2017年11月11日

10.17左下腿部切断の障害に係る最高裁判決に対する反論要素について…審理外事項対応


過日、現在障害年金支分権消滅時効事件について共同受任体制で協力関係にあるG法律事務所から、現在係争中の事件に係る打合せの要請を受けた。

標記最高裁の判決に対する具体的な対応策がテーマになると思われるが、これについては、私は、この事件で議論されていない点及び国や裁判所がなぜ論理矛盾を承知で無理な主張を繰り返すのかという根本原因(下記5)を掘り下げないと法律的解決は難しいと考えている。

以下に、上記の観点で検討を要する要素を整理したのが以下のメモであるので、色々なご意見をお聞きしたい。

1 身体の障害については、権利の混同をさせてまでして曲論を採用する理由がない
(1) 老齢の場合の受給権者への通知等の国の努力の不存在  ※1
(2) 対象者の中には行方不明者もいる実態
(3) 基本権と支分権は独立した権利であることは被告も認めているが、なおかつ権利の混同が行われていること

(注)従来裁判所では、年金の種類による実体の違いを一貫して認めておらず、老齢年金と障害年金の違いを初めて認めたのが、平成27年(行コ)第61号
  平成28年5月12日 未支給年金支給請求控訴事件 福岡高裁判決である。 遅々として進まないのが裁判所の実態である。

2 原告側が十分な主張や証拠を提出していないので、その点審理不十分な判決である
(1)主張主義
(2)自白の拘束力
(3)職権証拠調べの禁止

3 確認行為型の裁定には裁量権があるから「裁定請求=裁定」とはならないこと
(1) 社会保険関係給付の受給権が実体法帖いつどのようにして発生するかは、その性質かあら当然に導き出されるものではなく、結局、立法政策により決せられるものであること
(2) この立法政策は既に定着しており、行政権でも司法権でも変更できないこと
(3) 確認行為型の裁定には裁量権があり、これが行政処分であるので、処分後でなければ支分権は発生しないこと
(4) 最高裁の判決内容では、行政処分と審査請求の時期の整合性が採れないこと

4 支分権消滅時効完成の立証責任は被告側にあること
(1) 障害年金の受給権は、年金法により、差押えや課税さえも禁止されている最優先して支給されるべき権利であること
(2) 被告の抽象的観念論では支分権消滅時効の完成が立証されていないこと
(3) 権利不行使の不存在という現実の問題と観念操作による権利不行使とは同じ土俵に乗っていないので、この矛盾が矛盾として取扱われていないこと

5 被告や裁判所の判断の根底には被告が基本権について時効の援用をしない運用をしていることが根を張っている
(1) 平成24年(国)第264号 裁決書 平成25年7月31日 審査長 渡邉 等   審査員 矢野 隆男   審査員 森 俊介  ※2
(2)平成24年4月20日 名古屋高裁判決 平成23年(行コ)第69号 障害基礎年金支給請求控訴事件 裁判長裁判官 渡辺 修明  裁判官 嶋末 和秀  裁判官 末吉 幹和   ※3
(3)労働判例研究 第1226号 ジュリスト2014 May 102 頁 公的年金支分権の消滅時効の起算点 −障害基礎年金支給請求事件− 東北大学准教授  嵩 さやか ※4


※1(参考)
被告の失権防止に係る相応の努力について
 老齢年金については、支給開始年齢の誕生日3カ月前に請求用紙が送られて来る。また、納付月数が300月未満の方には、他にカラ期間が無いかどうかの確認ハガキが来る。或いは、300月に達していても、基礎年金のみで65歳からしか手続できない場合は、その旨を明記した通知が届く。かつ、70歳到達に至ってもなお請求書が提出されていない方については、「お知らせの手紙」が送付されて来る。

 老齢年金について例外が許される事情
@ 保険事故自体の存在及び発生時期の客観性
A 裁定請求すれば100%受給に結びつくこと、及び
B 被控訴人が失権防止に相応の努力をしていること

※2「また、基本権について保険者の裁定を受けていない受給権者は、本来、支分権を行使することができないのであり、これを本件に即してみれば、本件障害年金の受給権発生日は平成13年5月26日であるところ、本件裁定請求は平成24年8月22日に受け付けられており、本件資料上、基本権に係る時効の進行を妨げるような客観的な事情が存するとは認められないから、基本権に係る消滅時効は、本件裁定請求がなされた時点で既に完成していたのは明らかであり、そうであるとすれば、そもそも本件不服申立分に係る支分権である本件支払請求権の消滅時効の当否を論ずる余地はないと言わざるを得ない。にもかかわらず、原処分を含む本件裁定がなされたのは、保険者が基本権に係る時効の利益を放棄した上で、支分権についてのみ前記1記載の関連法規定に則って時効消滅の取扱いをしたということであり、このような取扱いは、受給権者保護の観点から妥当なものであると評することはできるが、だからといって、本来、時効消滅していたはずの基本権についてはこれを検討の外におき、専ら、基本権につき保険者の裁定を受けていないことを支分権の消滅時効との関係で法律上の障害であるか否かを論ずること自体、本末転倒であって相当でないというべきである。」(6頁下から1行目)

※3「したがって、社会保険庁長官の裁定を受けていないことは、支分権の消滅時効との関係で、法律上の障碍に当たり、時効の進行の妨げになるというべきである。(このように解しても、時効の中断、停止などの事情がない限り、国民年金法102条により、権利発生の日から5年が経過すれば、基本権について消滅時効が完成するのであるから、特段の問題が生じることはないと考えられる。)」(4頁下から5行目)

※4「V、結論における妥当性 本判決についてはUで示した解釈上の問題のほか、結論としての妥当性にも問題がある。すなわち本判決に従えば、権利発生(受給要件充足)の日から5年が経過した場合、年金給付を受ける権利(基本権。学説では『裁定を求める権利』と解する見解も有力である〔岩村・前掲108頁〕について消滅時効を援用しなければ過去に発生したすべての支分権について支給がなされるが、他方で、基本権について消滅時効の援用を行って基本権をその起算日(受給要件充足日)に遡って消滅させれば(民144条)、そこから発生していた支分権も(その消滅時効の起算点の時期にかかわらず)当然にすべて(直近5年を含めて)消滅することになる。
  こうした結果をもたらす本判決の解釈は、支分権につき全部支給か全部不支給かという選択肢のみを与えるため、上述のような従来の行政実務が行ってきた柔軟な中間的解決の可能性を排除してしまうことになる。しかも本判決は、支分権の消滅時効の起算点について一見受給権者に有利な解釈をしているようであるが、判旨Uによれば、基本権については法令の規定どおり消滅時効期間が経過したらこれを援用して基本権自体を消滅させるべきだという前提に立っていると思われるため、この前提も踏まえて行政実務が本判決に従うと、むしろ受給権者にとって従来の取扱いより著しく不利な結果となってしまう。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 13:46| Comment(0) | 1 障害年金
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: