2021年09月25日

誤った保険者意見そのままの社会保険審査官


最近、審査請求事件で誤った保険者の意見をそのまま決定理由として採用している決定書に私が担当した事件だけでも2件遭遇した。

1件は、障害年金の支分権が行政処分である裁定前に時効消滅しているか否かを問う事件であり、もう1件は、既に20歳前障害による障害基礎年金の受給権を得ている者が、20歳過ぎの厚生年金保険の被保険者である期間中の実際の初診日を請求根拠とした裁定請求を却下された事件に対する不服である。

前者の事件に対する誤りは、令和2年4月1日に改正施行された国民年金法及び厚生年金保険法の消滅時効の改正規定の適用は、裁定請求日を基準にして適用されるものではないのであるが、それを保険者意見に従い何の検討もせず施行日以降に裁定請求があったとして改正新法を適用した誤りである。

後者については、20歳前障害の障害基礎年金の受給資格のある者について、20歳前の厚生年金保険の被保険者であり、かつ、その期間に初診日のある者については、20歳前障害による障害基礎年金ではなく、障害厚生年金の受給権を有するのであるが、これについても、保険者意見にそのまま従い、既に受給中の障害基礎年金の初診日が初診日であるので、その初診日には、厚生年金保険の被保険者でなかったので、障害厚生年金の裁定請求はできないと判断したものである。

前者の誤りは、次の事例を考えれば、誤りは明らかである。
令和2年4月1日改正施行の民法の民事法定利率の規定が、5%から、当面は3%で改正されている。3%が適用されるのは、例えば、その事件の元となった契約書の作成日でもなく、提訴した日でもない。
年金についていえば、支分権について、年金法が適用されるのは、基本権の発生が、平成19年7月7日以降に発生した事案であり、それ以前に発生した事案は、会計法が適用になる。

後者の誤りについては、20前障害の受給権のある者が、実際に19歳時に初診日があり、その日に厚生年金の被保険者であった場合、無拠出年金である20前障害ではなく、障害厚生年金を請求できるのであるから、上記の誤りは明らかである。

いずれの誤りも、法律解釈の基本を間違ったものであり、専門家として恥ずべきことであるが、これが東海北陸厚生局の担当社会保険審査官の実力である。というよりも、実際は、保険者の意向に逆らえないのかもしれない。しかし、これでは悪代官そのものである。

こんなことでは、受給権者にとって、何のための審査請求か分からなくなってしまうので、 審査請求のやり方を抜本的に変える必要があると思われる。

各地域の社会保険審査官が、このような無茶苦茶な決定書を頻発するので、社会保険審査会の業務が超繁忙になり、現在では、平均として8カ月を要する事態である。

これでは、社会保険審査官及び社会保険審査会法の趣旨が活かされていないので、抜本的な改善が必要である。

必要最小限の措置としても、社会保険審査官の人選を仲間同士である厚生労働省の職員から出すのではなく、例えば、総務省から選出する等の改革が必要であると思われる。

posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:18| Comment(0) | 13 社会・仕組み
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