2013年06月22日

国と争うということ

     消滅時効理由不支給の障害年金奪還請求事件

 私は、消費生活アドバイザーであり、その本務は、消費者と企業のパイプ役、消費者と行政のパイプ役である。パイプ役というのは、端的に言ってしまえば、調整役と言えるものと思う。

 従って、私は副題について国に対して訴訟を提起し、名古屋高裁において逆転完全勝訴を収めているが、国と争うことは好んでした訳ではない。最後の最後の手段として、止む無く提訴したものである。

 当時の豊田社会保険事務所、愛知社会保険事務局、社会保険庁、厚生労働省、及び東海北陸厚生局の社会保険審査官とでき得る限りの説得の努力を重ね、それでもクレーマーのような扱いを受けたので、最後の最後の手段として訴訟を提起したのです。この間、厚生労働省の国民年金法担当の若い男性職員Mさんだけが、私の考え方に理解を示し、「訴訟は大変だから、社会保険庁の国民年金法の担当者と電話で直接話された方が良い」旨のアドバイスをしてくれた。愛知を飛び越えても構わないとまで言ってくれた。

 社会保険審査官は、原処分を裁定と勘違いして、審査請求を却下してしまったので詳しい考え方は分からなかったが、ほかは、Mさん以外全員が従来の考え方に従い拒否するだけで、従来と違った考え方の理由すら聴こうともしなかった。

 名古屋地裁では、私は完敗したのだが、この訴訟中にも国との意見調整は試みていた。当然ながら、係争中と知っているところは、口を閉ざしてものを言わない。地裁での争いの前半は、民法第158条1項の類推適用、又はその法意に照らした解釈の可否の問題であったが、その後半は、法定の支払期月(納期)、及び支分権の消滅時効の起算点の法律自体の解釈という一般論に争点が移った。(完敗の理由@:国第18条3項但書きの適用されるべき場合の議論で、国が「裁定請求手続きの遅れなど」と主張したのを、何をバカなことを言っているのだと放置したこと、A:私が、弁論主義の主張責任を果たせなかったことが主な原因です。@については、この言葉を、裁判官が、「裁定手続の遅れなど」と解釈して判決してしまったこと、Aについては、障害年金には実質的な停止条件が付いているので、条件成就までは具体的な権利は発生しない旨、及び基本権と支分権は独立した権利だから、基本権に対する権利不行使は支分権には接続されない旨を証明できなかったことでした。)

 これについても、色々主張する国の考え方に、「なるほど」というところが一つもなく、屁理屈ばかりに思えたので、素直な私は、「国の考え方は根本的におかしい」と気付きました。公的年金消滅時効に関する争いは多く、今まで何人かの弁護士が、代理人として時効問題について国と争っているが、たぶん、双方で屁理屈を言い合っているから、国の屁理屈が通常でないことに気付かなかったものと推測する。

 この気付きについて、日本年金機構に電話し、私の考え方の当否を尋ねた。時効特例法第4グループのU氏は、私の意見に同調し、お礼まで言うではないか。このようなことは、外部の人に指摘してもらわないと中々気付かないからと謝意を表された。

 前者の論点で一人、後者の論点で一人、私の意見に国側から同調者が現れた。しかし、裁判での指定代理人は、優秀な人が就いているものと推測するが、一人として同調者はいなかったのか、不思議に感じる。上司の意に右にならへか、役人の保身の現れか、宮仕えの憐れさを感じる。名古屋地裁の指定代理人は8人、名古屋高裁は12名、上告受理申立ては18名である。この中の一人として、「我々の主張は間違っている」と内部での議論を勧める者はいなかったのか。

 名古屋高裁においては、前者の論点についても、後者の論点についても、国の主張は何一つ認められていない。「国は、判決理由と異なる見解を縷々主張するがいずれも採用することはできない」と断言されている。いくら長年続けられてきたことでも、間違った法の運用をいつまでも続けることはできない筈だ。高裁の3人の裁判官が、最高裁の判例の考え方に基づき判断したことに、延べ38人の指定代理人の一人として納得しないのは、私の考えからは全く考えが及ばない。

 国としては、個別事件としても、これほどの完敗は大変なことなのだが、実は、国が、一般論で完敗していることに問題がある。これに気付いている方は意外と少ない。今まで42年間以上続けられて来たことは、どこまで救済されるのでしょうか。名古屋高裁が、「いずれも採用することができない」と判断した根拠に基づき運用されてきてしまった、という体制自体、及びチェック機能の欠如は、先進国の法治国家として許されないことだ。これは、勝ち負けの問題ではない。それ以前の危機管理の問題である。素晴らしい良識を持った高裁の裁判官、お三人の判断を国はどのように受けとめているのか。 

 国の姿勢を見てみると、民事訴訟の一当事者として勝手な主張ばかりを言っているが、いくら裁判とはいえ、私はこの考えには賛同し難い。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:21| Comment(0) | 11 所感
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