既に20歳前障害の障害基礎年金を受けているM.S氏の依頼で、障害厚生年金の被保険者期間中にある初診日を請求根拠で新規の裁定請求として行った請求に対して厚生労働大臣は却下の処分をしてきた。
これは、法令の解釈上も標記の面からも矛盾するので、以下のとおり「審査請求の趣旨及び理由 補充書」を提出した。
これは、機構内部においても相反する判断があるほどの矛盾した判断であるので、この内容を下記資料において公開する。
事件番号 第2−???号
令和3年5月??日
東海北陸厚生局 S.K 社会保険審査官 殿
請求人 M.S
代理人 木戸 義明 ㊞
代理人 木戸 義明 ㊞
審査請求の趣旨及び理由 補充書
第1 保険者意見は法解釈を誤っていることについて
保険者代表(機構本部障害年金センター)の意見書によると、その前文で、「下記のとおり、請求傷病の初診日が平成26年2月4日(厚生年金保険の被保険者であった期間)であることを認めることができないため却下したものであり、原処分は妥当である。」としている。
記の記載では「軽度精神発達遅滞については、20歳前に発症する生来性の疾患であり、軽度精神発達遅滞と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、軽度精神発達遅滞が起因して発症したとして「同一疾病」と取扱うとされている。」ことを請求人の申立てした初診日を認めることができない理由としている。
これには、2つの点で法律の解釈誤りがある。
1 今回の裁定請求は初回の裁定請求とは別物であること
請求人が今回裁定請求したのは、全く新しい厚生年金保険法に基づく新規の裁定請求であり、当初の障害基礎年金の裁定請求とは全く別の請求である。従って、このために必要な書類は全て整えて提出している。
これに対して、同じ傷病障害として取扱う「裁定替え」(別紙R 参照(添付省略)、診断書の提出要請なし、ただし、既存の年金証書の提出を条件とされた)であれば、当然に同じ初診日になるが、国民年金法上、20歳前障害の者が20歳以降に実際の初診日を裁定請求上の初診日とすることは合法であり実務上も頻繁に行われている。これが法令上の初診日の定義に合致した大原則の初診日であるので、この取扱いは当然である。
これを無理矢理、国民年金法で初診日とされた日を厚生年金保険法上も初診日は一つしかない(「真理は一つ」しかない)として、一つの初診日に統一することは法令の仕組みに合致しないものであり誤っている。もっといえば、この却下は、受給権者の正当な請求権を侵害していることとなる。
結論として、この2つの請求は、別物であるので、確認後は2つの受給権が生ずるだけのことであり、実際にどちらを受給するかは、受給権者の選択の問題である。
2 本件の場合に「同一傷病と取扱うこと」は、法令及び医学上の根拠がないこと
保険者代表である日本年金機構は、本事業の実施機関として厚生労働大臣の行う事務を委託されているが、この実施に当っては、裁定等の確認行為に裁量権はないものとされており法令等に従って運用する義務がある。
保険者代表の意見書がいう「軽度精神発達遅滞と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、軽度精神発達遅滞が起因して発症したとして「同一傷病」と取扱うこととされている。」(意見書2枚目1行目〜)などということは、法令にも、障害認定基準にも決められておらず、既に添付した添付資料2.障害基礎年金お手続きガイド(初診日の項目を抜粋)にも記載されていない。
上記を根拠とするのであれば、少なくとも出典を明らかにすべきであり、医学上の根拠も概要を示す必要がある。
まして、現実には、軽度精神障害の者がうつ病にり患する必然性はごく一部の場合についてのみしか起こっておらず、実施機関の都合に合わせた「勝手な決め」で重要な国民の権利が侵害されることはあってはならないことである。
第2 本件は提出前に豊田年金事務所と十分に打合せ済みであること
却下ということは、全く審議をせずに門前払いしたということである。
初診日に係る請求関係は、豊田年金事務所加藤お客様相談室長と十分打合せを実施し、そのような請求内容であれば「受付けざるを得ない」との回答を得ている。また、書類提出日の受付担当の鈴木様は、障害年金についても熟達した担当者である。
保険者意見の判断は、受付窓口の判断とも相反する判断であり、同じ組織内においても矛盾する判断である。
従って、理由のある棄却はあり得るとしても、初診日について深く検討することなく本件を却下することはあってはならない取扱いである。
以上