2017年05月13日

民訴法第60条の補佐人


私は、一昨日、名古屋高裁民事4部で民事訴訟法第60条による補佐人を認めらせた。平成27年4月1日改正施行の社労士法に基づく「補佐人」とほぼ同じ位置付けである。

同法同条には、以下の規定がある。
 当事者又は訴訟代理人は、裁判所の許可を得て、輔佐人とともに出頭することができる。
 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
 補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更生しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。

対して、改正社労士法の規定は以下のとおりである。
第2条の2
 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。
 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更生したときは、この限りでない。

比較してみると、社労士法では、当事者ではなく、弁護士である訴訟代理人が同伴者になり、裁判所の許可がなくても、原告等による選任届があれば有効になる点が異なるが、補佐人のした行為の効果は全く同じである。

私は、名古屋地裁の第1審では、これを知らなかったので、傍聴席から原告本人にサインをお送っており、原告本人には大変な気苦労を掛けてしまった。ところが、補佐人になるには、そのことに精通しており、法令の趣旨に沿った一貫した考え方が備わっておれば、難なくなれるということである。

社労士法では、上記の力が備わっていなくても、形式上は可能ではあるが、実力がなければ、全て受任弁護士だけで事が足りてしまう訳だから、何が大事かといえば、何と言っても、そのことに関する「実力」である。

私の場合、障害年金支分権の消滅時効の問題については、全国の多くの弁護士が全敗であるところ、唯一、名古屋高裁で逆転勝訴し、最高裁において確定させている。

そして、朝日新聞の「私の視点」に投稿記事が採用され、日本法令の年金相談第6号には、8頁の執筆依頼に対して、9頁を割いて、特集に掲載されており、月刊「みんなねっと」では、平成27年8月号から11月号にわたって、この事について連載させていただいているので、許可条件としては、十分であったようだ。

私は、弁護士ではないので、このような民事訴訟法の基本的事項についても、つい先日までは無知であった。従って、異議申立て中の約25名のお客様の中には、早期の決着を切望しておみえの方もみえるのだが、弁護士委任するときの高額な着手金がネックになって実行に移せないでいた方もみえたのである。

しかし、これからは、距離的な制約がクリヤーできれば、原告本人だけでは無理な訴訟も、補佐人の制度を活かして提訴に踏み込むことも可能かもしれない。

ところが、社労士法で許されているのは、弁護士である訴訟代理人とともに出頭する場合であるので、民訴法第60条で許可を得たとしても、社労士がこれを業として行っても良いという許可ではない。現在私が本人訴訟支援を行っている名古屋高裁の事件は、成年後見制度の保佐人としての立場で、無償で行っているので何の問題もないが、受給権者には様々な事情があるとはいえ、私が、全ての関係者についてこれを無償で引き受けられるような環境にない。

従って、更なる社労士法の改正を進めていただき、「弁護士である訴訟代理人とともに出頭」の部分を、民訴法第60条同様、「当事者とともに出頭」に改善していただけることを切に願うものである。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:44| Comment(0) | 1 障害年金
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