2018年02月24日
大阪高裁の誤判断の原因について
結論から述べる。障害年金支分権消滅時効事件に対する大阪高裁の誤判断の根本原因は、 大阪高裁が、この問題について老齢年金と障害年金の違いはないと判断したところにある。
この誤判断には、二つの判断誤りがある。一つは、当該事件が精神の障害であるにも拘わらず、平成29年10月17日の最高裁判例(以下「今回最高裁判例」という)に係る判例をそのまま吟味せず適応したことにある。今一つは、この事件は、上記今回最高裁判例が出される前の平成29年9月13日に結審しているにも拘わらず、結審後の上記今回最高裁判例を吟味せず判断の基礎として適応したことにある。
私は、この問題について、数多くの誤判決を見てきているので、ほとんどの下級裁判所の判断を信用していない。しかし、だからといって、最高裁の判断を誤っているとは思っていない。
平成7年11月7日の著名判例本村年金訴訟上告審判例においては、最高裁判例解説が平成10年3月25日に出されており、通算老齢年金にかかる部分ではあるが、公的年金の裁定の法的性質について、適切かつ公正な解説を公表している。その内容は実務とも整合している。そして、今回最高裁判例も、保険事故自体の存在及び発生時期等の客観性については、老齢年金と酷似しているものである。
上記今回最高裁判例の実際の問題は、左下腿切断という老齢年金とは異なる障害年金の問題ではあるが、それでも、初診日証明を含む障害年金の裁定が、停止条件付き債券であることを考慮すべき事件であったのである。ところが、このことは全く考慮されていない。最高裁といえども、弁論主義のテーゼは貫かれているので、当事者から主張のない事項まで判断の基礎とすることはできない。
従って、今回最高裁判例にかかる最高裁の判断自体に誤りはない。しかし、それを事案の異なる精神の障害について適用することは勿論、身体の障害等について一般的共通的に拡大して適用することは、法律的解釈としては明らかに誤っているので、下級審判決としては、上記理由によりこれを適用することはあってはならない取扱いである。
しかも、今回最高裁判例の第一審においては、被告の主張する正しい支払期月が各支払期日であることにも疑問を呈しており、これが正しいこととした場合を前提とした判決であるのである。本当の正しい支払期月は、「社会保険関係訴訟の実務」(252頁左から2列目)が示すように、過去分の支払期月は、国年法第18条(厚年法第36条)3項ただし書が適用になるので、 一つしかなく、国が主張するような各支払期月ではない。
従って、この事件の原告が的確な主張・反論をしておれば、このような判決が出なかったものであり、そうすれば、控訴審、上告審においても、このような結果にならなかった事件であったのである。
真相・深層を知れば、信頼すべき、又はされるべき裁判所においても、考えられないような 事態が生じているのである。
この誤判断をした大阪高裁の第一審の神戸地裁の判決「平成27年(行ウ)第57号 支給年金支給請求事件」では、原告が根拠を示し、老齢年金と障害年金の違いを主張しているにも拘わらず、「原告は、少なくとも障害基礎年金については、受給権者が障害の有無や等級を予測することが困難であり、裁定請求どおりに裁定がされるわけではないことからすれば、裁定は単なる確認行為であるとはいえず、裁定を受けていないことは支分権の行使について「法律上の障害」に当たるなどと主張する 。
しかし、裁定の法的性質は上記(2)で説示したとおりであるところ、裁定について規定した国年法16条、年金支給期間及び支払期月について規定した国年法18条が、国年法第3章第1節「総則」に設けられていることからも明らかなとおり、国年法は、年金給付を受ける権利の発生及び行使の方法について、障害基礎年金と他の種類の年金との間に差異を設けていない。」(判決書16頁6行目)と悦に入っている。
「総則に設けられていることからも明らかなとおり」、と独自の見解を説示して「差異を設けていない」、と潜在的抽象的観念論を強行しているが、個別の条文の中味を検討することもなく、「総則に規定されているから差異はない」との判断は、問題を個別・具体的に検討することが必須の裁判所の手法としては、必須事項を欠いており落第である。科学、社会が目まぐるしく進化発展する中、私自身、法分野の一角を職務とする者として、誠に恥ずかしく、残念でならない。
そして、法解釈を職責とする大阪高裁までが、この単純な過ちに気付かない、又は気付かない振りをしているのだから、一般論として、行政訴訟における下級裁判所の判断は、信用できないのである。勿論、例外はある。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 15:16| Comment(0)
| 1 障害年金
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