2021年10月02日
国側の理不尽な上告受理申立て
本ブログにも何度も登場している石川県の K.F 様が、国を相手にした障害年金支分権消滅時効の成否を争う控訴審事件について、国は、9月15日(水)の名古屋高等裁判所 金沢支部の判決について期限の前日である9月28日(火)に上告受理申立書を提出した。
約30年間にも及ぶ K.F 様のご苦労に対して、真に理不尽な行為であると怒り心頭である。
新聞報道によると、国のコメントは、「厳しい判決である」とか、「関係省庁と協議の上、適切に対処する」とか述べていたが、これが適切な対処でないことは明らかである。
上告受理申立てというのは、民事訴訟法第318条に基づく、いわば、上告を受けてくださいという裁判所に対するお願いである。
なぜ理不尽かと言うと、国がこの行為を選んだのは、面子を保つためと時間稼ぎであると思われるからである。
かつ、この種の申立ては、ほとんどが三行半の定型文の調書(決定)により受付されないのが現状である。国側が、申立てた場合でも、例外ではない。
上告受理申立理由としては、私が考えるには2つが思い浮かぶ。
1つは、原判決が最高裁44号判決に反するとする主張であり、今1つは、関係職員の違法行為とされた行為は、内規等決まりどおりに行ったもので、国家賠償法に基づく請求ができるほどの違法性があるものではない等と主張するものである。
しかし、前者については、元々、行政処分である裁定前に障害年金の支分権の消滅時効は完成するなどということは論理上ありえないことであるが、44号判決が出されている現在、それを争ったとしても下級審においては、最高裁の判断に反する判断を下すことは、実質的に極めて困難であるので、第一審での決着を目指して、ご本人が10回以上にわたって年金事務所等を尋ね裁定請求の意思表示及び裁定請求様式の交付請求をしたにもかかわらず拒否したという特別な事情を前面に出して争ってきたのである。
後者については、国家賠償法のいう違法性までないとした場合においても、このような事情の場合に消滅時効の援用を主張することは信義則に反することであるので、この理由についても、上告受理申立理由とはならない。
一旦、このような書類が出された以上、早くても半年以上は高裁判決が確定しないこととなり、相手方(受給権者)にとっては極めて大きな負担となるのである。
一方国の担当職員は、国民の税金を使い通常の勤務時間の中で行う業務であるので、何の負担も負わない。その間年利5%の遅延損害金を支払うこととなっても、自らの懐が痛むわけではないので、平気である。真に無責任な行為である。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:30| Comment(1)
| 1 障害年金
被告国(上訴人)が、上告受理申立てをしたそうですが、原告石川のK.F様(被上訴人)が訴訟手数料支払うことなく、被告国自身が、その主張の間違いを主張するかの如くと考えることができます。つまり、無理矢理の主張には必ず、ほころび(ボロ)が含まれているからです。逆転の発想です。トコトン法的に争うべきです。
上告受理申立書を提出したということは、上告の理由
(1)控訴審判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある場合
(2)法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる場合
とされていること(民事訴訟法318(上告受理の申立て))からすると、いずれが「真に理不尽」かを争うことになりますね。
具体的には、何を以ってこれらの条件に当てはめようとするかは、被告国の上告受理申立書にかかる「上告受理申立理由書」の提出を待つこととなりますね。
しかし、名古屋高等裁判所金沢支部の判決においては、「最高裁 44号判決を引用して、5年間支給制限を遵守している」とのことでしたね(2021.9.18,Kidoブログ)。従って、最高裁判決の先例の引用間違いを争うものではないとの解釈もできます。
仮に、引用に係わることであれば、債権の基本権と支分権に関する最高裁の最新の判決は、最高裁第三小法廷 44号判決(H29.10.17)ではなく、その3ヶ月後の最高裁大法廷判決 受信契約締結承諾等請求事件(第1440号他、H29.12.6)となることにご留意を。
この判決書は、全27頁に及ぶものですが、その核心「第4 平成26年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告受理申立て理由第2の1について」(p16)によりますと、
「受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。(執筆者注:契約後に成立する各支分権の消滅事項の進行の起算点は、各支分権の支払期限の翌日から進行することによる))の消滅時効は,受信契約成立時から進行するものと解するのが相当である。」、つまり(執筆者注)、受信設備の設置日(障害年金の「障害認定日」に相当)ではなく、受信契約成立時(年金の「裁定請求によって、厚生正労働大臣による決定の裁定が成立した日」)であるとすること。
加えて、「裁判官岡部喜代子の補足意見」(p17〜)では、「(放送受信規約第4条第1項)(括弧:筆者付)、その趣旨は,受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が,意思表示の合致の日に成立する旨を述べていると解すべきである。」(p18中程)としていることとし、明快である。
岡部喜代子裁判官は、最高裁 44号判決にも裁判官としてかかわったものの、3ヶ月後には自らした誤判決である最高裁 44号を見事に修正していることに留意すべきでではないでしょうか。
次はこの判決pdfアドレスです。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/281/087281_hanrei.pdf
なお、最高裁判所が前記のように判決をpdfにして公開しているように「名古屋高等裁判所金沢支部の判決(2021.9.15)」、及び、「被告国の上告受理申立理由書」をpdfに変換し公開いただけると、多くの支援アドバイスがいただけるのではないでしょうか。