2021年05月01日

無責任な保険者代表の回答


私は、障害年金支分権消滅時効の問題について、現在、訴訟で5件、審査請求で2件の事件に係わっている。

審査請求事件は、東海北陸厚生局と近畿厚生局であるが、過日4月15日(木)10:00から約30分間、前者の事件について保険者代表と口頭意見陳述の機会があった。

保険者代表とは、電話会議方式でやり取りするのであるが、下記の質問事項を予め提出してあるにも拘らず、保険者代表2名の回答は、いずれの回答についても、「ご質問のような法律的見解について回答できる立場にありません」との回答であった。

社会保険審査官や社会保険審査会は、法令及び規定に沿って問題を解決する職務であるはずであるが、肝心な保険者代表が、法律的な見解を持っていないというのであるから、無責任も甚だしい。

この問題については、そもそも、保険者の姿勢が一番大事なのであるが、そこで信念ある見解を持っていないということになると、司法が忖度によって、行政の味方をして、最高裁の担当裁判官が、訴追請求までされる事態になったということになる。

私にとっては、この保険者代表の回答は想定の範囲内の回答であったので、深く追及することは控えたが、保険者の中枢機関の回答がこれでは、何の信念もなく仕事をしていることになる。

十分すぎるほどの時間はあったのであるから、責任者との十分な協議の後に口頭意見陳述に臨むべきであり、保険者代表としては、無責任極まりなしといわざるを得ない。

質問内容は以下のとおりである。


別 紙

口頭意見陳述における保険者への質問


Q1 本件裁定請求は、厚生年金保険法第47条1項(国民年金法第30条1項)に基づく認定日請求(本来請求、又は遡及請求と呼ばれることもある)である。この請求は、これが認められた場合は、障害認定日の翌月から支給されることを法の趣旨としており、従って、年金決定通知書にも全期間分の年金額が記載され通知されている。
 その法の趣旨を時効の問題として、同じ年金法において支給制限したり、内簡により支給制限することは許されることではない。

 障害年金の支分権について、時効消滅の要件事実のないことは、初診日の決定権が保険者国にあることからも証明できる。

 受給権者の初診日の申出日は、保険者により前後にずらされることがある。後にずらされることは稀であるが、再発初診の場合に生じる。従って、全ての場合に、裁定前に初診日も障害認定日も決まっていないのであるから、裁定前には、時効期間を計算することはできず、どんな場合でも、裁定前に障害年金の消滅時効が完成することはあり得ない。

 これを支給制限することができるとしたら、遡及請求が認められた場合のあるべき支給期間が、10年間とか5年間とか規定されていた場合だけであると思われるが、保険者国はどのようにお考えであるのか。


Q2 本件の問題については、多くの訴訟が提起されている。しかし、障害年金については、支分権について時効消滅の要件事実が存在しないのだから、消滅時効の問題ではなく、上記のとおり、遡及請求が認められた場合のあるべき支給期間の問題である。
これについては、保険者国が、無制限支給を妥当でないと判断するのであれば、基本権に係る時効援用権を放棄しているのであるから、年金法の支給期間の規定を一部改正することは容易である筈である。国年法第18条(厚年法第36条)1項に「ただし、年金を遡及して支給する場合は、10年間分を限度とする」等と追加する等の改正をするのが最善の改善策と思われる。
 なお、この10年という改善案は、民法改正前の一般債権の場合の10年、定期金債権の「最後の弁済期から10年間行使しないとき」、改正民法の客観的起算点による時効期間の10年、及び妥協点としての10年を目安としただけの私案であるが、あくまで、国の時効援用権の放棄との調整であるので、請求者は少なくとも10年間とすべきと考える。
 請求者は、10年間は、障害年金だけで良いと考えるが、他の年金と差別することとなり異なった期間を設定しづらいこと(障害年金(認定日請求)については、国年法第30条1項という特段の規定があるので、10年が妥当とする考え方もある)も考えて10年間の提案をしている。この提案は、当事者双方にメリットが大きいと考える。

 遡及請求の審査の負担の軽減(認定日請求を認めてしまうと無制限支給となると担当者の責任が重くなる)と無益な争いをなくすため、期間の問題は別として、保険者国にこのような改正を検討する意思があるのかないのかをお聞きしたい。


請求人 ?? ? ㊞


審査請求代理人 木戸 義明 ㊞

posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:38| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
【「支給」と「支払」の違い、支分権は支払いに関連】
私見ですが、解決の手かがりになることを願っています。

第1.「支給」と「支払」の違い
 法36条1項(国年18条1項)では、表題を「(年金の支給期間及び支払期月)」とすように、年金の「支給期間」の開始月と終了月を規定する条項です。
 実際の支払開始月を規定するものではありません。
 つまり、36条1項は「年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で終るものとする。」とされいることから確認できます。この規定を障害年金(法47条1項(国年30.1項))に適用すると「年金の支給は、障害認定日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した月で終るものとする。」となります。

年金事務所窓口では、この計算期間の開始月のことをもって「権利が成立」した等と称することがありますが、債権たる権利は何も成立していません。ただ「開始月」を規定するだけ、支払期月とも異なります。

第2.支払期月の到来で、支分権が派生
 では、実際に支払いが開始されるのは何時か?となりますが、
 36条3項(国年30.3項)の規定では「年金は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、(略)」とされ、単に偶数月たる支払期月を規定するに過ぎません。
 では、この支払期月はいったい何時かと??なりますが、
 裁定請求を受け、決定の裁定が成立した直後に到来する偶数月から、順次、支払期月が到来することを規定していることになります。
 なお、債権たる年金基本権の成立は「決定の裁定が成立」をもって成立します(法33(国年16)。

この支払期月の到来する都度、支分権が派生的に成立し、それぞれ支払期限が設定されることになります。
従いまして、第1回支分権の計算期間は、かなり、長期間になります。障害認定日の属する翌月から、最初に成立した支払期月の前月までとなるからです。

第3.第1回の支払期月以前の偶数月は、支払期月ではない。消滅時効が進行する余地なし
 障害認定日の翌月から、第1回の支払期月前までの偶数月は、支払期月は派生しない。債権たる支分権が発生していないことになります。
 従って、消滅時効も発生する余地がない。消滅時効は、第一義的には、成立した債権を目的にしていることによります。また、債権が成立しても、法律上の障害たる「支給の停止」により、その時点から、時効の進行も停止されます(法92条2項(国年102.2)。
Posted by hi-szk at 2021年05月21日 14:36
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