2017年12月23日

国の運用や大阪高裁等の時効完成の判決は年金法違反である ―10月17日の身体の障害に係る最高裁判決の実害について―


先々月の17日、障害年金支分権消滅時効の完成の成否を争う事件としては、初めて最高裁判決が出された。これは、身体(左下腿切断)の障害に係る判決であったが、この判決を教条主義的に引用した精神の障害に係る二つの下級審判決が出されているので、当面このことについて触れる。

実は、この身体の障害に係る判決自体も、私が原審及び第一審の判決書を吟味したところでは、重大な前提事実について十分な議論がされていない判決であった。しかし、最高裁としては、主張もされていない内容について判断の基礎とはできず、弁論主義の建前からは、最高裁の判決が間違っていたとはいえない。

しかし、以下で述べる2件の精神の障害に係る下級審判決については、事案も異なるし、判決理由にも論理の飛躍が生じている。

どこに論理の飛躍が生じているかについては、定期訪問者の方々には既にお分かりのところであり、何度も述べているところであるので、詳しい説明は、本日は割愛する。

本日の主テーマは、年金法の受給権保護規定である。国民年金法24条 及び厚生年金保険法 41条は 障害年金の受給権について、それぞれ 受給権保護規定を置いている。具体的には、差押えや公課についてまで 禁止している。

ところが、保険者国や11月17日の大阪高裁判決・11月30日の東京地裁の判決は、この受給権保護規定を無視して、論理の飛躍のある判決理由により、保険者国の主張する消滅時効の完成を認めたのである。

どこに論理の飛躍があるかは概略を後述するが、この受給権保護規定が具体的な権利である支分権を対象としていることは明らかである。そしてこの受給権保護規定の適用については、例えば国民年金法では、第3章 給付 第1節 通則に、厚生年金保険法では、第3章 保険給付 第1節 通則に置かれているので、私が問題にしている障害年金の支分権消滅時効についても適用の対象になることは明らかである。

国や裁判所が、この年金法の規定に罰則規定がないことをいいことに、やりたい放題である。それではこの重大な権利について侵害された国民はどのような対抗措置ができるのであろうか。国家賠償法に基づく損害賠償以外に方法はないのであろうか。

事が起ってからそれを覆すのは中々大変なことである。この二本の判決は、明らかに年金法違反であるので、このような間違った判決が出ないようにするのが先決問題である。

そこでこの二つの判決が なぜ 違法であるかについて述べるが、この最高裁判決が、支分権消滅時効が完成としているとする理由は、受給要件等の規定が明確であり、裁定請求しさえすれば、実際の支分権の支給に結びつくことを理由としているが、例えば精神の障害等の場合、受給要件等の規定は明確ではなく、 実際に厚生労働省の公表資料においても 12.5 %の不支給が出ているのである。

従って、大阪高裁や東京地裁の上記判決の事例は、身体の障害とは違って重度の精神の障害の事例であるので、このような推論は成り立たず、論理の飛躍がある。(これは一事例であり、根拠は数点ある)

誰よりも法律を遵守する立場にある国や裁判所が、年金法の規定に反して最も重要な財産である障害年金の受給権を違法に制限しているということは、国や裁判所の判断としては、考えられないほどの罪悪である。

このような基本的な主張を、全国どこの弁護士もしていない。そして、特段の事情のある事件を除き、全て原告側が敗訴している。そして国は、これらのいくつかの勝訴判決を理由に、私の主張に対して反論してくる。

しかしこれは数の問題ではない。正しい主張か正しくない主張かの問題である。国の主張は、潜在的抽象的観念論一つしかない。他に理由がないので、本質論とは直接関係しない、年金時効特例法との整合性を主張したり、多くの裁判所か国の考えを支持していることを挙げるのみである。

保険者国の考え方や、ほとんどの下級裁判所の判断は、幾つかの点で、実際には間違った解釈をしている。潜在的抽象的観念論は、以下の点で不合理や矛盾を含んでいるので、指摘させていただく。

 ・基本権と支分権の権利の混同
 ・被控訴人の裁定の裁量権に係る解釈と実際の運用との大きな相違
 ・本案に係る支払期月の解釈誤り
 ・観念操作による年金受給権保護規定の保険者による規定違反
 ・行政処分と不服申立てとの関係の不整合
 ・国民の年金制度や行政(厚労省及び法務省)及び裁判所に対する不信感の増大

国は、私の主張に対して論理的に反論ができないので、「独自の見解」であると主張する。それしか言えないのである。独自の見解かどうかは、この正否の判断に影響を及ぼすものではない。むしろ、独自の見解でなければ、従来の見解が間違っていることは指摘できない。何が法に適い、正義に適い正しいかである。

司法の世界では、最高裁判所の判例は余りにも大きく重いものであるので、上記2つの判決のように、最高裁判例を準法規的に適用してしまうことが多いが、これを事案の異なる事件にまで拡大することは、厳に慎まなければならないことである。このようなことは絶対に許されることではないので、私は別途、故意に誤った判決を下した裁判官に対しては、国家賠償法に基づく損害賠償の提訴を検討していく。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 16:30| Comment(0) | 1 障害年金
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