本日は、本来業務に関する障害者支援の活動について、訪問者有志各位のご意見を求めます。ご意見は簡潔で十分ですし、要点を箇条書したものでも結構です。メールか電話で宜しくお願い申し上げます。以下は、業界として、社会保険労務士法に基づき主管の厚生労働大臣に対して改善意見を提出すべく、全国社会保険連合会に提出した意見票の概要です。主に国民年金法について記述しています。
1.問題点
国民年金法第30条に基づく障害基礎年金は、法律の定める要件を具備したときから受給権が発生する規定ですが、重度の精神障害等の場合は、本人が病気、又は障害と認識さえしていない場合が多く、種々の事情で、裁定請求自体が、10年、15年と遅れる場合があります。その場合も、現在の保険者の運用ですと、5年遡及を越えた部分の支分権については、消滅時効が完成しているとして支給されていません。
現実的な時効の中断(権利行使)機会のないこのような場合まで、国民の生命に係る重大な給付(権利)を一方的に剥奪するのは、社会的に問題です。この場合、生活に困窮しているケースが多く重なります。
2.具体的改善策(解決策)
@ 障害基礎年金、及び障害厚生年金の裁定請求を代理人でもできる旨を、社会保険審査官及び社会保険審査会法(第5条の2第1項)のように、法律の規定で明文化する。
A 成年被後見人の登録を後から受けた場合でも、客観的に「心神喪失の常況」であったと認められるような場合には、裁定請求の属する月の翌月の初日を支分権消滅時効の起算日とする特例規定を設ける。
B 障害基礎年金、及び障害厚生年金の消滅時効期間を、民法の一般債権の時効期間と同じく、「10年間」、とする特例を設ける。
現状の問題点
1 憲法第25条2項の理念に基づく国民の生存権に係る重要な給付(権利)が、現実の権利行使の機会がないまま消滅時効が完成してしまうことは、不合理であり社会正義に反すること。
@ 本件支分権も、基本権の発生に連動して、国民年金法第18条3項の定める原則的な支払期月が法定の支払期月と解釈されているので、例えば、10年裁定請求が遅れた場合は、約5年分の支分権が全く、現実の、権利行使の機会がないまま時効消滅したものとして支払いがなされていません。それは、法律上、裁定請求を早く(消滅時効が完成する前に)すれば、権利行使できたとみなされているからです。裁定請求前の全ての期間(消滅時効が完成したとみなされている期間を含む)が、権利行使をしようと思えばできた期間とみなされています。しかし、実質上の行為無能力者は、裁定請求ができる訳がないので、この運用は大きな問題です。
消滅時効進行上の法律解釈の通説では、期限の未到来とか、条件の未成就等(本件で述べれば、国に直接の原因がある場合を除き全ての場合)以外の場合は、事実上の事由、又は個人的事由と考えられているので、現実の社会のほとんどの事情が消滅時効の停止事由とはならないことになっています。
A 成年被後見人が、時効期間満了前6カ月内に法定代理人を有しないときは、法定代理人が就任後6カ月以内は、民法第158条1項の適用により、消滅時効の完成が猶予される旨の規定があります。この規定の適用要件は、成年被後見人が時効完成前6カ月の間に、例え1日でも、法定代理人(成年後見人)を欠くこととしています。この期間に成年被後見人でないものであっても、実質的に心神喪失の常況にある者には、類推適用等がされている判例もありますが、この判例法理の適用実績は極めて少数です。元々、周りの者が、時効完成前に裁定請求できる状態だと気付けば裁定請求を手助けすれば足りることになるので、この問題では、この規定は実行上機能していません。
また、前述の判例について、少し詳しく述べれば、上記 1 の不合理を救済するには、上記 @ の理由により、本条による以外に方法はないのですが、この適用等は、訴訟によらなければならず、理解しづらいものです。
一方、本来の消滅時効期間の経過後に成年被後見人に登録され、成年後見人が6カ月以内に裁判上の請求をした場合は、法意による解釈(最判平10・6・12民集52巻4号1087頁)とか、類推解釈(東京地判平11・5・28 判時1704号102頁)により、裁判所は、消滅時効の完成を猶予する旨の判断を示していますが、前者は、ワクチン禍訴訟の判例で、加害者が債務者の関係があり、後者は、前者よりは広く類推適用していますが、未だ最高裁により認められていない判例ですので、立法による救済が必要です。
B 更に、本件支分権は、民法第127条1項(本件では、基本権につき、3項も関係する)の定める、停止条件付債権と言える要件を備えた債権であるのに、保険者は、言わば、停止条件の成就前に時効を完成させているという、現実の社会とは遊離した運用をしており、合理的な運用解釈とは言えない。
C 国民年金の保険料の納付率が制度の維持が困難になるほど悪いのに、二十歳前障害とか、障害基礎年金の有効な保険機能を普及活動の有力な武器として活用していない。
D 本来権利のあるものに不支給としていることによって、生活保護の受給者を増加させている可能性が高く、このことは、一般労働者の健全な勤労意欲を維持・向上させる意味、及び社会の実態を把握する上でも問題である。
2 精神障害者、視覚障害者、及び聴覚障害者には、止むを得ない事情により裁定請求が遅れている者が数多くいるという事実があること。
@ 裁定請求の遅れは、いずれの場合も、直接的には国の責任とは言えないが、宣伝とか周知の不足という意味では、いくらかは国に責任があるものと考える。
A 障害年金の取扱を得意とするある社労士は、自分の取扱う事案では、障害年金の分かりにくさとか手続の複雑さとかが原因で、ほとんどが障害認定日から5年超経過しているものだと述べてみえます。服部営造先生の書籍(年金の基礎知識、自由国民社)の事例等を拝読しても、多くの該当事例が存在するものと推測される。
3 2 の A の根拠
@ 本件支分権は、実質上、停止条件付債権と言える。
A 問題の期間に心神喪失の常況にあったかどうかは、本人の支援者等の協力により、家庭裁判所が客観的に判断を下してくれるので、実行上問題はない。
※ 現在(平成19年7月6日以降)の国民年金法第102条は、消滅時効の完成には、援用を要することに改正されているので、裁定請求が遅れた事由が、止むを得ない事情の場合に、保険者(国)が時効の援用をしないことで足りるが、客観性、透明性、及び予見可能性を高める意味で提言に及びました。
2012年04月14日
厚生労働大臣への意見票
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 23:13| Comment(0)
| 13 社会・仕組み
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