2012年12月22日

社会保険審査会の権能

 先週に引き続いて、不服申立て制度のあり方について述べます。私が今問題にしている公的年金の消滅時効の起算点誤りを指摘した事案は、行政運営上42年間以上も正しいこととして行われてきたことですので、一社会保険審査官(以下「審査官」という)が判断するには、余りにも大きな問題です。従って、審査官の却下は十分に予想されたことですが、却下理由については、もう少し、合理的かつ合法的な理由が附されると思っていましたが、専門家とは思えないほどに杜撰なものでした。これで審査官に対して何の制裁もないのは、このような行為を助長しているのと同じです。

 それでは、次の段階の社会保険審査会(以下「審査会」という)の再審査請求はどのように扱われるのでしょうか。基本的なものの見方・考え方が私とよく似ていて、業務関連知識、及び業務の取組み姿勢において、私が先輩社労士として一目置いているある大阪の社労士(スタイル、顔立ち、年齢等不詳の女性)は、「最高裁の判断が出るまでは、再審査請求でも結論は出せない(結論を先延べする可能性あり)」と読んでいます。しかし、私は、「それは許されない」ことと考えており、審査会は、色々検討して、却下理由を見付けるか、真正面から審査会が正しいと考えるところを裁決するかの二つに一つだと考えています。

 審査会が、裁判所と同じように、例え根拠法令がなくても、どんな場合にも裁決を下さなければならないのかどうかは定かでないが、少なくとも、同様の事案が最高裁に上告受理申立て(民訴第318条根拠)されていることを理由に裁決を先延ばしすることはできない筈です。

 社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下「官会法」という)の規定上も、審査官が審理を終えたときは、請求の全部又は一部を容認し、又は棄却する決定をしなければならない(官会法第13条)と定められ、審査会においても、この規定の準用規定が設けられている(同第44条)ので、審査会は、第13条同様、文書により、理由を附して裁決をしなければならない(同第43条)筈です。

 審査会は、却下しない場合は、本案の請求を容認するのか、棄却するのか、いずれかを選択しなければならなくなりますが、私は、審査会の委員等の職権の行使は独立してなされる(同第20条)ので、審査会に同様の定着した考え方がある以上、幾ら42年間以上続けられた行政解釈といえども、審査会が自ら出した過去の裁決に反する考え方を裁決において採用することはできないものと考えています。しかも、保険者(国)の考え方は、名古屋高裁が、「被控訴人(国)は、上記と異なる見解を縷々主張するが、いずれも採用することができない」と判断している内容です。官会法は、裁決は文書で理由を附してなさなければならない旨を規定しているので、違った考え方を採用する場合、過去の裁決理由と相反する理由を書くことはできないので、附する理由がなくなります。

 本案は、支分権(月々(実際は隔月)支給される具体的債権)の問題ですが、審査会が出している基本権に関する裁決で、審査会の裁決の考え方を行政が無視している事実がある(論文「公的年金と消滅時効について」V厚生年金保険法による年金の時効、藤田恒雄、季刊社会保障研究26巻3号)ので、ここは、審査会の威信を回復する良いチャンスと考え、画期的な、合理的・合法的な裁決が出されるのではないかと私は期待しています。

 話は少し脇道に逸れるが、行政により無視されている基本権に関する内容を簡記します。
 厚生年金保険法法第92条1項(「・・・保険給付を受ける権利(いわゆる基本件)は、5年を経過したときは、時効によって消滅する」と規定されている)の行政解釈(「受給権の発生(保険給付の支給事由の発生)時から5年を経過するまでの間に裁定の請求を行わないと、時効で消滅する」という解釈)は、「結局、裁定請求をする権利が時効にかかるというのと同じであるとして、首肯することができない」とする社会保険審査会の裁決(昭和41年12月27日裁決「例解社会保険審査会裁決要覧」(ぎょうせい)3巻153頁)があるが、無視されているようである。

 この具体的内容は、遺族年金の受給権発生時から5年経過で、当時の裁定者知事が、消滅時効を理由に不支給としたものです。受給権者は、受給権発生当時45歳であり、実際に受給できるのは、10年後の55歳到達時でしたが、即、受給できないのに「裁定請求だけは、5年以内にしておけ」というのが、知事の考え方であったのか、現実に、不支給とされてしまったのです。経過は定かではありませんが、現在では、全額が支給停止とされている年金は、消滅時効が進行しない扱いとなっています。従って、私は、障害年金についても、病状により障害の状態に該当するのかしないのか分からない裁定請求前の状況は、時効の停止理由としては、前述の全額支給停止の状態を超えるものと考えています。

 以上述べたように、公的年金については、基本中の基本事項についてまで曖昧なところが多くあります。これを機に、審査会の権能を高め、明解な裁決をしていただけることを切望しています。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 22:23| Comment(0) | 13 社会・仕組み
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