する質問主意書
5 平成22年月28日第I74回国会(常会)衆議院提出(質問第514号)提出者 木村 太郎
  障害年金の周知に関する質問主意書
6 平成24年7月10日第180回国会(常会)参議院提出(質問第186号)提出者 浜田 昌良
  障害基礎年金及び厚生厚生年金の周知広報の在り方及び実態に即した弾力的な認定に関する質問主意書
7 平成25年8月5日第184回(臨時会)衆議院提出(質問第8号) 提出者 長妻 昭
  障害年金に関する質問主意書


※ 上記質問に対する内閣総理大臣答弁書は省略させて頂きます。

 内容に興味のある方は、「衆議院-質間答弁」又は「質問主意書:参議院ホームページ」と入力して、インターネットで検索してください。

※ 事務所代表者のコメント  @「消された障害年金」、A「幻の障害年金」、に続き、今回、B「隠された障害年金」という表現が現われた。同じ内容についての表現であるが、見る視点によって表現が変わってくる。@は、当然の正当な権利を国によって一方的に消されているという見方、Aは、比較的客観的に見た場合の表現、Bは、国や市の周知徹底不足を指摘した見方である。いずれにしても、誰が見ても、改善の必要性はあるものと感じられる。

 この事件は、経緯から病状の内容まで、私の事件と酷似している。違っているのは、私が成年後見人であること、この事件の受給権者は1号被保険者であるが、私の事件は3号被保険者であること、及び請求金額である。今問題にしているのは、支分権消滅時効の正当な支払期月、及び支分権消滅時効の起算点という法律の解釈に関する一般論であるので、この3つの違いによって、結論が違ってきてはおかしなことになる。

 この判断が分かれたのは、裁判官の個性の問題ではなく、主張に対する評価の問題であると感ずる。この事件でも、終盤、私の事件の高裁判決書を提出して、正しい起算日を主張しているが、なぜそのようになるべきかを詳述していない。これを書証を付けて、合理的に主張すれば、必ず逆転できるものと思っているので、私は、最高裁が、今後、高裁で十分議論できるよう、「差し戻し」の判断をすることが一番望ましいことと思っている。私の事件では、今思えば、十分な主張をしていない部分が多くある。判決後に入手した資料や、判決後に知った知識も多くあり、この事件を通して、私の想いも高裁、及び最高裁に訴えたいし、国に対して反省を求めたく思っている。

 この方は、裁定もしていない内に、「実は、5年遡及を越える分は、消滅時効が完成しています」と言われても、「納得できる訳がない」とおっしゃっている。私は、これが真面な考え方だと共感している。この方の場合、ご自分で、直接主張する機会がないので、判決文に対する抗議文や、不支給要因と背景に関する特性要因図や、私の事件との対比表をきちっと作成し、提出してみえる。

 正義感が強く、几帳面な方のように感じられる。この原稿も、律義に担当弁護士の了解を得て、送付されてきてみえる。この問題は、本当に情報を必要とする受給権者等に伝わり難い事情(伝達媒体、内容自体の複雑性、及び必要とする人の情報理解能力等)があるが、本ブログを通して一人でも多くの方に、この事実、及び法改正等の必要性を感じていただきたく、「生の声」版を企画した次第である。


posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 00:00| Comment(0) | 1 障害年金
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