2018年02月17日
社労士の独占業務
士業には通常それぞれに認められた独占業務がある。独占業務というのは、国家資格を有し、かつそれぞれの団体に登録した者でなければ行うことが許されないとされる業務である。
端的に言って、社会保険審査官及び社会保険審査会法に基づく、審査請求や再審査請求は、弁護士資格があればできる。しかし、公的年金の裁定請求手続きを有償で業として行うことは、弁護士資格ではできない。 社会保険労務士(以下「社労士」という)だけに許された独占業務だからである。
従って、弁えた弁護士の先生は、社労士の独占業務をするために、社労士としても登録をしておみえで、私もそのようなダブルライセンスでお仕事をしておみえの弁護士の先生を、愛知県と愛媛県で承知している。
社労士の場合はその名のとおり、労働保険や社会保険の手続きに係る書類作成・提出が最もベーシックな独占業務です。これらの業務なくして社労士とはいえず、これらの業務あってこその社労士だと思います。それくらい大切な業務です。
ところでこの労働保険・社会保険の手続きの他にも社労士にしか認められていない業務はあります。こちらは意外と知られていないかもしれません。
最近、労働トラブルの増加に伴って就業規則を重要視する企業が徐々に増えてきていると思われますが就業規則の作成・届出を業として行えるのは社労士だけです。実際のところコンサルタントを名乗る社労士ではない業者が就業規則の作成を請け負うようなこともあるのかもしれないが、それは明らかに社労士法違反です。
また、これは有名だと思いますが、厚生労働省系の助成金の申請も当然社労士の独占業務です。こちらも同様に社労士でない自称助成金コンサルタントが行えば社労士法違反です。
全くの無資格者が独占業務を行うのは論外ですが、士業間には業際問題がつきものです。各士業の職域争いにおける境界線の問題です。
例えば税理士は、本来の税理士業務の付随業務として行う場合には社労士業務を行えるとされています。これは「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内とされており、具体的には算定、月額変更、年度更新などが考えられます。
一般的によく知られている業際問題は弁護士と行政書士でしょうか。社労士制度は、今年で50周年記念を迎えますが、最も重要な分野を担っているにも拘わらず、弁護士、行政書士、及び税理士と比べまだまだ知名度が低い状況にあります。従って、社労士法に係わる業際問題も多発しています。
また、公認会計士と税理士、あるいは弁護士と司法書士についてもそれぞれ非常に複雑な関係を築いてきており、熾烈な職域争いになっているともいえますが、経緯を含め非常に複雑で難しい問題であり、とてもここで語りつくせる内容でないので割愛します。
注目すべきは税理士の独占業務だと思います。税理士の独占業務が税務書類の作成や税務相談だということは比較的よく知られていると思いますが、実はこれらの業務は有償・無償を問わず税理士以外の者が行うことはできないのです。これは他の士業とは決定的に違う点であり、実際かなり強力な独占業務といえます。うかつに知り合いの税務相談にのることもできないという訳です。(一般的な税金の相談にのることは可ですが。)資産運用の相談に乗るファイナンシャル・プランナーにとっては現実厳しいところではないのでしょうか。
目の前にある職域問題で悩むより対象となる資格を全部手に入れるのがもちろん一番手っ取り早いでしょうが、現実的ではありません。そこで有資格者を雇ってしまえばと考えた方は注意が必要です。
仮に独占業務に従事できる資格を有する場合であっても、資格を有する本人が直接契約の当事者となって業務を請け負い遂行する必要があります。
これに抵触するケースがよく見うけられるのが給与計算のアウトソーシングです。
近年、給与計算のアウトソーシングは普及してきており、社労士事務所(又は法人)の形式をとらない通常の会社形態の給与計算代行会社が増えています。給与計算代行は通常、労働・社会保険手続きと併せて受託するのが効率的ですが、社労士でない給与計算会社は手続きを行うことができません。そこで社労士事務所を内包・併設したかたちをとって手続きを受託し合法と主張するケースが多々あります。この場合、手続きの契約が社労士事務所とクライアントで直接締結されていれば違法とはいえませんが、給与計算会社が契約の当事者となっていれば社労士法違反になります。社労士業界にとっては放置すべきではない問題だと思います。
士業にとって独占業務はいうまでもなく重要であり業際問題において妥協は許されません。しかしながら、士業はどの分野においても既に過当競争になってきており、今後独占業務のみに頼ったサービスでは生き残っていくことは難しいかもしれません。サービス業の意識をもって顧客ニーズを模索し、新しい分野を開拓していく努力が必ず必要です。とはいえ士業本来のベーシックな業務をおろそかにすれば士業の存在そのものを否定することにもなり、安定性は失われ足元から崩れ落ちるでしょうか。独占業務を有する士業の業界は転換期を迎えています。(「独占業務」については、Web上の 「mayamaの視点」 から一部引用させていただいています)
一昨日は、東京都と愛知県のお客様から、同じ内容の電話相談を受けた。いずれも、障害年金の決定が事後重症であったので、認定日請求を認めてほしいというものである。認定日現症の診断書の日常生活の状況が、本人に確認もされず、事実と違った軽度の状態で 記載されており、それが認定日請求が認められなかった原因と思われます。
お二人とも、審査請求及び再審査請求、並びに訴訟及び控訴審まで行なっている。内お一人は、上告審まで済ませており、再審請求までされているとのこと。民事の再審、しかも行政訴訟は非常に珍しいことであり、私もよく知らない分野であるが手法としてはあるそうである。
しかもこの方は、地裁、高裁、最高裁と、いずれの裁判所に対しても再審請求をされており この方の私への相談は、裁判所から求められた理由書の書き方等であった。
一般的に、弁護士の先生方はご自分の専門分野の仕事をこなすのに精一杯の場合が多く、労働社会保険に関する勉強や研究が不足しており、今回相談の双方の事件では受任弁護士が付いていたにも拘わらず、私へのこのような質問に至っている。
障害年金支分権消滅時効事件や認定日(遡及)請求を求める事件では、主張内容や反論内容自体も、社会保険法や行政法の見地から十分な主張がされておらず、敗訴している場合が多い。また、訴訟の手段が最善の方法でない場合も、それが唯一の残された方法であるかのごとく進められている場合もある。
一般的に弁護士の着手金は多額であるので、これは非常に大きな問題であり、本人にとっても大きな影響のある問題である。この事件を誰に相談し、誰に委任又は委託するかを もっと真剣に考える必要があるものと思われる。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 12:47| Comment(0)
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