2017年06月03日

年金受給権者死亡時の遺族の未支給年金請求権


一昨日の夜、あと半年弱で還暦を迎えられる宮崎県の女性のお客様から辛辣なご質問をいただいた。この方は、障害年金の支分権消滅時効問題に関して厚生労働大臣に対する異議申立てを行っている方なのであるが、HTLV−1関連背骨髄症(HAM)のため車椅子を利用しておみえの宮崎県のお客様である。

最近体調が芳しくなく、少し前には、突然倒れて入院されたとのことをお聞きしており、心配をしていたのだが、「夜分申し訳ありません。質問したい事があります。私が死亡したら何もないんですよね?」とのメールでの質問である。

この質問に対しては、未支給年金の遺族の請求権については、国年法第19条等に規定されているので、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹等の受給権者が死亡当時生計を同じくしていたものが、この順序で、自己の名で請求できる旨即答させていただいたが、昨日昼間に、「0じゃなく良かったです。また、入院の予定なので気になって質問しました。」等との返信をいただいた。なぜ入院か、どのくらい入院か等気になるところである。

この方は、私の歳を考えてのことだと思われるが、私の健康づくりをお助けしたいと、何度も何度も地域の産物を送って下さっている心優しい方でもあり、私に大きな力を与えてくださっている方々のお一人である。私は、一刻も早く、朗報をお届けしたく思っているのだが、現状としては、敵が逃げられない裁判(国家賠償を含む)で追い詰め、行政においても同じ結論を出さざるを得ない状態に持って行くより方法がないのである。

辛いことではあるが、現実には、障害年金の裁定請求中に亡くなられる方もおみえであるので、受任者としては、障害年金支分権の消滅時効の問題についても同様のことを考えない訳ではないが、いくら心配のある方についてでも、縁起でもないこのような内容を私から積極的に話すことは控えてきた。

しかし、厚労省の不誠実な対応により、いつまで待たされるのか分からないのが現状である。

比較的初期の段階のお客様で、私がお声掛けをした10名中の7名の方については、G法律事務所等との共同受任により既に2件の事案を東京地裁に提訴しており、3件目についても提訴は目前であるが、事情によっては、他のお客様も、これらの方法の併用についても検討を要するのかもしれない。

年金支分権消滅時効に係る最近の情勢は、私が保佐人・補佐人を務める名古屋高裁の事件が7月11日(火)に第2回期日を迎え、良い方向に向かっている。東京地裁の最初の提訴事件も、5月25日(木)に第3回口頭弁論が済み、7月14日(金)までが、被告の第2準備書面の提出期限で、第4回口頭弁論が7月20日(木)であるので、論争は佳境に入ってきた。そして、改正行政不服審査法の新法適用の2名の方については、審査庁の回答如何によっては、直ちに国家賠償法に基づく損害賠償請求の提訴を予定している。

係争中の事件では、G法律事務所ならではの政府絡みの動かし難い書証を提出し、被告の論理の飛躍や論理矛盾を系統立てて厳しく追及しているので、私は勝訴必至と見ている。

どちらの判決が先になるかは、微妙なところであるが、いずれの事件も被告側の主張は、経験則にも論理法則にも反する主張であり、社会保険関係給付の受給権の発生時期に係る立法政策にも反するものであるので、いくら、国に味方する裁判官が7〜8割以上を占めると言われている下級裁判所の現状を考えても、既存の立法政策は、行政権でも司法権でも変えられるものではないので、原告側勝訴の可能性は極めて高いと考えられる。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 09:40| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
◆「あらかじめ時効の利益の放棄の禁止」(民法146条)にも抵触し、
 支分権先行成立説は違法!
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 当局の時効に対する取り扱いは、「基本権の成立した日(厚生労働大臣の裁定が成立した日)に先駆け、障害認定日の直後から支分権が既に成立(即ち、支払期月が到来)し、時効も進行している」とするものである(以下、これを「支分権先行成立説」と称することとする)。
 しかし、基本権の成立する日までは支給を停止しているから、国民年金法(以下、法)102条2項に違反していることについては、290430に既にコメントした。更に、次のように民法146条にも抵触し無効であり、これによる不支給の措置は違法となることを付け加えたい。
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1.  民法146条では「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」としている(強行規定)。実質的に放棄となる場合も、これに含まれる。
 「あらかじめ」とは、権利の成立した時から時効の成立するまでの間にとられる時効の放棄の措置をいう。事後の放棄については、当条の効果は及ばない。

2.  支分権の成立日は、民法の時効の法理及び国民年金法の関係規定に従えば、基本権の成立した日(厚生労働大臣の裁定が成立した日)の直後から順次に到来する偶数月の初日となるものである。一言でいえば「実際に年金の支払義務が生じた月(即ち、支払期月)の初日」である。裁定の成立した日が平成29年3月9日であれば、この直後の偶数月である平成29年4月が第1回目の支払期月となり、この月の到来をもって、支分権が成立し、独立する。2回目以降の支払期月は、以後順次に到来する偶数月となる。平成29年3月以前の偶数月は、障害認定日等の日の直後に到来する偶数月を含め、法18条からは支払期月として導かれることはない。
 しかしながら、国民年金の担当窓口、当局の発行する文書においては、「支分権は、障害認定日等の日に属する月の翌月に成立し、時効は進行している」、「5年以上遡及する年金については、時効により支給されない」として、支分権先行成立説を採用している。支分権の成立日を障害認定日にまでに遡らせ、前倒しして支分権が成立したものとして時効の完成を早めさせることにより、5年を超える支分権にかかる年金の支払いを回避しようとするものである。
 このような措置は102条2項に反して違法であるが、仮に、違法でないとしても、あらかじめ裁定請求者に、又は、一般に広く周知していることから、実質的に、裁定請求者の意思を拘束し、受忍させる効果を及ぼすこととなっている。
 従って、民法146条に抵触するところとなって無効である。同条の存在を亡失した何等の法的根拠のない初歩的、明白な誤りであり、破綻している。これによる不支給の措置は違法となる。

 当局の説明には、次のものがある(他にも多数存在すると見られる)。
(1) 日本年金機構コールセンター、年金事務所・市町村年金担当窓口の説明
  裁定請求には時効はない。障害認定日が時効の起算点である。
(2) 「障害給付裁定請求事由にかかる申出書」(念書と見られる任意様式)@ *但し書き説明
  ただし、5年以上遡及する分は、時効により支給されません。
(3) 「PDF国民年金法 逐条解説テキスト --厚生労働省」の解説
     (http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000095039.pdf )
 年金給付の基本権としての受給権は、…、障害基礎年金では障害認定日などの国民年金法に定める支給要件を満たした時点で当然に発生します(61頁・検索頁76頁目・「<<参考>>の項「1」」)(*1)。
 支分権としての年金給付の支給は、…。支分権についても、その発生を裁定にかからしめる旨の規定が存在しないから、基本権に基づいて法第18条第1項に規定された期月(*2)から当然に発生します(同頁)。
 基本権及び支分権は、その権利が発生した時(*2)から5年を経過としたときに、個別に時効を援用を行った場合に限り、時効により消滅することとされました(310頁・検索頁325頁、下から2行目〜)。
(コメンテーター付記)
 *1「障害認定日などの国民年金法に定める支給要件を満たした」からといって、その日から債権債務関係における権利が発生するものではない。当事者の意思が発動(厚生労働大臣の裁定)された日から発生する。
*2「法第18条第1項に規定された期月」とは、「これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月」を指し、通算支給期間の初年月を指しているに過ぎず、権利性はない。障害基礎年金にあっては「障害認定日等の日の属する月の翌月」になる。従って、「その権利が発生した時」とは、「障害認定日等の日の属する月の翌月」を指しており、支分権先行成立説に基づく解説となっている。
Posted by hi-szk at 2017年06月05日 09:33
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