2017年08月12日

準備書面(2)補充書(案)大公開


先々週のグログでお約束した、準備書面(2)補充書(案)を公開します。提出すること自体未定で、提出するにしても、いつ提出するかも未定ですが、本案について、何が有効策かを検討いただき参考資料にと思い、膨大になりましたが、大公開としました。いわゆる過激な言葉も交じっていますが、私の考え方はお分かりいただける資料だと思っています。

平成28年(行ウ)第601号 障害厚生年金支給請求事件
原告 ?? ??
被告 国

準 備 書 面 (2) 補充書(案)


平成29年?月?日


東京地方裁判所民事第2部D係 御中

原告訴訟代理人弁護士  ? ?  ? ?

 同           ? ?  ? ?

同           ? ?  ? ?

補佐人 社会保険労務士 木 戸 義 明 



 補佐人(以下「私」という)は、原告の平成29年9月??日付け準備書面(2)について以下のとおり主張を補充する。



 被告の主張は、事実誤認や論理の飛躍を重ねた虚構に基づいている。本件は、支分権消滅時効の問題であるので、素直に支分権について、継続5年間の権利不行使があったのかどうかを検証すれば足りる事件である。
 被告の基本権と支分権を混同した推論(しかも、基本権と支分権が独立した権利であることは、被告自身認めている)は、故意と思われるほどの論理の欠陥があるもので、トリックといっても言い過ぎではないほどの根拠のない主張である。
 そして、被告準備書面(2)の特徴は、原告の重要な主張に対して、議論を避け逃げているところにある。
 本件の消滅時効は、会計法が根拠とされ時効消滅したとさせているのであるが、そもそも会計法は、「5年間これを行わないときは、時効により消滅する。」と規定しており、継続5年間の権利不行使(要件事実)があって初めて時効消滅を認める法律である。基本権と支分権の独立については、既述のとおり、被告も認めている事実であるので、被告の主張は根本から自己矛盾を孕んでいるのである。
 なお、同法は、時効が完成した場合に、援用を要さないと規定しているが、当然、未だ時効が完成していない事案には、この規定の適用はない。従って、時効が完成していない本件について、会計法の援用に関する規定は全く無関係である。
 従って、「権利の発生から5年を経過するごとに自動的に消滅する」といった従来の通説は成り立たない。また、放棄の規定も、事前には放棄できないが、事後には放棄も可能である。
 恥ずかしいことに、被告は、この基本的な事柄さえ理解せず、若しくは、理解していても故意に理解していない振りをして、本訴においては無茶苦茶な主張を展開している。
 トリックの最たるものは、原告が主張する裁定の法的性質に係る最高裁判所判例解説(甲第7号証)を無視して、これとは正反対の結果となる札幌高裁の判示した一文を引用して、事実誤認と論理の飛躍を繰り返した、自己に都合の良い主張を繰り返していることにある。
 従って、論理が繋がらず、論理の飛躍を繰り返すことになり、主張に無理があるので、本案の本質論とは直接関係しない年金時効特例法や多数の被告勝訴の裁判例を持ち出すより攻撃の方法がなく、これらを最大の武器にしているのである。
 私は、被告の運用の違法を訴え、正面から争い勝訴した唯一の人間である。しかし、私が違法に気付く以前に「国の運用はおかしい」と気付いた人は何人もみえる。
 しかし、どこがどのようにおかしいかを解明した人はいなかったのである。従って、その方たちに弁護士が付いても、信義則違反等の特段の事情のある事件を除き、全敗であった。
 一方、私は違う。国の運用のどの部分が違法であり、その理由を含め解明した最初の者である。本訴では、十分な審議を期待している。
  以下で、被告の主張の重要な部分に限定して、順次、被告の運用が違法であり、憲法第29条1項にも違反していることを明らかにしていく。
 
第1 被告準備書面(2)「第1」について
1 支分権消滅時効の起算点
 被告は、「支分権の消滅時効の起算点は、基本権の裁定の有無にかかわらず各支払期であり、以下で述べるとおり、受給権者は、年金支給の基礎となる障害の有無やその状態を最もよく知り得るから、支分権について、裁定を受けるまでその権利行使が現実に期待できないなどとはいえず、基本権の裁定を受けていないことは、法律上の障害に該当しないことは明らかであり、原告が挙げる判例や「裁決例による社会保険法」の記載はいずれも原告主張の根拠となるものではない。」(5頁6行目 )と主張する。
反論
 「受給権者は、年金支給の基礎となる障害の有無やその状態を最もよく知り得る」との引用裁判例は、平成27年7月28日付け東京高裁(乙第26号証)において、喉頭がんの受給権者について説示された判決理由である。喉頭がんであれば、患者本人が最もよく知り得る事情であったかもしれない。しかし、本件のような精神の障害についてこれがいえないことは、既に十分述べてきたところである。
 また、地方の高裁において、精神の障害の場合においてもこの理由が多用されているが、内容を吟味せず、実態の合わない事実誤認による引用であり、法解釈を職責とする高等裁判所としては、カンニングペーパーのごとく引用された恥ずべき行為(乙第31号証)であり、これは本件においては理由とはならない。
2 支給要件の明確性及び障害認定の客観性
 被告は、「裁定を受けない限り、現実の支給を受けることはできないが、旧厚年法上、年金の支給要件、支給期間、支払期月及び支給金額は明確に定められており(旧厚年法47条以下参照)、障害年金の受給権者においても、社会保険庁長官に対して、基本権についての裁定を請求し、裁定を受けさえすれば、直ちに支分権を行使することができるのであるから、社会保険庁長官の裁定は確認行為にすぎず、裁定請求前は、単に支分権について権利不行使の状態が継続していたにすぎない。したがって、裁定を受けていないことが支分権の消滅時効との関係で、法律上の障害に当たると解すべき余地はなく、支分権は、基本権について裁定を受けているか否かにかかわらず、客観的に支分権の発生した時点から消滅時効が進行することになる。」(5頁下から9行目)と主張する。
反論
 障害年金においては、裁定を請求し裁定を受けさえすれば直ちに支分権を行使できるものではないことは、既に証明済みで動かし難い事実である。
 被告の主張する「客観的に支分権の発生した時点」の翌日が支分権発生時点とする主張は、被告の架空の設定であり、裁定の性質及び支払期月の規定(ただし書のこと)から、そのような時点から支分権が発生することはあり得ない。
 裁定請求に対する処分(裁定)は、診断書等により障害の状態を審査し、障害認定基準等に該当するかどうかを総合的に判断するものであるので、被告が主張するような、「単なる確認行為」でないことは明らかである。
 この処分は、裁量権の範囲内で行われ、棄却も裁量権の範囲内の行為であるので、この処分に請求を棄却する旨の内容があっても、これは違法ではない。
 しかし、被告の主張に従えば、上記棄却処分は行政庁の違法行為になってしまう。これが誤りであることは、自明の理で、経験則上も明らかなことであり、証明を要しない。
 被告も認めているように、行政処分は裁定によって行われるので、裁定前に受給権者が想像もすることができない時点で支分権が発生することはない。裁定が行政処分であるからこそ、これに不服のある者は、これに対して社会保険審査官及び社会保険審査会法(以下「官会法」という)に基づき3カ月以内に審査請求ができるのである。
 甲第17号証の例1の場合、障害認定日の翌月が請求日とされているが、これが10年後の平成36年11月25日と仮定して被告の主張の誤りカ所を説明する。この仮定によれば、その日までには、双方に何の行為も無いのであるが、被告の主張によると、本来ならば、平成26年12月15日に11月分の支払いがあり、翌月の初日同年12月1日に、その消滅時効が進行する。そして、5年経過をもって時効が完成する。
 以後2ヵ月ごとに2カ月分の支分権が発生し、その翌月の初日に消滅時効が進行し、同様のことが繰り返される。。これは、裁定前の支分権であっても同じ考え方となる。
 ところが、先ほどの仮定に基づけば、平成26年11月25日以降は、全くの白紙の状態なのである。にも拘らず、被告の頭の中では、観念操作が行われ、上記の2ヵ月ごとの受給権の発生と消滅時効の進行が繰り返される。
 平成36年11月25日に請求した受給権者は、その時に初めて行動を起したのに、約5年間分の支分権は、既に時効消滅していると説明されるのである。
 支分権は、裁定という行政処分があり、かつ、支払期月が到来して初めて支給されるものである。支分権は、裁定前に発生し、このような状態の下で時効消滅するものではない。
3 支分権消滅時効の起算点と年金時効特例法との関係
 被告は、「このような法令が現に存在すること自体、支分権の消滅時効の起算点が、基本権の裁定の有無にかかわらず各支払期であることの何よりの証左というべきである。」(6頁5行目)と主張する。
反論
 この被告の主張は、年金時効特例法が完璧であった場合に、本案と何らかの関係が出てくる程度のものであり、この法令の存在が、被告の主張の裏付けとは全くならない。遥かに後でできた法律と被告の主張とは直接関係のないものであり、理由は既に十分過ぎるほど説明している。
また、この被告の主張は、「逆必ずしも真ならず」の公理にも反する恥ずかしい主張である。
4 障害の有無やその状態は本人が最もよく知り得る事実か
 被告は、「上記イの各裁判例の判示に照らせば、原告が依拠する名古屋高裁平成24年判決以外の裁判例は、年金支給の基礎となる障害の有無やその状態それ自体は、受給権者が最もよく知り得る事実であることに鑑みると、支分権たる年金の支払いを受ける権利について、権利の性質上、裁定を受けるまでその権利行使ができないとはいえないし、それは精神障害者であっても同様であるとの立場に立っていることが明らかであるといえる。」(7頁下から6行目)と主張する。
反論
 上記1と同じ。権利行使可能性については上記2と同じ。
5 裁定前の権利行使可能性
 被告は、「しかしながら、本件は、権利の性質上、裁定を受けるまでその権利行使が現実に期待できないものとはいえない上、原告が挙げる判例は、いずれも本件には直接妥当しないものであり、原告主張の根拠となるものではない。」(8頁8行目)と主張する。
反論
 被告は、裁定の法的性質及び権利の性質を誤解している。支分権は裁定という行政処分があって初めて具体化する権利であるので、裁定前に発生することはない。言うまでもなく、発生もしていない支分権を行使できる訳がない。被告の主張は明らかに詭弁である。
6 支分権の発生時期
 被告は、「そして、本件において、支分権は、基本権の発生を根拠として、基本権の発生日の属する月の翌月から発生する権利であるという性質を有するものであるから、その権利の性質上、権利行使が現実に期待できないことが認められる特別な場合であるとは到底いえず、昭和45年判決等を根拠とする原告の主張は失当である。」(9頁下から7行目)と主張する。
反論
 上記5と同じ。また、本件の事情は、被告の挙げた「特別な場合」の条件も全て満たしている。
7 多くの裁判例
 被告は、「原告の上記主張は、自己の見解に合致しないという理由のみで被告の挙げた判例等を論難するものにすぎず、むしろ、多くの判例等が、本件の争点である支分権の消滅時効の起算点について、被告の主張に沿った判示をしていることに照らせば、原告の主張に理由がないことは明らかというべきである。」(10頁3行目)と主張する。
反論
 原告の主張は、合理的・合法的であり、論理法則にも社会通念にも合致している。被告の曲論こそが独善的である。
 また、被告の挙げる多くの裁判例は、本件で原告が主張している重要部分である、「裁定の法的性質に係る最高裁判所判例解説(甲第7号証)」の考え方、正しい支払期月、及び裁定の行政処分性、及び被告の主張が事実誤認と論理の飛躍の混在した抽象的観念論で、観念操作が行われたものである等について議論が尽くされておらず、判例としての価値が全くないものである。
 私が保佐人(控訴審からは民訴法第60条の補佐人も)を務める名古屋地裁平成28年(行ウ)第74号 未支給年金支給請求事件は、裁判長の指揮権発動により第2回期日で結審となり原告が敗訴しているが、控訴審では更なる審理が重ねられ、来る9月21日(木)に、原審の回数を越える第3回期日を迎える。
 また、私が成年後見人を務める大阪高裁平成29年(行ヌ)第3号未支給年金支給請求控訴事件では、訴訟救助の申立てが許可され、勝訴見込みありとの疎明が認められており、第1回期日は、来る9月13日(水)に開かれる。
 このことが何を示唆しているかは、十分にご理解いただけるものと推測する。何十年間も正しいこととして国により行われてきたことであるので、被告から見れば、原告の主張は「独自の見解」となるものと思われるが、実は、これが正鵠である。
 この事件は、何十年間にもわたり、国が正しいこととして運用してきたことに対する違法を追及するものであるので、原告の主張は、被告から見ると「自己の見解に合致しないという理由のみで被告の挙げた判例等を論難するものにすぎず、」と思われるかもしれないが、実は、原告の主張こそ、審理を追及した結果の産物である。従って、名古屋高裁の渡邉修明裁判長ほかの裁判官が、控訴人の主要な主張を認め、縷々主張する被控訴人の主張を一切採用しなかったのである。
 被告の挙げる「多くの裁判例」は、判例としての価値が全くない。
8 障害等級判定基準及び判定の客観性
被告は、「裁定請求(請求は余分と思われる)するに当たっては、旧厚年法別表1に基づいて要件充足性を判断すれば足りるのであるから、原告が主張するこれらの背景は、裁定請求(?)それ自体の困難性を示すものではないのであって、原告は、裁定請求の結果、認定を受けられるのかどうかの難易の問題と裁定それ自体の困難性の問題とを混同しているといわざるを得ない。」(10頁下から9行目)と主張する。
反論
 原告の主張は、裁定の公平性と裁定それ自体の困難性を錯誤や混同するほど曖昧なものではない。
 被告は、「旧厚年法別表1に基づいて要件充足性を判断すれば足りるのであるから」と、いとも簡単に言っているが、この客観性を保つことは相当に難しいことである。
 精神の障害では、この判断のための重要な資料として、120号の4様式(甲第18号証:実例、A3をA4に縮小)の診断書が用いられる。この場合、目や耳や、肢体の障害と違い、検査数値や測定値が記入されることはなく、様々な要素を考慮したうえで、認定医が専門的な判断に基づき総合的に判定することとなっているので、客観的判断は困難を極めるのである。
 また、この様式の裏面Iウ2(1)〜(7)及びIウ3(1)〜(5)の記載は、医師が直接目にすることはない日常生活能力の判定及び日常生活能力の程度の評価であるので、受給権者等から医師への実態の伝達度によって相当の誤差が生じる。そして、この判断は、単身で生活したときの状態を想定して判断することとなっており、等級認定は書類のみによって行われるので、医師によっても相当の違いが生じる。
 従って、被告のいうように、客観的に受給要件を満たした時に受給権が生じるなどということはなく、被告の主張は机上の空論である。
9 権利行使期待可能性
 被告は、「したがって、支分権について、裁定を受けるまでその権利行使が現実に期待できないなどとはいえないから、そのことを前提に裁定を受けていないことが法律上の障害に当たる旨をるる述べる原告の主張は理由がない。」(11頁10行目)と主張する。
反論
 受給権者の権利行使可能性は、少なくとも、裁定請求時に無ければ意味をなさない。障害年金においては、裁定請求時には、受給の有無も受給金額も誰にも分からないのだから、現実の権利行使可能性が存在する訳がない。被告は、自明の理にまで異議を唱える。
10 支分権支給制限の妥当性
 被告は、「旧厚年法上の年金について「受給権発生後5年を超える期間が経過してから裁定請求がされた場合」には、「その時から5年を遡った時期より後に履行期が到来する支分権に係る限度では受給権を認める」ということは、上記法解釈に基づく旧厚年法及び会計法の適用上、当然の帰結なのであって、何ら批判されるべきものではなく、裁決例による社会保険法の原告引用部分の意見(甲第10号証・71ページ)のような考え方が、年金にかかる債権についての消滅時効の起算点の解釈を誤るものであることは明らかである。」(12頁13行目)と主張する。
反論
 被告の運用は、「上記法解釈に基づく旧厚年法及び会計法の適用上、当然の帰結」ではなく、年金法の趣旨を誤解した違法な運用である。上記被告の主張は、根本から年金法を誤解釈したものであり、勿論、消滅時効の起算日についても誤解釈している。
 年金法は、全額支給停止の場合にでさえ、時効を進行させていない(国年法第102条2項、厚年法第92条2項)。
 まして、差押えが禁止(厚年法第41条等)された重要な権利について、例え、年金の主管行政庁であろうと、法的根拠なく支給制限ができる筈がない。
11 社会保険審査会の裁決の妥当性
 被告は、「上記採決には、「本件の場合、この規定を適用すると、請求人は通算老齢年金については裁定を受けることができなくなる。(中略)さればといって、長期間が経過した支分権についてまで無条件に支払を認めるのは適当ではないとして、(中略)、一部の支分権の支払を行わないとする行政措置をとってきたものと認められる。(本件公開審理の場において、保険者代理人も従前の見解を変更し、以上と同様の見解を述べた。)」(甲第11号証・74ページ)と記載されており、原告の引用部分は、当時の保険者代理人が、基本権の時効を援用しないという行政措置の趣旨の範囲内において、これを認めたことを示しているにすぎない。
 なお、原告が引用する裁決は、保険者代理人の法の解釈は別として、社会保険審査会においても裁定請求から遡って5年間に限って支分権を支給した原処分を支持した裁決である。(甲第11号証・73及び74ページ)」(13頁2行目)と主張する。
反論
 「一部の支分権の支払を行わないとする受給権者に不利な行政措置」は、誰にもできない。行政庁ができるのは、やむを得ない理由がある場合に、時効の援用をしないという、受給権者が有利となる行政措置に限定される。
 また、被告は、「社会保険審査会においても裁定請求から遡って5年間に限って支分権を支給した原処分を支持した裁決である。」とも主張するが、この判断をした理由が違法である。
 この理由を検証すると、社会保険審査会は、基本権について時効を援用すれば、そもそも支分権は発生しないのだから、そのことを検討の外におき、専ら、基本権について保険者の裁定を受けていないことを支分権の消滅時効との関係で法律上の障害であるか否かを論ずること自体、本末転倒であって相当でないというべきである、旨説示する。
 しかし、社会保険審査会の推論は、基本権については、やむを得ない理由のある場合には、時効を援用しないと決められていたものを、決められていなかったものとして、援用のあったことを前提とする考え方に基づいており、この推論は成り立たない。
 以下に該当部分を引用する。このような考え方に基づく裁決は、社会保険審査会に与えられた権限を超える。
 「また、基本権について保険者の裁定を受けていない受給権者は、本来、支分権を行使することはできないのであり、これを本件に即してみれば、本件障害年金の受給権発生日は平成13年5月26日であるところ、本件裁定請求は平成24年8月22日に受け付けられており、本件資料上、基本権に係る時効の進行を妨げるような客観的な事情が存するとは認められないから、基本権に係る消滅時効は、本件裁定請求がなされた時点で既に完成していたのは明らかであり、そうであるとすれば、そもそも本件不服申立分に係る支分権である本件支払請求権の時効消滅の当否を論ずる余地はないといわざるを得ない。にもかかわらず、原処分を含む本件裁定がされたのは、保険者が基本権に係る時効の利益を放棄した上で、支分権についてのみ前記1記載の関連法規定に則って時効消滅の取扱いをしたということであり、このような取扱いは、受給権者保護の観点から妥当なものであると評することができるが、だからといって、本来、時効消滅したはずの基本権についてはこれを検討の外におき、専ら、基本権について保険者の裁定を受けていないことを支分権の消滅時効との関係で法律上の障害であるかどうかを論ずること自体、本末転倒であって相当でないというべきである。」(6頁下から1行目)
 しかし、筋論としては、この考え方には一理ある。
基本権について時効の援用をしなかったのだから、その交換条件として、支分権の時効を制限すべきという考え方は合理性がある。
 ところが、その考え方を推し進めるのであれば、法的根拠のない内かんではなく、立法の手続きを経て、この内容を法令にすべきであった。
 その過程では、それでは支分権の支給を制限する場合、5年が正しいのか、10年、又は20年が正しいのか等のあるべき道の検討がされるので、国民の障害年金に係る関心も高まり制度の周知にも貢献する筈である。
 このような努力を怠ったのは被告であり、その怠慢の責任を何の罪もない受給権者の負わせてはならない。
 ここで私が問題にしているのは、何が正しくあるべき姿であるか、ということではない。単純に、現在の被告の運用は実定法に反しているということである。最も遵法精神を発揮すべき国が、公然と違法行為をしているということは、現代の法治国家であってはならないことで到底許されることではない。
 従って、被告の主張は全くの失当である。
12 「裁定を受けさえすれば」の前提の過ち  名古屋高等裁判所平成27年6月17日判決の信用性
 被告は、「そして、「障害の状態にある場合」、受給権者は裁定を請求して裁定を受けさえすれば、裁定前に生じている支分権についても直ちに権利を行使することができるところ、裁定請求をするかどうかは専ら受給権者の意思に委ねられているということができるから、権利者が自分の意思でいつでも排除できる事実上の障害であるといえ、権利者の意思によって障害を除くことができる場合に、時効の進行を妨げるものでないことは、被告準備書面(1)第5の2(2)(18及び19ページ)で述べたとおりである。
 この点につき、名古屋高等裁判所平成27年6月17日判決は、…」(14頁8行目)と主張する。
反論
 障害年金は、厚労省の公表においても、約12.5%もの不支給処分があり、仮に、受給権者が自らの意思により裁定請求しても、常に直ちにには障害を取り除くことはできない。(甲第17号証の例においても、約5ヵ月間の空白がある。実務では約半年程度が多い。)仮に、3ヵ月から半年程度の内に、取り除くことができたとしても、それは、約87.5%の方である。しかも、この障害除去可否の判断は、少なくとも裁定請求時に分かっていなければ、権利行使可能性の議論において意味をなさないが、これは全ての場合に不明である。
 平成27年6月17日名古屋高裁判決は、「しかし、裁定請求があっても厚生労働大臣において、基本権の発生要件等の存在が確認できない場合には、不支給とするほかないのであるから、裁定請求後に不支給となった事例があるからといって、裁定を経ていない支分権が抽象的な権利にとどまるとはいえない。」(乙第24号証、3頁下から3行目)という。
 しかし、発生要件等の存在が確認できるかできないか自体が総合評価の対象であり、「抽象的な権利にとどまるとはいえない」に至っては、最高裁判例に反し(注)、被告もどこの裁判所も主張又は説示していない、前代未聞の唯一のとんでもない誤判断を示した判決で、弾劾裁判にも値するほどの権威のない判決である。
 (注)「厚生労働大臣が行う裁定(国年法16条)があってはじめて基本権たる受給権(省略)が具体化する。」(最三小平成7年11月7日判決・民衆49巻9号2829頁)
 この判決は、いわば、理由のない判決と同視でき、余りのことに、原告のご実父も受任弁護士も、裁判所が信じられなくなり、上告受理申立てを諦められた事例である。
 なお、この裁判の原審は、精神障害者の本人訴訟で行われており、その支援者のご実父からお聞きするところ、全文に訂正した書証を読んでいた裁判長が突然立ち上がり、結審を宣告して、奥に引っ込んでしまったという審議不尽の裁判であった。

第2 消滅時効の主張が信義則に反し許されない旨の原告の主張は失当であることについて
1 重要要素に係る年金法の規定の明確性
 被告は、「年金時効特例法1条の適用にはならないところ、その旨を原告に説明した上で原告の強い要望により提出されたものであり(乙第4号証)、日本年金機構の窓口担当者が特例給付支払手続用紙に所定の事項を記入して申請するよう指導したとの原告の主張が事実に反するものである。」(16頁下から9行目)と主張する。
反論
 原告の強い要望は、「時効消滅事由不支給はおかしいから速やかに払え」というものであり、時効特例法の適用の可否とは無関係である。法律の素人であれば、理不尽な不支給があれば、これを準用等して、権利を回復してくれると考えるのは当然のことである。原告は、これを提出しても支払の可能性がゼロであることが分かっておれば、わざわざ提出することはなかったものである。
2 裁定通知後においても既に5年を経過
 被告は、「支分権の消滅時効の起算点について、裁定が原告に通知された時点であるとの原告の主張を前提にしても、裁定が原告に通知されたのは、平成19年2月22日であるから、本件訴訟提起時においては、すでに5年が経過しており、平成13年以前の本件障害年金に係る支分権は時効消滅しているものである。」(17頁下から12行目)と主張する。
反論
 原告は、5年以内に異議を唱え、厚労省の担当者から、誤った説明を受けている(甲第19号証?)のだから、信義則に従えば、その時点で時効は中断する。その後も、厚生労働大臣に対する異議申立てをしているので、同じく信義則に従えば、その時点で時効は中断していると考えるのが、通説に従った解釈である。
 また、政府によるこのような誤った運用は、「当然無効」とも考えられる。当然無効であれば、いつまで経っても無効である。受給権者は、いつでも権利回復の請求ができる。

第3 原告のその余の主張に理由がないこと
1 遡及5年支給の理由
 被告は、「他方、支分権については、会計法30条及び31条の規定が適用され、5年の消滅時効にかかるが(会計法30条後段)、この消滅時効については、時効の援用を要せず、国が時効の利益を放棄することはできないとされているため(同法31条1項後段)、支分権は、その発生から5年を経過したときに自動的に順次消滅していくことになることから、本件においても、社会保険庁長官は、原告からの裁定請求に際し、基本権の消滅時効の援用をしないことを当然の前提として、過去5年分の支分権たる年金受給権に係る年金のみを支払ったものである。」(18頁下から7行目)と主張する。
反論
 会計法の解釈上、継続5年間の権利不行使のない債券が時効消滅することは絶対にない。これは、消滅時効が完成するための絶対条件である。
 「自動的に順次消滅」については、本書前文(2頁中ほど)を引用する。
2 内かんの位置付け
 被告は、「支分権の消滅時効の取扱いについては、被告準備書面(1)第3の4(15及び16ページ)で述べたとおり、会計法の規定の解釈によるものであり、内かんは、この解釈を知らせたに過ぎないから、東海北陸厚生局社会保険審査官の審査請求にかかる決定書謄本(甲第9号証)に原告が引用する記載があるからといって、被告が内かんに基づき支分権の消滅時効の取扱いを決していることにはならず、原告の主張は失当である。」(19頁下から6行目)と主張する。
反論
 被告が内かんにより運用していることは、甲第9号証で明らかである。年金事務所が本訴での被告のような説明をすることはなく、私は、甲第9号証同様の自らが担当した決定書を3通保有している。また、内かん同様の通知や事務連絡は一切存在しないので、被告が内かんにより運用していることは顕著な事実である。
3 老齢年金と障害年金の違い
 被告は、「そもそも、裁定請求をするだけで確実に受給できる年金などない。全ての年金には受給要件が定められているのであり、かかる要件を満たさなければ年金は支給されない。例えば、…」(20頁11行目)と主張する。
反論
 加入期間や保険料納付要件を除いて議論が進んでいることは明らかなことである。この反論を始め、被告の姿勢には誠意というものが読み取れない。重要な問題を議論しているのだから、人を食ったような態度は慎み真摯に取り組みいただきたい。
 ここでの議論は、A 65歳到達と、別表1又は別表2等との該当性を比べることとなるので、これを同じであると判断する人は、被告以外では、ほとんどいないものと思われる。
 被告は、多くの下級裁判所が、本案に関し「老齢年金と障害年金との差異はない」と認めている(福岡高裁平成27年(行コ)第61号 未支給年金支給請求酵素事件は別)ことを奇貨として、この違いを認めたくないようである。
 しかし、被告が何と言おうと、障害等級は診断書等によって総合判断されること及び障害等級をめぐって多くの審査請求や裁判が起されていること自体が老齢年金との違いを実証している。
 繰り返すが、最大の違いは、障害年金には障害認定があり、これが被告のいうように受給要件を客観的に満たした時に受給権が発生するとはいえない(本書第1の8参照)ことである。
 この障害認定には、診断書(甲第19号証)が重要な資料として機能しており、特に、精神の障害においては、日常生活能力の判定等があり、これは医師が直接見ている訳ではないので、その内容を伝える者の能力により、大きな差異が生じる。実際に、この伝え方によって、受給の可否が分かれる例も少なくない現状にある。
 裁定に裁量権のあることにつき、一番分かり易い例を挙げる。当初の認定が事後重症(国年法30条の2、厚年法47条の2:障害認定日の属する月の翌月分からの遡及支払いはなく裁定請求の翌月分からしか支給されない)認定であった事案が、再審査請求等の途中で、保険者自らが処分変更(処分庁自らが認定日請求(国年法30条、厚年法47条)を認め、遡及5年間分の支払いをするケース)をする実例である。
 これは、障害等級認定の客観性のないことを証明すると同時に、裁定に裁量権があることを証明する事実ともなっている。更に言えば、このように保険者でさえも、処分変更の前日までは、支分権の存在を認めていなかった事案にまで、5年間支給に制限しているのだから、被告が内簡に基づき運用していることは動かし難い事実となっている。
 裁定に裁量権がなければ、処分庁が任意に処分変更をすることはできない。
4 起算点正否の議論の前提条件の正否
 被告は、「また、消滅時効とは、権利不行使という事実状態が一定期間継続した場合に、権利の消滅を認めるという制度であるから(山本敬三・民法講義T総則〔第3版〕538ページ)、支分権消滅時効の起算点を論じるに当たっては、年金の支給要件を満たしている者を当然の前提とすべきであり(なお、年金の支給要件を満たさない者は、そもそも基本権及び支分権が発生し得ない以上、一旦発生した権利を消滅させる抗弁である消滅時効が問題となる余地がないことは明らかである。)このような年金の支給要件を満たしている者を念頭に置けば、基本権についての裁定請求をして処分行政庁の裁定を受けさえすれば、直ちに支分権を行使することができるのは明らかであるから、原告の上記主張は、その前提が誤っているというほかなく、理由がない。」(20頁11行目)と主張する。
反論
 「消滅時効とは、権利不行使という事実状態が一定期間継続した場合に、権利の消滅を認めるという制度である」からこそ、現実の権利行使可能性を必須要件とするものである。また、このことが「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」という規定の根拠ともなっているものである。
 従って、被告は、「原告の主張はその前提を誤っている」と主張するが、被告の方こそ、大前提を誤っているのである。
 なお、支分権の消滅時効の起算点が問題になっている人に支給要件の有無が分からない人が多数いる中、年金の支給要件を満たしていることを念頭に置いて議論すれば、足りるとする被告の主張は、底抜けの議論である。これでは、条件から漏れた人が、検討を始める前から、検討の対象から外れてしまう。裁判所は、仮定の中だけの議論をするところではない。

第4 求釈明に対する回答
 被告は、「社会保険庁長官の裁定は行政処分である(乙第3号証・82ページ参照)
 なお、裁定は行政処分であるが、障害基礎年金の裁定は、画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、その権利の発生要件や存否や金額等につき厚生労働大臣(社会保険庁長官)が公権的に確認する行為であることからすれば、厚生労働大臣(社会保険庁長官)は、障害年金の受給要件が満たされているかの判断や、障害年金の受給要件が障害年金の受給要件が満たされているときに障害年金の裁定をするか否かの判断について、裁量権を付与されている者ではないと解釈されている(札幌高裁平成29年1月26日判決(乙第39号証))。」(21頁11行目)と釈明する。
反論
 裁定が行政処分であるからこそ、その決定内容に不服のある者は、官会法による審査請求が可能なのである。被告の主張している時点で支分権が発生しているとすれば、その時から3ヵ月以内に審査請求をしなければならなくなってしまう。しかも、被告は、不服がある場合、偶数月の2ヵ月ごとに行うべきと主張するのであろうか。被告の主張は支離滅裂で一貫性がない。
 障害年金の裁定に当たって、既に存在する権利に変動を及ぼすことができる要件裁量があることは、甲7、940頁6列目、左から2列目でも明らかであり、裁定の実態を見れば、不支給処分があり、2級相当との申請内容に、3級相当の裁定がされるのだから、これは顕著な事実であり、これ以上の証明は不要である。
 仮に、札幌高裁の平成29年1月26日判決が、一般論についていったものであるとすれば、甲7の最高裁判所判例解説に真っ向対立するものであり、被告の誤判断は明らかである。
 甲7の説示する確認行為型の行政処分に係る説示内容は、既に確立された立法政策であり、既に存在する立法政策は行政権でも司法権でも変更することはできない

第5 被告が議論を逃げている反論のない事項について
 原告準備書面(1)第3の3「裁定には要件裁量があるため、受給の可否は裁定請求によって決定されるものではなく、不支給となることがあること」(15頁)
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 真っ向対立する主張であるので、被告に異論があるのであれば反論を要する。
 第5「第5」について ア 「裁定を受けていないことは法律上の障害に当たること」(19頁8行目)
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 同上。本件の支分権は、条件未成就の債権であり、期限未到来の債権であるので、法律上の障害に当たることは当然である。
 ウ 「支分権の消滅時効の起算点を各支払期とすることは、厚年法第36条1項の解釈として誤っていること」(21頁8行目)
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 同上。支分権発生前に支払期が来るという主張は、起こり得ず、被告の主張は現実離れした観念操作上の支払期である。
 2「2」について (1)「1」について「支分権の権利行使は、裁定を受けない限り、絶対に不可能であること」(21頁下から4行目)
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 同上。被告が裁定前に権利行使可能性があるというのであれば、具体的に権利行使方法を示す必要がある。
 (2)「(3)」について ア「精神障害者にかかる受給権について、支給時期・金額は明らかでないこと」(22頁10行目)
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 同上。障害年金について、支給要件の規定が被告がいうように明確であれば、老齢年金のように、裁定前に受給の有無も年金額も分かる筈である。
 (5)「(6)」について イ「被告は確認行為の法的性質を誤解していること」(31頁5行目)
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 同上。被告は甲7 939頁から941頁を熟読すべきである。
 (5)「(6)」について ウ「支給期間の開始と支分権の発生時期を混同させていること」(31頁下から7行目)
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 同上。なお、納期(支払期月)は、債務者が勝手に選択できるような性質のものではない。

  被告は、以上1〜7について、原告の解釈と正反対の解釈をしているが直截の反論をしていない。自白とみなして構わないか。
  これらの点は、重要な要素に限定したので、真実を明らかにするため、真摯な態度で、徹底的に議論すべきである。

第6 被告の運用は憲法違反であること
 被告は、年金決定通知書と一体のものとして、本件不支給を通知し、これは処分行政庁等が取消さない限り、効力を有し続けるものとして機能している。
 一方、この権利は、すでに具体化した個人の財産権に属し、この権利は、差押え等も禁止された重要な権利(国年法第24条、厚年法第41条等)とされている。
 公権力の行使として、国家権力をもって、一方的に支給制限をしているのだから、憲法第29条1項に違反していることは明らかである。
 なお、被告は、この付記部分を、単なる事実の通知としているが、名古屋地裁平成28年(行ウ)第74号 支給年金支給請求事件 平成28年8月5日付け被告第1準備書面(8頁下から1行目)では、この部分を、『上記第3の2で述べたとおり、厚生労働大臣は、国民年金年金決定通知書(甲第2号証)に、「平成22年1月以前の年金は、時効消滅によりお支払いはありません。」と記載することで、消滅時効の援用の意思表示を行った。』と主張しており、行政庁の外部に対する意思表示であることを自ら認めているので、この付記が単なる事実の通知でないことは証明されたこととなる。年金法の改正により、援用を要することとなった現在、時効の援用については、この付記以外に存在しないので、被告の自白は真実と認めることができる。

第7 結語
 よって、被告の運用は違法であるので、請求の趣旨記載の金員を速やかに支払え。
以上

posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 07:47| Comment(0) | 1 障害年金
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