本日は、少々専門的になりますが、障害年金を担当してみえる社労士様向けに、一つの審査請求の却下事例を紹介させていただき、社会保険審査官と社会保険審査会の存在意義等について、ご意見をいただく材料を提供させていただきます。
私が受任した「障害年金支給請求審査請求事件」(裁定請求が約8年半遅れたため、3年6カ月分が時効完成を理由に不支給とされた事例)が、違法に却下されました。却下は予想されたことですが、再審査請求では、審議していただけるものと思っており、以下は、審査請求却下の経緯と、再審査請求が審議されるよう主張した内容です。これは、将来確実に結論のでる再審査請求の行方を、理由を付して、皆様にお知らせすることをお約束して、記すものです。
審査請求却下の経緯(再審査請求書一部抜粋)
1(はじめに)内容割愛
2(再審査請求代行について)
当職は、X(基礎年金番号・・・、年金コード・・・.以下「請求人」という)の委嘱により、日本年金機構(以下「機構」という)の処分(実際に意思決定し請求人に通知したのはa年金事務所:以下「年金事務所」という)に対する不服申立てとして再審査請求をします。
なお、本件処分性に対する国の扱いは、理路整然としていないので、旧社会保険庁長官(以下「長官」という)のなした本件裁定の、この部分が、「算定の基礎とならない」の部分に対しても、貴会に対しての再審査請求の「請求の趣旨」として予備的に併設します。
なお、後に詳述するが、国はこの部分を、「単なる事実の通知」であると、当職が原告代理人であった裁判の第一審において釈明しているので、純粋に考えれば、この部分だけについての再審査請求はできない(行政処分ではないので)こととなります。しかし、旧社会保険事務所等の回答では、「これも含めて裁定である」としているので、以上で述べた意味は、場合によっては、裁定の全部を取り消し、改めて、この時効消滅部分の表現の無い裁定を発すること、及び裁定の訂正を含むものと解釈願います。
3(再審査請求の正当性について)
本案審査請求をA厚生局Y社会保険審査官(以下「審査官」という)に却下されたので、本題に入る前に、再審査請求の正当性について前回よりも丁寧に述べます。
本件の問題の本質は、年金の給付(支分権)に関する消滅時効の起算点の運用誤りの問題です。そもそもの時効の運用誤りの問題、しかも基本的な事項に対する、国家的・組織的な法解釈誤りを正すべき問題を、単純に法の定める審査請求申立期間の経過を理由に却下すること自体不合理な解釈で、許されるべきものではありません。保険者(国)自体が問題を発生させている張本人なのですから。
審査官は、現行法の具体的運用においても、法違反を侵して平気でいます。審査請求時、請求人は、審査請求の趣旨及び理由 6 において、予備的請求として、原処分を裁定とした場合の社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下「官会法」という)第4条1項但書きでいう「正当な理由」について疎明しているので、これが、法で言う「疎明」に該当しないのであれば、官会法第7条に基づき、審査官には相当の期間を定めて補正を命ずる義務があり、それでもその指定期間内に補正しない場合に限り却下できるものです。本決定書には、この補正については全く考慮されておらず、一言も触れられていませんでした。この件については、電話で抗議しましたが、「申出に対して審査した」とか、却下理由は「決定書に書いてある」とか言うばかりで、「既に私が、判断をしているので、不服があれば再審査請求をしてくれ」とのことでした。
また、主請求に対する国民年金法や厚生年金保険法の言う「処分」についても、独自の見解で、これを「「催告書」に対する回答と思われる」と表現し、行政処分性を否定しています。官会法には、「処分」又は「行政処分」に関する定義はなく、この法律に定めが無い事項は、この法律の一般法である「行政不服審査法」が適用になることが、同法第1条2項に「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる」と規定され、第2条に「処分」の定義が規定されているので、審査官のした決定が、この定義に基づかず、独自の見解によりなされたことは明らかです。念のため、この規定の文言を記載すれば、「この法律に言う「処分」には、各本状に特別の定めがある場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの(以下「事実行為」という。)が含まれるものとする」というものです。審査官のした限定的な規定は、行政事件訴訟法による解釈と混同しています。同法では、「審査請求の採決、異議申立ての決定を除いた、いわゆる第一次的処分だけを意味する(3条2項)」が、行政不服審査法では、その目的が異なるので、前記のとおり広く規定され、解釈されています。
また、この法律の趣旨は、第1条1項において、「この法律は、行政庁の違法又は不当な行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と述べられているので、本件について審査官のなした決定は、この法の目的に反する、責任逃れの違法なものであることが明らかです。具体的に、年金事務所の出した回答書について考えても、これが「権限ある行政庁の意思に基づく外部に対する意思表示であり、国民の権利義務又は法律上の地位に直接かつ具体的な影響を及ぼす公権力の行使に当たる行為である」ことは明らかです。
そもそも、このような問題が起こること自体、保険者(国)の失態であり、官会法の目的から言っても、却下すべき問題ではありません。原因が全て国にある故意(この可能性が強い)又は重大な過失ですので、本来、国が反省し、可能な限り自主的に返済すべき性質のもの(国の債務)です。当然に裁判をすれば、代理人が止むを得ず行ったように、訴訟の追行が、実質的当事者訴訟として可能であるが、障害者にその時間と費用を負担させることは、官会法の趣旨に反します。何時まで続くか分からない裁判を、障害者に負わせることは、「この請求は諦めよ」と言っていることと同義です。法律の趣旨からいっても許されることではありません。
審査請求が遅れた理由(理由書全文)
本案について、原処分を日本年金機構(a年金事務所)が発出した回答書であることが否定された場合の予備的請求として、以下に、官会法第4条1項但書きの疎明をします。
1 請求人が審査請求できることを国が阻害していたこと
具体的事実については、以下に詳述しますが、この事由は、本案案内の事務連絡に例として挙げられている「天災等の正当な事由」に該当することは勿論、天災に勝る強い事由です。
@年金事務所の回答書でも明らかなように、当時の保険者の教示・指導(現在も同様です)は、問題の部分の支分権については「裁定請求から5年を超えて遡及した部分の支分権は、時効が完成しており、会計法第31条1項により、援用も要せず、放棄もできないから不服申立てできない」というものでした。
Aこれを不合理と思って、何らかの不服申立てを申し出た者にも、「裁定から60日を越えて経過しているから、審査請求もできない」、従って、再審査請求もできないし、「再審査請求前置主義を採っているので、裁判もできない」というのが、旧社会保険事務所の回答でした。
B裁定通知書の「この部分が、算定の基礎とならない」旨の記載は、裁判における国の釈明では、これは「単なる事実の通知であって、行政処分ではない」と釈明しています。これによれば、この部分の請求については、行政処分ではないので、裁定に対する不服申立ては不可能となり、直接的には、本請求者が行ったように、改めて、この部分の支払い請求を日本年金機構に行い、この回答に不服があれば、これに対して不服申立てをするより外に方法はありません。
2 請求人が真実を知るのは不可能であったこと
@本案について、請求者が受給権侵害の事実を知ったのは本年8月31日であり、審査官が考えているような期間内には審査請求できるものではなかった。
A公知のように、このような保険者(国)の取扱いが、違法であったと考えている人はほとんどいなかった。まして、一国民である請求者が知り得る余地はなかった。
B基本的な法律の運用で、保険者である国がこのような重大な根本事項で間違いを犯しているとは通常人には想像すらできない状況であった。
3 その他
請求人は、審査請求をできることを知ってから、60日以内に行動していること。及びこのような事情の中での本件審査請求の遅れであり、この審査請求の遅れは、誰の目で見ても客観的に明らかな正当な理由ですので、ご配慮ください。
この疎明に関しては、審査官における解釈では、「証明」以上に厳格に解釈されていたことは、代理人も承知していましたが、請求人においては、どうしようもない国の誤った法解釈に基づく審査請求の遅れですので、的確なご判断を重ねてお願い申し上げます。
障害者の重要な権利侵害の疑いの濃いこのような問題に対して、社会保険審査官、又は社会保険審査会が門前払いするのは、制度の趣旨に反しますので、宜しくお願い申し上げます。
2012年12月15日
違法な審査請求却下について
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 23:08| Comment(1)
| 1 障害年金
社会保険審査会の
西島幸夫
宮城準子
木村格
以上の3名は国民年金法がわかっていなくおかしな裁決しかできないのでやめるべきである。
厚生労働省 保険局
東京都千代田区霞ヶ関1ー2ー2