私は、障害年金支分権消滅時効の問題について、本題(支分権の時効の起算日及び弁済期の法解釈誤り)と入口論(本題に対する異議申立ての却下の違法)について、国と争っており、昨日は、後者の第3回期日であった。
3回目になっても、争点そのものの認識がずれており、原告、被告及び裁判官の3者で肝心の争点が合致していないのである。
昨日は、民事訴訟にしては珍しく、その点について、少し話し合いの時間が持て(通常、提出書類の確認とそれぞれに対する陳述、及び次回期日の選定で終ってしまうことが多い。しかし、時折例外もある。金沢地裁のK.F様の事件では、次回期日は、進行協議期日である。)、その意味では有意義であった。しかし、一番大事な争点について、未だこのような状態であることに不安を覚えた。
被告だけであれば、わざとずらしていると考えられなくもないが、裁判官までが、本題に関する消滅時効の成否の有無が、本訴えに関係していると思われるような確認のための発言があったのである。
この裁判では、国家賠償法に基づく損害賠償の形式を採っていて、その損害の原因は、国家公務員の違法(本来受理すべき厚生労働大臣に対する異議申立書を違法に却下したこと)にあるとする訴えである。
そこで争点となっているのが、遡及5年を越える年金について、年金決定通知書に付記された裁定の内容である時効消滅している旨の記載の行為である。
原告は、社会保険審査会の見解に基づき、その付記は、裁定の一貫としてなされたもので、行政処分性があると主張しているのであるが、被告は、時効消滅は単なる事実行為だから行政処分性がないと主張しているのである。
時効消滅自体を裁定とは切り離して単独で捉えれば、事実行為であることに相違ない。しかし、原告が訴えていることは、裁定と同時一体不可分のものとして唯一の例外もなく行われている「付記の行為」に対する違法である。
詰まり、この付記の行為には、行政処分としての厚生労働大臣の意思が含まれており、行政処分性のある事実行為であるので、行服法の対象となることは明らかであるのだが、その争点そのものに対する認識でさえ、3者間で合致していなかったのである。
しかも、社会保険審査会は同じ問題を受理しており、関係事項については、文献を引用して十分に説明しているにも拘らずである。
障害年金支分権消滅時効の問題は複雑であるので、訴状の中では、本題との関係について分かり易く説明しているのであるが、裁判官でさえ、本題の消滅時効の成否が本訴と関係していると思っていたようであるから不安は消えない。
本題については、色々な事情があり、色々な考え方があるので、本訴とは全く関係せず、本訴はあくまで、入口論について違法な却下を問題にしている旨を明確にできた点では、昨日の期日は有効であったと評価できる。
次元の低い話ではあるが、私が関係した多くの行政訴訟に関する裁判をその観点から見てみると、肝心な争点がすれ違ったまま、原告敗訴の判決が出されている事件が思い返される。こんなことはあってはならないことと思うのだが、元裁判官であった弁護士の先生にお聞きすると、現実には、誤った判決はいくらでもあるようである。これが本件に関する裁判の実態である。
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障害者の障害等級は、誰かが認定しなければ決まらないと思いますが、行政行為が事実行為だとすると、障害等級を認定するのは、行政ではありませんよと言っていることになるのでしょうか?だとすると、いったい誰が障害等級を認定するのでしょうか?ここらへんで、行政の言っていることはおかしいと思います。
間違えていたら、すいません。