請求額こそ大きく違うが、私が成年後見人法定代理人として本人訴訟をした事件と酷似した事件で、広島高裁岡山支部は、名古屋高裁とは異なる判決を下した。
この事件では国と倉敷市を被告として、大きな請求根拠を、情報提供義務違反、国家賠償法に求め、少し細かい争点では、信義則違反、年金時効特例法の類推適用、憲法第25条2項の規定の趣旨等につき争ってきている。いずれも理由がないと退けられているが、結審直前には、名古屋高裁の判決文も付け、この支分権の消滅時効の起算日は、「裁定(決定)通知書が受給権者に届いた日の翌日である」旨の主張もしている。
これに対して、裁判所の判断は、受給権発生要件や年金給付の支給時期・金額について明確な規定(国民年金法第18条、30条、33条など)が設けられていることや、裁定が確認行為であることに照らせば、原則的な支払期月に順じ潜在的・抽象的に発生するものと観念することができると「お決まり」の判決理由を示した。そして、裁定を受けさえすれば支給を受ける権利(支分権)を行使することができる旨説示し、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使として接続させている。この弁論の状態では、9分9厘受給権者の負けである。上告又は上告受理申立てが却下されれば、判決が確定してしまう。
10月29日(火)、私のブログの愛読者であるという受給権者のご主人(Y.M氏)が電話してきた。その後、2件の判決書や控訴理由書、及び上告理由書(案)・上告受理申立て理由書(案)等を読ませていただいたが、高裁の段階で上告受理申立て等を却下される可能性の大きいことが分かってきた。もっともっと、障害年金特有の事情を述べなければ勝てない。上記の裁判所の判決理由が当て嵌まるのは、一般的な老齢年金等の場合だけだ。障害年金について、これと同じと判断されてしまっては、国の誤った運用解釈を正しいことと認めることに繋がってしまう。従って、協議を打診し、今月11日(月)には、Y.M氏と担当弁護士に田舎の事務所まで来ていただいた。
勿論、目的は、上告を受けていただき、これから大逆転を図るためだ。そのためには先ず、何が何でも上告受理申立て等を受けてもらわなければならない。そのために一番説得力のあるのは、判決理由の核心部分について、判決に導いた前提を崩す必要がある。
ここでその詳細を述べることはできないが、一つには、「受給権発生要件や年金給付の支給時期・金額について明確な規定(国民年金法第18条、30条、33条など)が設けられている」としている部分は、本件精神障害については、いずれも機能していないという所であり、今一つは、基本権と支分権は独立した権利ゆえ、基本権への権利不行使は支分権へは接続されないという所だ。そして、私の独特の主張である、本件支分権は、停止条件付き債権的債権であるという主張だ。本件では、具体的な請求債権である支分権について争っているのに、判決書では、「潜在的・抽象的に発生するものと観念することができる」と極めて抽象的な説明に逆戻りしている。まるで、禅問答のような話である。
この裁判でも明らかなように、正しい結論だけを主張しても、必ずしも採用されないということだ。裁判所は、双方の言い分を聴いて、法律的に合理性のある方を勝ちとするので、主張の結論を導き出した理由が重視されている。詰まり、民事裁判では、幾ら正しいことでも、主張しなければ負けである。ごく最近見付けた資料によると、社会保険審査会での公開審査の席上、本件の核心部分である「支分権の発生時期等に関する考え方」について、社会保険審査会の考え方(私や名古屋高裁の考え方と同じ)に対して、保険者代表(国)が、それを正しい考え方であると認めた事実を確認した。これは17年も前の平成8年11月当時の事実である。
国の主張は支離滅裂で、既に行き詰っており、訴訟の維持もできなくなる筈である。多くの受給権者のために精一杯頑張りたい。
※ ここで、少し実務的アドバイスをさせていただく。Y.M氏は、年金時効特例法該当届、審査請求、及び再審査請求をご自分でなされ、第1審と控訴審・上告審を弁護士事務所に事件委任されている。この方は、この事件では私の先輩に当るのでこの方法しかなかったのだが、前者で約2年間、後者で約3年間を闘い続け、後者の費用は、弁護士費用と印紙代だけで既に100万円以上費やしてみえる。
読者の皆様が訴訟を選ばれた場合、今の段階では、仮に第一審、控訴審と勝ったとしても、国は必ず上告受理申立てをしてくるので、費用は勿論高額となり、長期間を要するので適切ではない。
それでは、何が適切かというと、審査請求である。しかし、裁定(決定)通知書受理から60日を経過してしまうと審査請求はできないので、裁定から5年以内であれば、日本年金機構への支払い請求から始める必要がある。仮に、これが再審査請求まで(社会保険審査会には、私や名古屋高裁と同じ既に定着した考え方の先例が3つある)行ったとしても、裁判ほどの期間はかからず、着手金も3回分をみても1/20程度で実施可能だ。
私は、「障害年金受給権者等の権利を守れるのは社労士しかいない」という気概で対処しているので、疑問点は何なり躊躇せず聞いてほしい。
2013年11月16日
名古屋高裁とは異なる広島高裁岡山支部の判決
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 15:24| Comment(0)
| 1 障害年金
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