2018年05月19日
異議申立て却下に対する国家賠償法に基づく提訴について
今週の16日(水)の午後、約一時間半にわたって、受任弁護士(以下「E弁護士」という)、原告本人、そのご実父と私の4人で、E弁護士の作成した上記訴状の素案について、基本方針と具体的な進め方について打ち合わせを実施した。勿論、20件余の却下事件についての第1号案件である。
この訴訟に勝つためには、異議申立ての却下が違法であることと、本題の消滅時効の完成の成否の問題について、原告勝訴の可能性があることが必要である。実は、この日の打ち合わせまでは、E弁護士自身が提訴の正当性について確信が持てていなかったようである。この素案が出されてから、ご実父を含めて2〜3回は面談しているのだが、具体的な進展はほとんどなかったのである。
E弁護士が確信が持てなかったのは、本題について国の法律的解釈に誤りがあるのかどうか、及び誤りがあるとした場合これを裁判所に分かるように証明するには具体的にどうすべきかであったものと思われる。今年の4月11日の名古屋高裁の判決文を読まれて、躊躇が確信に変わったものと思われる。一転、具体的な進め方について、私が予期しないほど、積極的になられたのである。
上記の判決文では「2 控訴理由に対する判断」において、以下のように説示する。
「控訴人は、精神疾患への罹患を認識すること及びそれが障害年金の受給要件に該当することを自ら認識することが困難な精神障害者にとって、自主的に裁定請求を行うことを期待することは困難である場合が多いから、控訴人には権利行使の現実的期待可能性がなくこれが法律上の障害に当たると主張する。
この点、民法166条の「権利を行使することができる時」の解釈においては、単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく、さらに権利の性質上、その権利行使が現実に期待できるものであることをも必要とすると解するのが相当であるところ(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号771頁、最高裁平成4年(オ)第701号同8年3月5日第三小法廷判決・民集50巻3号383頁参照)平成19年改正後の国民年金法においても、支分権の時効については従前どおり会計法及び民法166条の規定を適用する余地はあるから、控訴人の病状が上記主張の程度に至っていたと認められる場合は、消滅時効は進行しないと解すべきである。
そこで、支分権に関する時効が完成し始める前の控訴人の病状について検討するに、まず平成25年以前については、前記認定のどおり、平成24年及び平成25年の両年ともに3、4か月間は控訴人の心身とも落ち着いた状態が続いており、少なくともこの間は控訴人の病状が上記の程度に至っていたとは認め難い。
次に、本件不支給部分の時効期間が満了し始めた平成26年2月頃から平成27年2月頃の控訴人の病状を検討すると、前期認定事実1(3)記載の診療録によれば、うつ状態とは認められるものの、「昨日は調子がよく、仕事を延長したという。」(同年4月3日)との記載や、医師が「精神科病状自体は改善傾向」(平成26年10月15日、同年11月12日)と指摘していることが認められる。また、控訴人は、自らの判断で精神科に定期的に通院し、自己の精神疾患を認識した上で、仕事も行いつつ生活していた上、平成28年には保佐開始の審判を受けているのであるから、それ以前においても一定の判断能力は有していたものと認められる。そうすると、平成26年2月ないし平成27年2月当時、控訴人の病状の程度が、継続して裁定請求すらできない状態にあったとは認められない。したがって、控訴人は、裁定請求することにより、国民年金法の定めるところの内容に従った裁定を受けて、障害年金の支給を受けることが現実に期待できる状態になったと認められるから、控訴人の上記主張は、前提となる事実に誤りがあるというべきであって、採用できない。」
と、控訴人本人の状態を客観的に認定した上で請求を棄却したのである。
異議申立て却下の違法については、既に本ブログで公開したように、当該行政庁の違法は明らかであり、本題の支分権消滅時効の問題は、少なくとも裁判になればその請求が容認される可能性があることは上記判決により明らかとなった。
行政庁の面倒な厄介事は、入り口の段階から拒もうとする意図は明らかであり、これを放置しておくことはできない。
行審法は以下のように定める。(改正前後で多少の表現の違いはあるが、趣旨は変わっていない)
「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申し立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
厚労大臣への異議申立ての却下は、簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を図ること、及び行政の適正な運営を確保することを妨害するものであり、これは、いかなる手段を用いても許してはならないのである。
国家賠償の場合、公務員の違法については、国に当該違法行為者に対する求償権が求められているので、場合によっては、その点を含め強く追及していきたい。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 09:27| Comment(0)
| 1 障害年金
この記事へのコメント
コメントを書く