数日前になるが、私が業務として初めて受任した、消された年金奪還請求事件の裁決書謄本を受領した。主文は、「本再審査請求を却下する」である。理由を読むと、流石に裁判長としても豊富な経験を有する方が審査長になってみえるだけあって、社会保険審査官の時のような理論構成の漏れはない。
しかし、残念ではあるが、基本的部分での認識の間違いが1カ所、これはどう見ても無理な判断だと思われるカ所が1カ所あった。これについて事務局に、異議のある場合は、6カ月以内に裁判をするしか方法はないのかを電話で照会したところ、明らかな間違いがあった場合は、「更正決定」もあり得るという。その場合の申立て期間は、6カ月ではなく、60日だという。そのようなことはどこにも書かれていない。疑問のあることは、納得のいくまで聴いてみることの大切さをここでも体験した。実際の手続き(更正決定、訴訟、別事由で機構に請求し決定をもらう、又はこれらの併用等)を、これからどうするのかは別として、本日は、間違いと無理な判断部分について述べる。
何が認識間違いかと言えば、最も基本的な部分で、裁定通知書の、「時効消滅不支給通知部分」を「行政処分」としているところだ。この前提が違えば、当然に結論も違ってくる部分だ。国は法廷において、「時効消滅不支給通知部分は単なる事実の通知であって行政処分ではない」と釈明している。原文を引用し、もう少し具体的に述べると、「支分権が時効により消滅するか否かは、国民年金法又は会計法の適用により当然に定まるものであり、行政庁の処分が介在する余地はない」と表現され、更に、不支給通知部分の文言は、「同期間の支分権が時効により消滅している事実を原告(裁定請求者)に通知しているにすぎず、この部分については本件裁定には含まれない(乙第12号証18ないし19ページ)」と念押ししている。
従って、この側面に限定して、私の主張を一言でいえば、法律の解釈を誤った「単なる通知」で、一方的に、重大な権利を侵害するのは違法だというものだ。本文にその旨(国が単なる事実の通知である旨釈明していること)を書いたかどうかはしかとは覚えていないが、遅れた理由疎明書には、その旨を明記している。くどくなっても、本文にしっかり書かなかった私が、裁判でいう、弁論主義の責任を果たせなかったのかもしれない。
しかし、これは裁判ではないので、社会保険審査会が仮説を立て(議論をし合う場はないのだから、これは必須のことと考える)、自らの署長に不整合が懸念されるところは、疑問点を申立人に確認すれば済むことだ。私は社会保険審査会が間違った考え方を持っていることは今回初めて知ったことであり、本論でこれを述べなければ勝てない部分も出てこなかった。時効の問題については、このように、根本的な部分での行き違いが何度繰り返されたか覚え切れないくらいだ。その集積が、名古屋高裁の判決書で、「国は、判決理由とは異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することはできない」という一言に凝縮されていると感じる。
また、不思議なことに、日本年金機構に出した催告書に対する、機構が指示した年金事務所の拒否回答は、行政処分ではないから審査請求は受けられないが、年金事務所経由で日本年金機構に出した支払い請求書の回答は、「決定」として、行政処分性があるようである。この方法は、特にお願いした場合の例外かもしれないが、これに対しては、60日以内に審査請求ができるという。少し前までは、このような取扱いは考えられなかったが、次に記述する国会答弁等の影響かもしれない。
時効に関連して、Web検索をしていて、衆議院においても公的年金の消滅時効に関する質問主意書、及び同答弁書があることを見付けた。同じ平成20年だが、参議院が6月18日であったのよりは、少し遅れて、12月5日(第278号)のものである。答弁内容は、参議院のときとほぼ同じだが、重さが少し違う。厚生労働大臣経験者の長妻昭議員が質問し、その前提として、公的年金の時効の撤廃を求めている。答弁者は、時の内閣総理大臣麻生太郎首相である。総理大臣が、個別の事案ごとに時効を援用するかどうかを検討し、援用した場合に限り時効消滅すると述べている内容を、現職の厚生労働大臣や日本年金機構理事長が遵守していないのである。これが近代的文化国家であり、法治国家と呼ばれている日本の現状である。
今までの私の業務は、門前払い(却下)を防止するため、遅れた理由の疎明、及び機構の回答書の行政処分性に対する主張等に多くの労力とスペースを割かざるを得なかったが、これからは、本論に傾注できる環境になってきた。少し前になるが、裁定通知から約10年経過した大阪の障害基礎年金の受給権者から相談を受けた。20歳前障害の統合失調症だから、消された期間は相当に長い。しかし、残念だが、これを通せる主張が見付からずお断りした。私の話を最後まで聴かずに、途中で広島の実家に夜行バスで帰って、当時の診断書を2回も郵送してくれたが、どうしても請求の法的根拠が見出せない。
逆に言うと、消滅時効理由で不支給とされた方で、裁定から5年以内の方は、ほとんどの場合、奪還請求が可能である。このことをほとんどの受給権者も国民も知らない。メール又はFAXに限定させていただいているが、全国対応無料相談を恒常化したので、奪還請求、又は時効中断のための相談を遠慮なくしてほしい。
2013年08月10日
再審査請求結果について
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 22:12| Comment(0)
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