2017年06月10日

別事件での被控訴人(国)の無茶苦茶な主張


私は、今週の6月6日(火)15:30、未支給年金の時効理由による不支給処分取消の弁論(本人尋問)の応援に名古屋高裁に駆け付けた。

控訴人は、一宮の男性であるK.K氏で、亡母が受け取るべきであった国民通算年金を亡母に代わって請求する事件である。これは単に支分権の消滅時効の問題だけではなく、亡母が生存中手続したときに、市役所の担当者が空期間の発見を逃し、「受給要件に少し足らない」と案内し、事務手続き誤りにより起こった事件である。

私は、控訴人本人の相談に集中的に3時間以上乗っている。控訴人のK.K氏は、地元有名国立大学の工学部大学院を卒業された優秀な技術者である。原審では、色々研究し、本人訴訟をされたのだが、判決理由のトリックに納得できず私の事務所を訪ねられたのである。検討の結果、主張の仕方によっては逆転可能と考えた私は、最適な受任者として、若いころから堀木訴訟に長年係ってみえた神戸の有名なS.F弁護士を紹介したのである。

この事件の担当のM.F裁判長は、偶然、国を負かすことで有名な方で、東京地裁時代には、あの石原慎太郎をして、「国を負かさせる変な裁判官がいる」と言わしめたほどの信念の持ち主である。

私に言わせれば、変でも何でもなく、国の主張が変なだけである。当日私がS.F弁護士からいただいた、この事件の被告の第1準備書面を見ても、「ここまで言えるのか」というほど無茶苦茶な主張が入っていた。

この書面を見て、支分権消滅時効事件で、真正面から争って、控訴人が勝っているのは、私の事件のみであることが被告の主張から確認できたのであるが、問題のカ所は、これを認めると、「多額の給付金が必要となるおそれがあるなど、多大な影響がある」の所である。原文を引用する。

「国年法16条の裁定の存在しないことが支分権についての消滅時効の法律上の障害に当たり、「権利を行使することができ」ないと解されるとすると、これまでの行政実務上、時効消滅しているとして取り扱っていた過去分の年金について支払うために多額の給付金が必要になるおそれがあるなど、多大な影響がある。」

これを、「当り前のことではないか」とだけの意味で終わらせてはならない。これは、法律の解釈論ではないのである。行政機関である被控訴人国は、裁判所に政治的判断をしてくれと脅しているに等しい。裁判官に忖度を求めているのである。

勝手な主張は、ここまでで治まらない。「第1 本件求釈明に対する回答」
の末尾6行を引用する。

「しかしながら、仮に、御庁において、かかる判断は不当ではないとし、上記名古屋高裁と同様、裁定のないことが法律上の障害に該当し、本件国民通算年金について消滅時効が完成しないとの解釈を採用されるのであれば、時効期間の経過について被控訴人側に何らの落ち度が認められない本件においては、基本権についての消滅時効を援用するといった、より厳しい対応を検討せざるを得ない。」

国は、「被控訴人側に何らの落ち度が認められない」と主張し、「より厳しい対応」と言っているが、そもそもその認識自体がずれている。落ち度があるから責めを追及されており、厳しい対応ではなく、無茶苦茶な対応であるから多くの裁判が提起されているのである。

これでは、人質を取った脅迫ではないか。国は、真面な主張をする者に対して、「やむを得ない事情」の判断基準を変えるとでもいうのか。公の機関として最高位にある国の対応として恥ずかしい限りである。

私は、内簡が年金法、会計法、及び民法に違反しているから、これを正すべく争っている。国が重要な権利を公然と侵害していては、最早、法治国家とはいえないから争っているのである。

ところが国は、自らの主張・考え方が正しいから争っているのではない。はっきり言えば、誤っていると認識しているのに、多額の給付金が必要となるから争っているのである。

なぜ、このような問題が発生したのか。事は簡単である。国が現在の運用を正しいことと考えるのであれば、年金の基本権について、やむを得ない事情のある場合には、時効の援用をしない、と決めた時に、内簡ではなく、内簡と同じ内容の法令を立法の手続きを経て制定しておけば良かったのである。

その努力を怠った不都合を国民(受給権者)に負わせてはならない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:23| Comment(3) | 1 障害年金
この記事へのコメント
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◆解釈論ではなく、明文規定に違反。支分権を一言で言うと…

 支分権は「成立した基本権に基づき、実際に、分割して年金の支払を履行すべき義務の生じた 月(即ち、支払期月)の初日」に生じる権利義務関係の通称である。
 法的な性質上、基本権に先行して支部権が成立する等を論議する余地はない。
 支分権先行成立説は、法102条2項(支給の停止中は時効も進行しない。04/30コメント)及び民法146条 (時効の利益、あらかじめ放棄の禁止。06/05コメント)の二つに違反し、無効である。解釈論ではなく、明文規 定に明白に違反している。裁定請求者に対して甚大な損害を与える著しく誤った主張だから、このような事態に至るのです。
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◆少々長文になりますがお許しをいただき、訴訟のご参考となることを願い、以下に詳細を述べます。誤りがあればご指摘ください。

1.最初に年金を支払うべき月は、基本権の成立の直後に到来する偶数月たる支払期月

(1)法16条においては「給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する」とし、給付を受ける権利の成立過程を規定している。その権利を有する者としての裁定請求者からの請求に基づき、厚生労働大臣が裁定することによって給付を受ける権利が成立することを規定する。「給付を受ける権利」を年金における「基本権」と通称する。
 なお、本条における「「その権利」を有する者(以下、受給権者)」を、基本権たる厚生労働大臣の裁定を受けた者と解するのは誤りである。これから裁定請求を行おうとする局面において、請求者には基本権が付与されていないからである。正しくは「その権利」が己が権利を指す文体であるから、裁定請求権と解する他はない。苦し紛れに「障害認定日等の日」(後記「(2)@」)としても、この日には厚生労働大臣の意思の発動たる裁定が見られず法16条や法18条(次項「(2)」)に違反するほか、冒頭のように法102条2項及び民法146条の二つの明文規定に明白に違反した主張となる。

(2)法18条項は、法16条によって成立した基本権の履行方法を規定する。即ち、基本権が成立した場合において、月を単位とする「年金の通算支給期間」を規定し(1項)、支給の停止期間中はその時効の進行も停止し(2項)、更に、支払を履行すべき月を規定している(3項)。基本権の成立自体を規定する根拠条文ではない。

 @ 法18条1項では「年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。」と規定し、支給を開始すべき月を「「これを支給すべき事由が生じた日」の属する月の翌月」としている。
 ここで「これを支給すべき事由が生じた日」とは、障害基礎年金にあっては「法30条1項」「法30条の2第1項」「法30条の4第1項」等に規定する「20歳に達した日」及び「障害認定日」並びに事後重症における「裁定請求日」を言う(以下これらを、障害認定日等の日)。法102条1項に規定する「その支給事由が生じた日」は、時効の進行の起算日を指す。文言は似通っているものの「これを支給すべき事由が生じた日」とは峻別していることを見逃してはならない。
 法18条1項では、基本権の内容たる計算期間の初年月たる「支給を開始すべき月」を規定しているのであって、具体的に支払を履行するための「支払を開始すべき月」を指すものではない。支給と支払の意味するところは異なり、国民年金法においても厳然と区別している。「支払を開始すべき月」は、次記「A」で説明する「支払期月」を指す。

 なお、「法30条1項」「法30条の2第1項」「法30条の4第1項」等の規定は、支給要件を定める規定の一部であって、これらの規定に該当したからといって、基本権が直ちに成立するものではなく、ましてや、支払期月が到来するとの解釈はナンセンスである。
 また、基本権は、厚生労働大臣の意思の発動たる裁定の成立した日をもって成立する。支払期月はその到来(「障害認定日等の日」ではない)という時の経過を条件として成立し、意思の発動を要しない。基本権の成立日と支払期月の到来日との間には必ず時間差が生じる。基本権の成立が必ず先行し、支払期月の到来日が後行する。

 更に、支分権先行成立説は、法18条1項に規定する「年金の通算支給期間」を過去に遡って5年までとする期間制限をする意図が見られる。その実現には法18条中に通算支給期間を制限する旨の項が設けられていることを要するが、規定されていない。時効の規定(法102条1項)は、権利義務関係における権利の成立を前提とし、その成立した権利に対して時効を適用するものであるが、基本権の成立するまでの間は対象となる権利性が成立していないから、この時効の規定によって期間制限を実現しようとする主張は、法102条1項に違反している。

 A 法18条3項では「年金給付は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月までの分を支払う。」とし、基本権が成立して後、具体的に「支払を履行すべき月」となる偶数月を「支払期月」と規定している。基本権の成立後の最初に到来する支払期月が法18条1項に規定する「支払を開始すべき月」となる。更に「ただし、前支払期月に支払うべきであつた年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、その支払期月でない月であつても、支払うものとする。」とし、支払を履行すべき月を経過してしまった後に支払を要することとなった場合の根拠として「支払月」を規定している。

 障害基礎年金における第1回目の「支払期月」の計算期間は、障害認定日等の日の属する月の翌月から基本権の成立した日の直後に到来する支払期月の前月のでの期間となる。従って、基本権の成立した日が遅れる程にこの計算期間は長くなるのが、現在の国民年金法の体系である。
 なお、「支払期月」とは、「支払を履行すべき月」との法的性質を有する。基本権が成立するまでの間に到来する偶数月は、単なる偶数月に過ぎない。「支払期月」が成立するとの解釈は、基本権の履行方法を規定する法18条に違反する。

2. 「支払期月」の到来をもって「支分権」と通称

 裁定が成立した日の直後の第1回目の「支払期月」の初日の到来をもって、厚生労働大臣には基本権を有する者への具体的な支払義務が成立する。その履行期限は支払期月の末日となる(実際には月中の15日に振り込んでいる)。履行遅滞の発生までには時間差があり、支払期月の末日の翌日からとなる。
 この「支払期月」の初日の到来によって成立する厚生労働大臣の支払義務をもって、支分権と通称する。支払期月と支分権とはいわば表裏一体の権利義務の関係にある概念と言える。

 支分権を一言でいえば「実際に年金の支払義務が生じた月(即ち、支払期月)の初日」に生じた権利義務関係のことを指す。裁定の成立した日が平成29年3月9日であれば、この直後の偶数月である平成29年4月が第1回目の支払期月となり、この月の到来をもって、支分権が成立し、独立する。2回目以降の支分権は、以後順次に到来する偶数月たる支払期月の到来した日に順次成立する。

 なお、平成29年3月以前の偶数月は、障害認定日等の日の直後に到来する偶数月を含め、法18条からは支払期月として導かれることはない(前記「1(2)Aなお書き」)。
Posted by hi-szk at 2017年06月11日 07:17
【コメントの追加】

◆「被控訴人側に何らの落ち度が認められない」…無責任主義!遵法精神に欠ける主張
 木戸先生が解説されておられるとおり、裁判では法律違反の是非、事実認定の是非を争う場です。
被告国は、的外れにも「多額の給付金が必要となるおそれがあるなど、多大な影響がある」として財源不足の懸念を理由にして判事様の心を揺さぶっているのですね。
 財源論を持ち出すということは、暗に原告の主張を認めているものと思われます。当然、退けるよう反論していると思われます。
 事情があって裁定請求が遅れたに過ぎない障害者に対しても、国民年金法上は支給ができるように構成されているのですから、本来ならば、年金の支給をしなければならないにもかかわらず、誤った違法な解釈をしてまでも支給を回避するものであり、当局の責任意識が完全に欠落していますね。
 財源の確保については、期間制限の制度を組み込めば済むことであり、案ずる事は何もないですね。それを訴訟の場に持ち込んで、無責任な解釈論で回避しているに過ぎません。また、収納率の向上のための諸々の努力を要するところですが、組織体制からして不十分ですね。
 折角の機会なので、こういった事も組み込みながら反論書を作成したらいかがでしょうか。
Posted by hi-szk at 2017年06月11日 17:34
【コメントの一部訂正です】

Posted by hi-szk at 2017年06月11日 07:17中の「1(2)A上段」中の「法18条1項」を削除し、「(「支給を開始すべき月」とは異なる)」を追加します。
 従って、前後の文章を通して表すと、次のようになります。
 ↓ ↓ ↓
「基本権の成立後の最初に到来する支払期月が「支払を開始すべき月」となる(「支給を開始すべき月」とは異なる)。」
Posted by hi-szk at 2017年06月12日 08:09
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