2017年09月09日

大阪高裁控訴審第1準備書面(案)の公開について


先週は、県会主催の特定社労士の能力担保研修があり、帰宅後グログをアップしたのであるが、アップできたのが、日付の変わる寸前であった。今週も引き続き、第3回目の最終講義日であるが、これに懲りて、出掛ける前にアップすることとした。内容は、明日にでもFAX送付予定の第1準備書面(案)である。

一昨昨日の9月6日(水)、障害年金支分権消滅時効問題について業務提携を予定しており、現在7件の事件について共同受任関係にあるG法律事務所等3人の弁護士の先生と法務スタッフで、障害年金支分権消滅時効事件の第2準備書面の完成に向けて約100分間の充実した打合せの時間が持てた。

そこでG先生から、大満足の一言があった。本案にも記載したが、年金法に欠けている面について、一言触れておいた方が良い旨の発言である。弁護士の先生であっても、そこまで気付かれる先生はほとんどいないので、流石!! という印象を強く持った。私の選んだ人は間違いなかった!?

これについては、本案の「第4」を吟味いただきたい。


平成29年(行コ)第??号 未支給年金支給請求控訴事件
控訴人 (第1審原告) ?? ??
被控訴人(第1審被告) 国 同代表者法務大臣 

第1準備書面


平成29年9月13日

大阪高等裁判所 第7民事部1係 御中

住所 〒???-???? ?????
控訴人  ?? ??
電話番号 ???−???−????
携帯番号 0?0−????−????


住所 〒471−0041 愛知県豊田市汐見町 4−74−2
控訴人訴訟代理人 法定代理人成年後見人  木戸 義明 ㊞
電話番号 0565−32−6271
携帯番号 090−????−????
FAX 0565−77−9211

送達場所 上記成年後見人法定代理人の住所と同じ





 上記当事者間の平成29年(行コ)第??号 未支給年金支給請求控訴事件について、被控訴人から平成29年9月4日に、同年9月13日付け答弁書が提出されたので、控訴人は次のとおり第1準備書面を提出する。
 原告の主張が正しく、被告の運用及び主張が誤っていることは、原審における訴状及び準備書面で十分述べており、原判決が誤っていることも控訴理由書で述べた。
従って、本書では、答弁書の被控訴人の主張に反論すると共に、被控訴人の主張や原判決が、なぜ許されるべきものでないかについて、根本的な重要点に絞って反論する。

第1 本件支分権消滅時効完成の立証責任は被控訴人にあること
 障害年金の受給権は、差押えさえも禁止(国年法第24条、厚年法第41条)された重要な権利である。
一般的に民事上の差押えには、その根拠について疎明する必要があり、担保まで要するが、本件における被控訴人(国)は、根拠なく受給権者にとって差押えを越える悪影響となる支給制限を加えている。
 本件は、支分権消滅時効の成否を争う裁判であり、元々この場合、消滅時効の完成については、被控訴人(国)側に消滅時効完成の立証責任がある事件である。
加えて、年金法には、上記のとおり差押えさえ禁止するほどの受給権保護規定があり、これを曖昧な根拠により侵害する被控訴人の行為を考察すると、この消滅時効の完成については、被控訴人に、更に重い立証責任が課されていると考えるべきである。
 ところが、被告の主張は、前提条件を誤認し、論理の飛躍を重ねた曲論であったので、この主張では、消滅時効の完成は立証されていない。
従って、「原告の主張に理由がない」という判決理由では、被告を勝たせることができない性質の事件であるが、ほとんどの下級審判決が、この理由で、原告側を敗訴させている。
理由がないのは、事実誤認や論理の飛躍を重ねた被告の虚構であるので、これを認める原判決は、論理法則及び経験則上も許されることではない。

第2 今までの被控訴人の主張では時効の完成が立証されていないこと
 被控訴人の唯一の主張の根拠である抽象的観念論では、控訴人の権利不行使について、観念操作が行われているので、以下の点について、支分権消滅時効完成の証明が成り立たない。
 被控訴人は、基本権とは独立した権利である支分権消滅時効の完成(権利不行使の事実)を証明できないから、消滅時効完成の証明、及び本案の本質論とは直接関係しない年金時効特例法との整合性や、多くの下級審判決で、裁定前に支分権の消滅時効が進行していることを認めていると主張している。
これらの主張は、控訴人の指摘に対して、的確に説明できておらず、支分権消滅時効の完成を証明したことにはなっていない。
 本件支分権が完成するには、仮に、被告の主張を採用した場合においても、以下の基本的根本的部分である各事項について、被控訴人の主張が成立することを、論理法則に則って証明する必要があるが、控訴人の主張に対して反論ができていない現在、未だ立証責任が果たされていない。

 過去分の支払期月「各偶数月の末日に弁済期が到来するものと解して、…」(平成28年2月9日付け被告第1準備書面27頁下から6行目)は、納期・弁済期(支払期月)とみなせないこと。

 裁定請求時においてさえ、「国年法は、障害基礎年金の支給時期、支給要件及び金額について具体的に定めているところであり、障害基礎年金の消滅時効についてのみ国年法に基づく他の年金給付と別異に解することを相当とする理由は見いだし難い。」(答弁書4頁下から12行目)という状態にはなっていないこと。

 厚生労働大臣は、「障害基礎年金の支給要件が満たされているか否かの判断や、障害基礎年金の支給要件が満たされているときに障害基礎年金の裁定をするか否かの判断について、裁量権を付与されているものではないと解される。」(答弁書4頁下から2行目)との解釈が誤っていること。


 裁定とは、「受給権者の請求どおりに権利が現に存在することを確認する行政行為にすぎない」(第1準備書面33頁5行目)という事実は存在しないこと。

 「受給権者は、自らの意思によって裁定請求をしさえすれば、厚生労働大臣による裁定を通じて、裁定の欠如という障害を除くことができる」(第1準備書面34頁9行目)、他方、受給権者は、受給権についての裁定請求をして行政庁の裁定を受けさえすれば、直ちに、当該裁定前の年金の支給を受ける権利(支分権)を行使することができるものである…」(第1準備書面36頁下から1行目)という事実は、存在していないこと。

 支分権は、「基本権について裁定を受けているか否かにかかわらず、客観的に支分権の発生した時点から、消滅時効は進行することになる。」(平成28年9月13日付け被告第3準備書面15頁11行目)とは評価できないこと。


 以上に限定しても被控訴人の主張には、事実誤認や論理の飛躍が認められる。控訴人は、そのことを理論上でも、実務上でも証明してきており、今後どのような主張があっても的確に反論できるのである。
 まして、現実に原告が支分権を行使することが可能となるのは、厚生労働大臣による裁定を受け、障害等級が決定し、原告に通知された時点であること〔引用文「裁定前の年金の支給を受ける権利(支分権)は、裁定を受けない限り、現実の年金の支給を受けることはできないという意味で具体的な権利ということはできないものの、…」(同上36頁下から10行目)、「確かに、支分権は、基本権について裁定請求をして厚生労働大臣の裁定を受けない限り、現実の支給を受けることはできないが、…」(平成28年9月13日付け第3準備書面15頁8行目)〕は、被控訴人も認めている。
 しかし、被控訴人は、それでもなおかつ、本件について、支分権消滅時効が完成していると主張する。なぜそのような矛盾した主張を展開できるのか。
それは、被控訴人の主張には、事実誤認と論理飛躍を重ねた抽象的観念論による観念操作が行われているからである。現実の問題と観念上の話とは、同じ土俵に乗っていないからである。
 社会保険審査会(月刊社会保険労務士2009年4月号「実例!社会保険の再審査請求 寡婦年金を不支給とした原処分を取消し 社会保険審査会裁決の公開審理を経ず迅速に救済」大阪会 中林史枝、甲第6号証、64頁下から18行目)は、そのことに関して、「事柄の実体から乖離した観念操作の嫌いがあり、…」と述べているが、これは、「嫌い」ではない。観念操作そのものにより、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使と混同させているのである。
 しかも、基本権と支分権の独立については、被控訴人自身認めているのである。

第3 被控訴人の答弁書における誤った主張
 被控訴人は、答弁書においてでさえ、裁定の法的性質について、なお誤った主張を続けている。
 被控訴人は、「厚生労働大臣は、障害基礎年金の支給要件が満たされているか否かの判断や、障害基礎年金の支給要件が満たされているときに障害年金の裁定をするか否かの判断について、裁量権を付与されている者ではないと解される。」(答弁書4頁下から2行目)ことからすれば、受給権者が排除することができる事実上の障害だから、法律上の障害には該当しないと結論付けている。
 これは、従来からの被控訴人の主張であり、同様の考え方に基づく最近の高裁の判決例(札幌高裁 平成29年1月29日判決)もあるが、これは、最高裁判所判例解説の説示(甲第22号証939頁〜941頁)にも、被控訴人(国)の実務運用にも反する明らかに誤った法解釈である。
 厚生労働大臣は、後者の判断は別として、前者の判断をする裁量権は当然持っている。それがなければ、業務の遂行もできない。
 甲22によれば、国年法第16条の裁定は、確認行為型の裁定に属し、行政庁による認定、決定、裁定等によって初めて具体的な権利を発生させることとしているものである旨、確認行為型における確認等も、これがなければ結局具体的受給権が発生せず、その行使が不可能であるから、行政処分に当たると解されること、当然発生型の説明を反対解釈すると、確認行為型の裁定は、既に発生している権利等に変動を及ぼすものと考えられること、及び社会保障関係給付の受給権が実体法上いつどのようにして発生するかは、その性質から当然導き出されるものではなく、結局、立法政策により決せられるものである、と述べられている。
 この立法政策は、既に定着しており、既存の立法政策は、行政権でも司法権でも変更することはできない。
 そして、被控訴人の最近の実務運用結果においても、約12.5%の棄却判定が出されており、例えば、2級相当との請求に対して、3級相当との決定を出しているのだから、この裁定に裁量権のあることは、疑いようのない動かし難い事実である。
 最たる事例では、従来、事後重症認定を出してきた処分に対して、再審査請求の途中から、保険者自ら、認定日請求を認める処分変更をすることがあるが、これができるのは、裁定に裁量権があるからである。

第4 現行法に欠けている点について
 控訴人の主張を採った場合、次のような不都合が発生する可能性がある。
 それは、障害年金を受給できる状態にありながら、自らの怠慢や自由意思によって裁定請求を遅らせていた者が居た場合、そのような者が何十年も遅らせて裁定請求をした場合にも満額の年金を保障するような事態が起こらないとも限らないということである。
 控訴人も、このような者にまで、満額の年金を支給すべきとは考えていない。
 実際に、被控訴人の引用する裁判例(乙第31号証)においても、そのような事態を想定して、棄却理由の一つとしている事実があるが、その棄却理由は正しいこととは認め難い。
 この裁判例では、「また、そのように解さなければ、例えば、何十年も前の事実についてなお不服審査や訴訟で争うことができることになり、年金制度の在り方としても合理的とは解されない。」(判決文6頁下から3行目)と述べられているが、そのような懸念があるからといって、本件の取扱いは、その場凌ぎの対応を行うことは決してあってはならないことである。
 懸念事項については、可能性としてあることではあるが、実際にはほとんど起こり得ないことであるので、新たな立法措置による解決が図られるべき事柄である。
以上
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:19| Comment(0) | 1 障害年金
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