2017年04月15日

厚労省主管課長への働きかけ(2)


先週の予告どおり、第2弾を公開します。あってはならない違法な却下の処分が断行されたので、少し厳しい内容であり、長文となっていますが、興味を持たれている方々が多くおいでになるので、敢えて公開します。


平成27年11月8日

違法行為の積み重ねの断絶は急務であることについて

厚生労働省年金局
事業管理課長 様
申立人 N.F

上記申立人成年後見人法定代理人 木戸 義明 ㊞

社会保険労務士 木戸 義明 ㊞

前略 平成27年10月30日(土)、代理人の不在につき1日遅れで、平成27年10月28日付の異議申立てを却下する旨の決定書を受領した。この決定内容は、事実を誤認し、行政不服審査法(以下「行審法」という)の解釈を誤って適用したものであり、同法の目的に沿うものではなく違法である。申立人本人及び代理人としての両面の立場から、本書により警告をさせていただく。
 社会保険労務士である私(以下「私」という)は、当初、この異議申立ての手法を知らずに、以前は、日本年金機構理事長及び権限を有すると教示された厚生労働大臣への支払請求をしたり、社会保険審査官及び社会保険審査会法に基づき不服申立てをしていたが、2014年7月号の月刊社労士「行政不服審査法と社労士の事務代理業」という記事を読み、現在の方法で実施するようになった。
勿論、実施に当っては、連合会の責任者にも年金支分権の消滅時効問題という具体的事案を照会し、かつ、同法の主管省である総務省にも同様の照会をして、この異議申立てが適法であるとの確認を受けた後に、実施しているものである。
 以下に、なぜ決定内容が違法かの理由を述べる。
 なお、今回の決定が違法である旨の警告後、同様の行為が繰り返された場合は、違法であることを承知のうえ故意に行われたものと解釈して、私は、以下の行為を実施する。
 @ 貴職及び起案者に対する国家賠償法に基づく損害賠償の請求
A 行政事件訴訟法が定める民衆訴訟の提起
 B 「首相官邸に対するご意見・ご要望」への投稿
 C 内閣府「国民の声」への投稿
 D 総務省「提案受付フォーム」への投稿
 E 貴省「国民の声募集送信フォーム」への投稿
 F 年金事業管理部会への訴え

※ 先輩社労士には、どちらかというと、興味本位の某週刊誌に登場し、年金に関する問題点を種々指摘している先生もいるが、私にその積りはない。その先生からは、その週刊誌への紹介を打診されたが、私は、お断りしている。
  私は、この問題については、真摯に真面目にコツコツと有るべき姿を求め対処したく思っているので、貴職に置かれても、誠意をもって、同様の姿勢で対応願いたい。     草々

却下が違法である理由
第1 決定書の引用する判例に基づいても処分性のあること

   決定書の引用する判例は、事案が異なり、かつ最近の最高裁判例と傾向が異なる古い判例であるが、仮に、この判例の考え方に基づいて本件の処分性を考察した場合においても、本件の時効消滅理由不支給通知には処分性があり、この決定は違法である。
   引用判例では、「その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」と判事している。
   本件時効消滅理由不支給通知は、厚生労働大臣という行政庁によってなされ、「通知・勧告」が処分性ありとの最高裁判例は相次いで出されている。そして、その通知によって、本来受給権を有する全期間について全額支給すべき年金を、一部不支給としており、これは、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ことにズバリ該当する。
   法第2条の定義においても、『「処分」には、各本条に特別の定めがある場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、その内容が継続的性質を有するものが含まれる』と規定されており、この通知は、公権力の行使に当たる事実上の行為であり、この通知の効力は、行政処分又は判決により取消されない限り継続されるものであるので、法の定義からいってもこの通知は、行審法の対象となる。
   なお、継続的性質の有無については、消滅時効そのものは、一般的には、一瞬にして効力が生じるものであるので、継続的性質を有するものではないとの見解もあろうが、その見解に従った場合でも、例えば、民法第158条の規定によれば、時効の完成は、成年後見人が就任してから6カ月間は時効の完成が猶予されるものであり、この適用に関する解釈については、時効完成直前の時点で成年後見人が就任しておらず、後日就任した場合にも類推適用されているものであるので、矢張り、継続的性質を有するものということになる。
   更に、これは、会計法第30条(現在では、国年法第102条)に基づいて行われていることであるので、「法律上認められているものをいう」とする範疇にも入る。
   考察の対象を拡げて、他の要件について検証した場合も、他の要件についても全て、行審法の定める「処分」の定義に該当する。
   ところが、本件処分庁は、この法律で認められている取扱いの解釈を誤り、違法に不支給としているのであるから、本件は紛れもなく行審法の対象となる「処分」である。

第2 決定書の内容には事実誤認及び法解釈誤りがあること
 1 決定書前文にさえ事実誤認が認められること

   決定書前文には、「支分権の消滅時効の起算日に関する異議申立てについて」とあるが、申立人は、起算日だけについて異議申立てをしているものではない。勿論、起算日については、中心であり大きな問題ではあるが、本案では、他に、見逃せない複数の問題点を有する。この問題を、起算日以外について大別すれば、以下のとおりである。

 @ 現在の運営を正当化できる根拠は、内簡のみであるが、これは法令ではなく、法令の規定に抵触しており、同様の趣旨を定める実定法は存在しないこと
A 国は、独立した権利である支分権の消滅時効の問題について、基本権に対する継続5年間の権利不行使を、支分権に対する権利不行使と置き換えて誤った解釈をしていること
 B 障害年金は、停止条件付き債権と同様の評価をすべき性質があるので、裁定請求時には、支分権は発生していない(権利行使できない)こと
 C 本件の支払期月は、国年法第18条3項ただし書であるので、裁定請求時においては、期限未到来の年金であること
 D 国は、この年金は、会計法の規定に基づき、発生から5年を経過するごとに自動的に時効消滅すると主張しているが、法第31条1項の「時効の援用を要せず」の問題は、消滅時効完成要件を満たしてからの要件であるので、これを満たしていない本件では、会計法第31条1項は機能しないこと
 E 申立人は、主位的請求理由のほか、仮に主位的請求理由が認められないとした場合でも、民法第158条の類推適用により消滅時効は完成していない旨主張し、この考え方は国も容認している旨主張しているが、審査庁はこの主張を見落していること
 2 申立人は、「裁定の結論が出るまでは、支分権について権利行使し得る状態とは言えないこと」だけを問題としていないこと
   決定書、「異議申立人の主張」の冒頭から3行目の句点までにおいて、「裁定の結論が出るまでは、支分権について権利行使し得る状態とは言えない」と申立人が主張したと述べるが、これも事実誤認である。
   理由は、上記1と同様であるが、申立人の主張がそれだけであるとの認識では、結論にも大きな影響が出てしまう。
 3 申立人は、「消滅時効の完成により年金の支払いが行われなかったこと」に対して異議申立てをしているものではないこと
   決定書「決定の理由」冒頭では、「消滅時効の完成により年金の支払いが行われなかったこと」に申立人が異議を申立てているように述べられているがこれも事実誤認である。
   申立人は、時効が完成している年金について支払を求めているものではない。多数の理由を挙げて、消滅時効が完成していないことを証明した後に支払を求めているものである。
   本件の決済をする者も、このような誤った説明を受ければ、誤った判断をしてしまい、異議申立てに理由がないと決済されてしまう。本事案で大切なところは、申立人が「受給権が存在する」とする理由の正否である。この誤表示が、事実誤認によりなされたものか、故意になされたものかは分からないが、もし、故意に行われたものだとしたら、私は、官僚の保身的な行為を許す訳にはいかない。
 4 決定理由では、「行政庁の処分」を誤って解釈し、事案の異なる判例を引用していること 
決定書2頁「決定の理由」中ほどでは、法の定める「行政庁の処分」が誤解釈されているが、行審法第1条1項は、「公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を図ること、及び行政の適正な運営を確保すること」を目的としており、第2条では、「公権力の行使に当たる事実上の行為で、その内容が継続的性質を有するもの(以下「事実行為」という)が含まれるものとする」と規定しており、本件時効消滅不支給通知も、この規定に該当し、行審法の対象となるものである。
   この点については、近時の最高裁判例は、その対象を広く解釈している傾向にあり、最判平成24年2月3日民集66巻2号148頁土壌汚染対策法第3条2項(有害物質使用特定施設使用廃止等)の通知の処分性が肯定された判例等多数ある。
   一方、審査庁の引用した判例は、いわゆる抗告訴訟の対象たる行政庁の公権力行使に当たる行為の要件に係る判例であり事案が異なる。
   処分性ありなしのこの判断について決定的要素となるのは、相手方が、権利義務に直接変動をもたらされるか、もたらされないかの点にあるものとされているところ、本件においては、平成13年3月から受給権があり、同年4月分から受給できる旨の法律の定めであるので、この不支給通知がなければ、当然、その期間に係る全額が支給されるべきものである。ところが、現実には、不支給通知により一部の支給が制限されており、それを取消す旨の新たな行政処分、又は判決等がなければ支払われないのであるから、この不支給通知が直接変動をもたらしたことは明らかである。
 5 会計法第31条1項を理由に行政処分性のないことは証明不可能であること
   決定書「決定の理由」2頁下から3行目から3頁3行目までにおいて、決定の理由の一つとして、問題の支分権について、会計法第31条1項を理由に「あらためてこれを支給しない旨の行政処分をする必要はないもの」であるから、不支給の通知は、行政庁の処分ということはできないと説示している。それが本当であれば、不支給の通知文自体が不要である筈である。
   この規定の「援用を要せず」の部分は、既述のように、本件では機能しない条項であり、現実に、行政庁から不支給の通知がなされているのであるから、本件に、行政処分性がないとはいえず、行審法上の行政処分に当ることは明らかである。
 6 「決定の理由」では、支払期月の条項を誤解釈していること
   決定書「決定の理由」3頁中ほどで、「支給事由が生じた後、支払期月の到来という事実が加わることにより、各支払期月ごとの支分権が生じているものと考えられる」と述べるが、本件では、裁定請求時に、既に支分権が時効消滅しているのか、していないのかが問題になっているところ、その時点では、「支払期月の到来という事実」はあり得ず、審査庁のいう支払期月は、架空の支払期月である。本件の正当な支払期月は、法第18条3項ただし書であり、それ以外の支払期月はない。このような事実に対しての不支給通知であり、当然に、行政処分性はある。時系列の図表を作り、審査庁の説示に無理のあることを確認していただきたい。
 7 基本権について裁定を受けていないことは、法律上の障碍に該当すること
   決定書「決定の理由」3頁下から13行目から同頁下から9行目までにおいて、「基本権について裁定を受けていないことは、法律上の障碍に該当しない」と述べるが、本村年金訴訟上告審判例(H7.11.7)最高裁判例解説が述べているように、裁定が確認行為であったとしても、これは、行政処分であり、これを経なければ、支分権を権利行使できないのであるから、裁定を経ていないことは、支分権の消滅時効進行上の法律上の障碍である。
   そして、裁定という行政処分と一体としてなされた行政庁による不支給通知には、当然に、行政処分性がある。
   なお、ここでは、審査庁の表現に合わせて、敢えて、「消滅時効進行上の」と記載したが、私の主張の本旨は、そもそも裁定前には、支分権の時効の進行はあり得ないというものである。
 8 本件不支給通知は、行審法の対象となる「行政庁の行為」に該当すること
   決定書「決定の理由」4頁において、この項の結論として、時効消滅不支給通知は、行審法の対象となる「行政庁の行為に該当しない」と述べるが、行審法では、事実行為も処分と位置付けており、既述の第1、及び第2の理由により、これが行審法第6条による適用対象となることは明らかである。

第3 申立人の主張内容の誤認識・無認識は理由附記違反となること
   上記第2の1〜3、及び6、並びに予備的請求理由については、申立人の主張内容自体、及び事件の全体像が審査庁に認識されていないのであるから、当然、これらについては、理由附記(法第41条1項、第48条)がなく違法である。

第4 本件受給権は、国民の重大な権利であること
 障害年金は、ほとんどの受給権者にとって、いわば命綱である。
   法制上も、これは、憲法第25条2項に基づき具体化した権利であり、年金法では、譲渡、担保提供、差押えも禁止され、更に公課(ここでは老齢年金との区別も明らかにされている)まで禁止されているほどの重要な権利である。
   このような重大な国民の権利を、違法に制限することは、法治国家において許されることではない。また、既に具体化した権利の制限は、憲法第29条1項の財産権の侵害にも当り、憲法違反の疑いが濃い。約45年前に、内簡により運用を始めたことが、違法状態(立法の機能の無力化)を作ったのであるが、申立人が縷々この運用の違法性を証明しているにも拘らず、処分庁がこれを無視して自らの運用を正しいことと信ずるのであれば、この内容をそのまま立法の手続きにおいて決めなければならない事柄である。

第5 救済を要する対象者のほとんどは、経済的弱者であること
 行審法の目的は既に記述したが、障害者は、稼得能力を失くしたり減退させている者であるので、特別に恵まれた極一部の者を除き、ほとんどが経済的弱者である。その様な者は、裁判における手数料(収入印紙代)及び予納郵券代金を工面することもできないのが現状である。
このような者に、不満があれば「訴訟を提起すれば良い」という態度は、極めて冷酷な取扱いであり、私は、本件及び類似事件は行審法で審議するのがベストの方法であると考えており、近く施行される改正行審法の運用では、外部の有識者を含め審理員を置くことも検討されているので、従来のような一方通行的な審議ではなく、不合理は是正され易くなるので、行政による不服申立制度を有効に活用させるべきであると確信している。
経済的弱者に、「不満があれば提訴しなさい」という行政の姿勢では、行審法の目的は達せられず、権利の救済を求めること等を諦めなさいと言っているに等しい。その意味で、障害年金の受給権者への行審法による権利の救済の道を開くことは、極めて重大な意味を持つものである。
加えて、違法又は不当に本来支払うべき年金を不支給としていることは、同じ貴省の中で賄われている生活保護費を不当に増幅させていることになり、縦割り行政の悪い面が露骨に現われている身近な例となっている。
私は、貴庁が再三にわたり裁定請求を促している老齢年金についてまで、同じ法律の条項下にある事柄だからと、違法であると主張するものではない。
障害年金と老齢年金の実態の違いは、一部の下級裁判所の裁判官等には認識されていない現状であるが、この違いは明白であり、これを十分に承知している貴省に対しては、障害者の実態を考えた取扱いを真剣に考えていただきたいと切に願うものである。

第6 障害年金については不支給の法的根拠が全くないこと
   本題の事件そのものについても少し触れる。国は、裁定請求さえすれば、直ちに受給に結びつくとの論理により、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使とみなして現在の運用を正しいこととしているが、既述のように、この論理が例外的に認められるとしても老齢年金の場合にしか成り立ち得ない考え方である。
   平成24年4月20日の名古屋高裁判決では、縷々主張する国の見解を一切採用していない。これが、裁判官の良心に基づいた正しい判断であり、平成27年6月17日判決の名古屋高裁判決においては、苦し紛れに、「裁定を経ていない支分権が抽象的な権利にとどまるとはいえない」(4頁1行目)、とか「しかし、同法18条3項ただし書は、同項本文所定の支払期月が経過したものの、裁定手続の遅延等によって未払になっている年金や、失権や支給停止が生じた場合における直前の支払期月後の年金については、同項本文所定の直近の支払期月を待つまでもなく直ちに支払う旨定めたものであるから、…」(4頁下から11行目)と、最高裁判例は当然のこと、今まで、被告側も主張しておらず、どこの裁判所も判事していない全く正反対の見解を出したり、被告側の主張していない事実を判決理由としたり、弁論主義のテーゼに反する違法な判決を下している。
   これらは、裁判官の自らの保身を考えた、意図的に政府寄りの判決を下したもの(ニッポンの裁判、瀬木比呂志著、講談社現代新書、127頁、第4章 裁判をコントロールする最高裁判所事務総局参照)であり、貴省の誤った決断が、裁判の信頼の問題にまで影響を及ぼしている。
   現在の運用は、いずれの見地から見ても、法改正を要するので、立法の手続きを経て的確な運用をしていただきたい。
以上


結果、その後は、却下は一件もない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:16| Comment(0) | 1 障害年金
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