2018年04月07日
二枚舌の国の指定代理人
裁判における国の指定代理人(障害年金支分権消滅時効事件等については、基本的には法務省、及び厚労省の職員約8名、事件と相手方によっては弁護士が加わることがある。上告受理申し立て事件では18名であった)は、同じ国の代理人でありながら、別の事件では、その事件に都合の良い主張に傾注し、他の裁判での主張と矛盾した主張をしたり、矛盾した実務運用をしていることがままある。
従来の例の最たるものは、民法158条1項の類推適用等に係る主張である。懸案の問題の核心であるそもそもの法解釈違反を攻撃されているときは、それを逃れるために、最高裁が平成24年4月20日名古屋高裁判決を認めたのは、2つの論点の内、民法158条1項を認めたものであり、法解釈違反そのものではないと主張した。
民法第158条1項の類推適用の可否が問題となる他の裁判でも、これを認めた理由に、「少なくとも」との表現があることから、この類推適用等は当然であるがごとき主張をし、国が類推適用を認めたくない他の事件の裁判での主張では、この類推適用自体を否定しているのである。
最近の発見であるが、障害厚生年金の遡及請求のやり直し事件を受任しての実感である。
国は、障害年金支分権消滅時効事件においては、当然に、裁定には裁量権がなく、単なる確認行為である旨主張している。
ところが、この主張を、遡及請求時に持ち出すと、遡及請求を認めざるを得なくなり国にとっては、甚だ不都合である。
分かり易く、札幌高裁の判決文を紹介する。
平成28年10月13日札幌高裁判決「平成28年10月13日(行コ)第15号 障害年金請求控訴事件」では、「しかしながら、障害年金の受給権の発生要件や保険給付の支給時期については明確な規定を設けるとともに(厚生年金保険法36条、47条1項等)、画一公平な処理を図るために基本権の取得につき厚生労働大臣による裁定を受ける必要があるとする(厚生年金保険法33条)などの厚生年金保険法の規定及び趣旨に照らすと、処分行政庁は、厚生年金保険法47条に定められている障害年金の受給要件が満たされているか否かの判断や、障害年金の受給要件が満たされているときに障害年金の裁定をするか否かの判断について、裁量権を付与されているものではないと解される。」(判決書4頁下から11行目)としている。
上記下線部が道理を述べていることは、当然として、処分行政庁に、厚生年金保険法47条に定められている障害年金の受給要件が満たされているか否かの判断ができないようでは、仕事にならない。
この説示が間違っているのは自明のことであるが、これが裁判の現場では、通用してしまっているのである。しかも、法解釈を主な職責とする高等裁判所である。
しかし、このような説示があることは、札幌高裁が根拠なく独自の見解を述べることは弁論主義上あり得ないことであり、保険者国がこの内容を主張しているからなのである。
保険者国がこのような主張をしなければ、弁論主義上、裁判所が勝手に独自の見解を説示することはない。
上記判例の考え方に従えば、本件について、担当専門医の診断を覆す事由は見当たらないことになる。
なお、代理人は、障害年金の裁定について、一定の裁量権のあることを認めている立場の者であるが、仮に、保険者国も同じ見解であれば、他の裁判における誤った主張は、全て撤回しなければならないことになる。
反対に、代理人と異なる見解であれば、本件再裁定請求を容認する以外に選択肢はないことになる。国は、その場その場で都合の良い主張をしているので、どちらに統一しても困るのである。
本件については、今一つ解決しておかなければならない問題がある。年金事務所の窓口では、先生のお考えを別にすれば、今から遡及請求が認められても1カ月分しか出ないというのである。
内簡による支分権5年間分支給制限のことであるが、このトラブル防止についても一工夫必要である。
本件においては、事後重症認定については直ちに審査請求(国年法101条、厚年法90条)しており、速やかに、再審査請求、提訴、及び控訴と進んでいるので、審査請求の時に裁判上の請求とみなされ時効が中断しており、新たな時効の進行は、控訴審の判決日(民法157条2項)からである。
従って、本件については、遡及請求が認められれば、国の考え方によったとしても、当然に5年間分は支給されなければならないのである。
3〜4カ月はかかるかもしれないが、結果も理由も楽しみである。一方、私に言わせれば、楽しみばかりではなく、年金行政は間違いだらけで、問題山積みである。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:42| Comment(0)
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