過日は 類似事件についての 結審の話をしたが 本日は新しい事件の提訴の話である
やはり 弁護士との 共同受任の事件であるが 受任弁護士が 忙しくしており 主張構成を 文章化するまでに 相当の時間がかかってしまい 依頼者 のご本人と お父上には 随分と やきもきした気持ちにさせてしまった
この事件は 当初事後重症の認定しか貰えなかった事件である
ご本人の お父さんが 同じ内容の診断書なのに どうして認定日請求が認められないのかと 審査請求の 代理人になり 東海北陸 社会保険審査官に 審査請求したのであるが 請求は容認されなかった
たまたま 社労士会の大御所の紹介で 再審査請求から 私が引き受けることになったが 公開審査の途中で保険者自らが 処分変更をして 認定日請求を 認めた事件である
ということは 認定日請求が 認められるまでは 保険者でさえ 受給権を認めていなかったのであるが 被告は その点について どのような反論をしてくるのであろうか
原告の主張は 従来の 被告の主張の誤り 具体的には 改正施行前の 民法166条1項の「権利を行使することができる時」の解釈誤り(「A債権成立の時」とする主張)を 指摘し 一つには 裁定前には 「@期限未到来」であることと 今一つは 裁定前には 「B条件未成就」の債権であることを 主張する内容である
原告の主張の骨子を述べる
「障害年金の初診日の決定は、保険者に決定権があり、受給権者の申し出日は、しばしば前後にずらされる。後にずらされることは稀であるが、再発初診の場合に生じる。
初診日の決定権が保険者にあることについては、当事者間に争いはなく、客観的事実である。
従って、障害年金においては、典型的な20歳前障害(これを採用するかどうかは裁定前には決っていない)の場合以外は、全ての場合で、裁定前に 障害認定日は決っておらず、支分権発生日も決っていない。
支分権の発生日が決まっていないということは、支分権の消滅時効の起算日も決まっていないということであり、起算日の決まっていない支分権が、時効消滅することはなく、これも、動かし難い客観的事実である。
裁定前に支分権の時効が完成することは絶対にありえないことについては、このように科学的に証明される。
従って、最高裁 212号判決及び名古屋高裁 平成24年判決以外は、最高裁 44号判決をはじめ、全ての類似事件の判決は誤っているので、真摯に修正を図られたい。
ほとんどの裁判は、上記の原告の主張を「独自の見解」であるとの理由で、深く検証することなく排除しているが、この見解は、最高裁212号判例、名古屋高裁平成24年判決、法務省内社会保険関係訟務実務研究会、社会保険審査会、及び「裁決例による社会保険法」の著者、加茂紀久男らの見解と同じであり、「独自の見解」ではない。
本訴については、福祉行政を担う厚生労働省が、重要な権利について、これに反する不合理な主張を繰り返していては、一面、国家の緊急事態といえるので、被告自らが速やかに請求容認をしていただきたい。
被告自らの請求容認がない場合は、裁判所は、従来の誤った判決に影響を受けることなく、厳然たる公正な判断を下していただきたい。」
被告は このような科学的な絶対的真理に対して 「独自の見解」であるとの理由で 原告の主張を退けることは できないはずであるが 被告や 裁判所は どのような 主張又は説示を してくるのであろうか
タグ:事後重症、処分変更
木戸様の解説と同様の判例が下されています。
最高裁平成29年12月6日第1130号等の
NHK受信契約締結承諾請求事件です。
http://wwwb.dcns.ne.jp/~nnkn/NHK%E5%8F%97%E4%BF%A1%E6%96%99%E8%AB%8B%E6%B1%82%E4%BA%8B%E4%BB%B6H291206%E5%A4%A7%E6%B3%95%E5%BB%B7%E5%88%A4%E6%B1%BA%20087281_hanrei
争いの原因はNHK受信料であり、年金債権とは異ななるように見られますが、基本権とこれに基づく枝葉の支分権の関係については、さすがに最高裁大法廷です。きれいな法的論理構成に基づいております。
これが最新の大法廷判決といっていいのではないでしょうか。
従いまして、今までは原告の数々の主張を「独自の見解」といって退けていたものが、被告・厚生労働省の方が「独自の見解」を言う立場に逆転したものとなってしまっているということになります。
ただし、NKH受信料大法廷判決を持ち出しても、もう一つの山場が待ち構えています。
国民年金法16条(裁定)が「給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する。」と規定していることです。「その権利を有する者」を「受給権者」と略称していますが、受給権者」の趣旨には、二通りの解釈があり得るからです。
解説書・傷害年金請求 援助・実践マニュアル(99頁・2013.6.20初版第2刷)に依れば、「裁定前の受給権者」と「裁定後の受給権者」があると実務的に説明しています。
この「受給権者」の趣旨を一義的に「裁定前の受給権者」と解すると、消滅時効の早期完成論に都合がよくみえます。
しかしながら、「受給権者」の文言を用いる数十の規定は「裁定後の受給権者」を前提として規定されています。つまり、ほとんどの条項を意味の無い骨抜き条項とするものであり、国民年金法自体が成立していないと言っても過言ではありません。言わば破滅の論理です。法16条の「裁定前の受給権者」は、裁定請求権を指しているものと解せざるを得なくなることを、主張すべきでしょう。法14の2、同20、同22、同105等の数十の条項がこれに当たります。