2022年06月04日
矜持を捨てた社会保険審査会
社会保険審査会は 令和4年5月31日 障害厚生年金 支分権消滅時効に係る事件について 請求人の請求理由に なぜ 採用しないかも示さず なぜ 棄却するかについて 理由となり得ない理由を付けて 棄却裁定を下した (令和3年(厚)第740号)
社会保険審査会の 先例では 老齢基礎年金の 支分権は裁定前には 発生しない とする ものが少なくとも3件はある (平成20年(国)第330号、平成18年(国)第110号、及び平成14年(国)第61号)
しかも この内の 最も新しい先例では 保険者国が 同じ過ちを 繰り返すので 異例の 裁決書の中での 遺憾の意の表明までしている
裁決書の一部を紹介し、この当時の審査会の矜持の姿勢も記載しておこう
「 法第16条は、給付を受ける権利は、その権利を有する者(受給権者)の裁定請求に基づいて社会保険庁長官が裁定する、と定めており、この規定の文言からすると、裁定の法律的な性質は、既に存在する受給権を確認する行為であると解される。 しかしながら、実際に給付を受けるためには裁定を受けることが不可欠であり、裁定を経ることなく受給権を行使することはできないことは法の規定の体系からみて明らかであるから、裁定を経る前の受給権なるものは、実体的な権利であるとはいうものの、実質においては裁定請求権に近い、現実的な実効性の希薄なものである。このような実効性の希薄な年金受給権について、裁定を経ない状態のままで、法令上の支給月の到来により個々の支分権まで発生するとするのは、事柄の実体から乖離した観念操作の嫌いがあり、容易に首肯することはできない。」
「すなわち、老齢基礎年金においては、現実に(支給繰下げの申出を伴うこともある)裁定請求があるまでは、支分権が発生するかどうかも、その内容も確定しないことになるが(法第28条、国民年金法施行令第4条の5参照)、 前記主張のような見解に立ちつつ、このような例外を認めることは、甚だしく一貫性を欠いた法制度を認める結果となるものであり、それよりも、常に裁定があって初めて支分権が発生すると簡明に解する方が勝っているといわなければならない。」
これに対する 保険者の行為について 社会保険審査会は 以下のように 遺憾の意を表明している
「 また、審査官も請求人から当審査会解釈の存在を指摘されながら、それについて検討することなく、漫然と本件審査請求を棄却したことは、請求人から、その職責を十分に果たしていないと批判され、その責任を追求されてもやむを得ない面がなきにしも あらずと言わざるを得ず、はなはだ遺憾であることを、敢えて指摘しておく。」
この先例は 老齢基礎年金の 支給そのものが争われた ものではないが 裁定前に 老齢基礎年金の 支分権が既に発生しているので 寡婦年金は 支給されないという判断に対して それはおかしいと判断したものである
しかし この問題は 事の基本中の基本の事柄であるので 問題そのものである 年金の支給の 要否が 寡婦年金から 障害年金に変わったからといって その考え方が 変わるはずのものではなく 異例の遺憾の意の表明までした審査会の矜持は どこへ行ってしまったのか
官会法によれば 裁決には 理由を明記する必要があるが 書かれている理由は 事実を述べているだけで 全く理由となっていない
つまり 請求人の 請求理由に対して 全く 答えていないのである
立場上 保険証国 の施政方針に反する裁決を 出しづらいことは分かるが 先例や 文献に反する 裁決を出すのも 事をますます複雑化することになる
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 17:04| Comment(0)
| 1 障害年金
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