個人情報の保護が叫ばれ、そのために法律や条例が作られて既に久しい。ところが、個人情報の対象については、多くの人に知られ、過剰なまでの保護が図られている現実に遭遇するが、事業者の定義や、開示義務・或いは開示できるケース等については余り知られていない。知られていないというより、誤解されて広まっている場合が多い。
例えば、自治区の葬儀連絡表は、多くの自治区で作成され、充実のために色々な意見が出るのだが、この建設的な意見を、「個人情報だから」と取り入れない場面を目にしたことがある。当市の自治区は、一定以上個人情報を保有する事業者でもないし、当の本人が掲載に同意しているのだから、法にも、道徳にも抵触することではないが、してはいけないことのように扱われていることが多い。このような誤解は広く広まり、学校の同窓会や同級生名簿を作ることにまで及んでいる。
大雑把な話をしたが、個人情報の定義についても正確に理解してみえる人は少ない。国、都道府県、市町村によって、法、条例の表現に違いはあるが、個人情報の保護に関する法律(以下「法」という)の表現に沿って作成されているケースが多い。身近な資料を見ていただくと新しい発見があるかもしれない。事業者によっては、自社の関係規程を作成された経験をお持ちの方もみえる訳で、それらの方は、法律の趣旨を理解したうえで自社に合った規程を作られている筈だから、世間での誤解を残念にお思いと想像する。
一昨日のことだが、思わぬ出来事に遭遇した。ある事件に関連して、東京都の個人情報の保護に関する条例(以下「個人情報条例」という)の解釈を問題にしなければならないことが発生した。具体的には、宅地建物取引主任者の情報は個人情報だから開示できないという基本姿勢に関し、仮にこの基本姿勢が正しいとしても、「関係の事件については開示義務がある、又はない」という議論だが、東京都は、苦し紛れにとんでもない見解を持ち出したのである。
個人情報条例第12条には、「何人も実施機関に対し、当該実施機関が保有する自己を本人とする保有個人情報の開示の請求をすることができる」とあり、個人情報を開示請求できるのは、本人だけ(正しくは、第三者情報開示は、原則本人同意、例外制限列挙と思われる)だと言い出したのである。驚いたことに、この条例の主管である生活文化局 広報広聴部 情報公開課 個人情報係の担当者まで同じ見解を述べ、その考え方が間違っている旨をいくら説明しても、意見を聞く耳も持たない。
条例の目的・趣旨を理解していれば、このような考え方が成り立つ訳がないのであるが、人間とは困った生き物である。法第23条には、第三者提供の制限が規定され、実はその精神が反映されているのは、個人情報条例第11条1項のようであるが、担当者は、「国と都は違う」、とか「既にできている条例に基づいて運用している」という弁解ばかりで、話しにならない。
第12条は、単に、誰でもが、自分の個人情報は開示請求できますよ、という条文に過ぎず、他の第三者が開示請求できないことを定めた条文ではない旨説明しても、理解しようともしない。13条以下で、開示請求者(担当者の言だと本人のみの意)の開示請求方法を定めているので、間違いないという。
この担当者が、正職員であるのか、派遣社員であるのか、パートさんであるのかは知る由もないが、大マンモス自治体である東京都の従業員教育・管理体制に大きな問題のあることは否めない。個人情報に関する専門官ですらこの程度の認識であるから、一般人に間に誤解の多いのは当然と言えば当然のことかもしれない。
2013年04月13日
誤解の多い個人情報
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 23:48| Comment(0)
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