2019年09月21日

障害年金支分権消滅時効問題に係る私の改善意見


一昨日9月19日(木)15:30から約1時間、愛知県社労士会の法務委員会でこの問題について委員への説明を実施した。

約45分間で説明し、15分間は質疑応答の時間を設けていただいた。7種類の添付資料とレジュメ12頁を45分で分かり易く説明するのは、中々の難題であったが自己採点では75点ほどの出来栄えであった。

なぜこのような説明会を開催することとなったかであるが、社労士法には、全国社会保険労務士会連合会から厚労大臣に労働社会保険諸法令の運営の改善等について改善意見の申出をできる規定があり、私が、これを活かして2つの改善意見を提出したからである(連合会では、会員個人の意見を直接には受付けておらず、県会の意見具申を受付けの条件としている)。

1つは、障害年金支分権消滅時効の問題そのもの、今1つは、その問題に対する行服法に基づく厚生労働大臣に対する異議申立ての却下の違法である。以後、本ブログでは、前者を本題(問題@)といい、後者を入口論(問題A)という。

本題(問題@)の内容は、「障害年金の支分権消滅時効の違法な運営(遡及請求が認められた場合の遡及5年を越える遡及分の支給制限)」であり、入口論(問題A)の内容は、「上記本題に関わる厚生労働大臣への異議申立てを却下している違法な運営」である。

数は少ないが、官会法による審査請求等を受理して、審理のうえ棄却している事例もあるが、これも結論ありきの棄却であり、別の問題がある。そして、更に困ったことには、これらの経緯を経た提訴に対しても、国の答弁が、継争の途中から棄却から却下に変わってきていることである。

これでは、教示に従って、真面目に不服申立てをしてきた請求人は、途惑うし、人としての扱いを受けていないこととならないか。

これらに対する私の改善案を先に述べる。
改善案
本題

国年法第18条(厚年法第36条)1項に「ただし、年金を遡及して支給する場合は、10又は20」年間分を限度とする」を加える。
入口論
支給制限をした事案については、この問題についても教示を行い、窓口を統一して、官会法又は行服法に基づき審理を行う。

理由
本題

無制限支給の当否の問題は、消滅時効の問題ではなく、支給期間の問題であるため。(国の主張する論理は、抽象的観念操作であり、時効消滅の要件事実が存在しない)
入口論
@ 年金決定通知書への付記は、裁定と不可分一体の行為であり、これに対して不服申立て方法が一切ないという運営は法体系上あり得ないため。
A 既に国会答弁(内閣参質169第171号平成20年6月24日答弁書第171号「民法の規定に基づき、個別の事情を勘案して時効の援用を行うかどうか判断することとなる。」)において、個別具体的に判断する旨答弁されているが実体は一律に取扱われているため。

本題について、なぜこのような改正を要するか、及び改正の効果について簡記する。

国が基本権について時効の援用権を放棄している事実
本来、基本権に対する権利不行使(裁定請求遅れ)に対しては、国は時効を援用して時効消滅を主張できる立場にあった。しかし、それでは長年納付してきた保険料納付の努力に対して、余りにも酷となり、制度の趣旨にも反するので、国は、基本権については、内閣法制局参事官の意見を参考にして、昭和45年9月10日以降、裁定請求遅れに「宥恕すべき理由がある場合」には、時効の援用権を放棄する運用を始めた。

基本権に対して時効を援用されると、支分権は1カ月分も生ぜず、年金は全く受けられなくなるところ、特段の行政措置により、受給権者の救済を図った反射的効果として、支分権の無制限支給の問題が生じているので、この調整を立法の手続きを経て行うことに対しては、一定の合理性がある。

改善案について
年金法にも会計法(平成19年7月6日以前に基本権発生分に適用)にも、権利行使できないうちに、支分権を時効消滅させるなどという精神は存在しない。

年金法の準用する会計法は、「5年間これを行わないときは、時効により消滅する」と述べており、年金法は、全額支給停止されている支分権についてさえも時効進行させていない。

それを、保険者の都合により、基本権に対する権利不行使(裁定請求遅れ)を支分権に対する権利行使とみなした観念操作により支給制限している運用であり、このように国民を欺いた運用を見逃してはならない。

しかし、一方、無制限支給が適った場合、保険者の事務担当者は色々なことを考えてしまい、現在でも厳しい認定日(遡及)請求が、益々厳しくなる現実も考えられる。

従って、原則を10年又は20年遡及と定め、時効特例法に該当する場合等特段の事情のある場合等は、不服申立て又は提訴による救済の道を採れるよう改善するのがベストであると考える。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:29| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
◆本題(問題@)の次の改善案に賛成します。
「改善案
 本題
国年法第18条(厚年法第36条)1項に「ただし、年金を遡及して支給する場合は、10又は20」年間分を限度とする」を加える。」
【理由】
 今に始まったことではないですが、公的年金行政上の取扱いは、「消滅時効の問題」と年金の支給期間にかかる「期間制限」を混同して解釈しています。
 例えば、消滅時効については、個別の事情を考慮する余地はありませんが、これを余地があるものとしてその事情がある場合には、文書にして提出するように求めています。よくも長年にわたって、国民がこれを許してきたと、呆れかえるばかりです。最高裁判所では、先のNHKの受信料を巡る大法廷で、このような行政裁量の逸脱行為に対して間接的に態度を明確にしています。
 このようなことは民法の理念からは有り得ないことです。行政権の執行には、裁量の余地がありますが、法令を逸脱してまで、自分たちの思うがままに裁量権を行使することは、憲法に違反することを失念しているという他はありません。
 一方で、期間制限の制度を取り入れた場合は、やむを得ない事情(例えば、大災害が発生して手続きが出来なかった、外国に長期的に出張していて期間内に請求出来なかった、診断の難しい難病で診断が付かなかった等)があれば、この期間を一定の期間にわたり後送りすることができ、一部の現場職員が「対応には苦慮している」といわれていることに対しても、実態の併せて柔軟な対応が取れるようになります。
 先生の案では「10又は20年間」としていますが、やむを得ない事情の範囲と可なり長い期間を措置すれば、10年位で治まるようにも思えます。
 ちなみに国税通則法では、70条等で「期間制限」を5年に、72条等に5年の「消滅時効」の規定を置き、明確に区分して取り扱っています。
Posted by hi-szk at 2019年09月23日 22:11
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