2017年03月04日

訴訟救助の申立て


私が、法定代理人成年後見人として、神戸地裁で争っていた障害年金支分権消滅時効問題の事件についても、名古屋地裁とは異なり、7回もの期日を設け十分に議論したにも拘らず、矢張り、重要な書証である最高裁判所例解説には触れず、判断の資料としないという手法で原告の請求を棄却した。

早速、原告本人と打合せをして、控訴をしたのだが、予納郵券は納めてあるものの、収入印紙(国の手数料)が51,000円全額未納であることを最近知った。

原告本人からは、最低限度でしか納めてない旨は聞いていたが、担当書記官によると全額未納という。

この場合、裁判所から補正命令が出て、2週間程度の間に納めないと却下されてしまうとのことである。神戸家裁の担当者とも相談したが、訴訟救助の申立ての方法もあるが、これは、成年後見人である私の判断することであると私に全責任を負わされた。

ここまで来て、こんな事由で敗訴確定はあり得ないことであるので、原告本人とも相談の上、訴訟救助の申立てをすることとしたが、様式も決まったものはないとのこと。

勿論、勝訴見込みがなければ棄却されてしまうが、法テラスの手続きとは違って、簡便迅速に処理されるので、急場凌ぎにはもってこいであった。

法テラスとは違って、弁護士の着手金等は対象外のようで、収入印紙代と予納郵券代が救助の対象であるようだ。一般の人が、余り利用する機会はないかもしれないが、以下に今回提出した文面を載せた。

勝訴見込みの表現の中から、国の運用の違法を見付けて、大いに議論していただければ幸甚である。


平成29年(行コ)第○○号 未支給年金支給請求控訴事件
控訴人 (第1審原告) ○○ ○○
被控訴人(第1審被告) 国 同代表者法務大臣 

訴訟救助の申立書

平成29年3月1日

大阪高等裁判所 第7民事部 御中

住所 ????????????????
住民票上の住所 ????????????????
原告  ○○ ○○
電話番号 ???−???−????
携帯番号 ???−????−????

住所 〒471−0041 愛知県豊田市汐見町 4−74−2
原告訴訟代理人 法定代理人成年後見人  木戸 義明 ㊞
電話番号 0565−32−6271
携帯番号 090−7317−0016
FAX 0565−77−9211



 上記当事者間の上記事件につき、控訴人○○○○は、障害のため就労ができず、収入は月額約6万5千円の障害基礎年金のみであるので、違法に棄却された原審への控訴に対して貼付すべき収入印紙代が工面できない窮状にある。

 ついては、下記理由により、本申立てをさせていただきました。



 申立額 5万1千円(収入印紙額相当額)

 逆転勝訴の可能性 高いと判断しています

 上記理由
(1) 争点1について
 ア 原告側の主張の正当性について
原審は、争点1の中心となる論点、詰り、裁定の法的性質について、最高裁判所判例解説(甲第22号証)が説示している書証を、裁判官が恣意的に証拠選択をして、これを判断の資料から除外していること。(別紙1 控訴理由書(案)参照)
  A 上記書証の要点を補足する
a 国年法第16条の裁定の法的性質は、裁量権のある行政処分である。従って、この処分の前には、具体的権利は発生していない。勿論、消滅時効が進行することはないこととなる。
 当然発生型の行政処分は、客観的に受給要件を満たした時が行政処分となり、その後に、行政庁が何らかの介在をしても、この種の行為は、手続的な要請に基づく事実上の行為であり、行政処分ではない(勧告的、仲裁的手段にすぎない)と説示している。被控訴人及び原審は、上記@の裁定を、この当然発生型の行政処分と誤認している。
従って、最初の支分権は、基本権の発生した翌月から発生し、その翌月が消滅時効の起算点となり、順次2ヵ月ごとに同様である、と誤った抽象的観念論に基づき誤った主張をしている。
 上記の既存の立法政策は、司法権では変えられない。
  B 甲第22号証の説示内容が真正であることを証明していく
原審で無視された書証が正しいことを説示していること、及びこの説示が全て運用実体・実態とも整合していることを、本件代理人及び厚労省の指定代理人を人証申立てして、証明していく。(別紙2 陳述書(案)、別紙3 尋問事項書(案))
 イ 被告側の主張及び原審の説示が違法であったことについて
    上記両者は、障害年金についても、権利の発生要件、支払時期、及び金額等の法律の規定が明確であること及び裁定請求しさえすれば年金が支給されると主張又は説示している。
しかし、これがいえるのは、老齢年金だけであり、障害年金についてはいえないことは明白である。また、原審は、障害年金について、「他の種類の年金と差異を設けていない」(16頁下から12行目)と判示しているが、最も重要な支給要件について大きな違いがあることは明白である。(26条VS 30条)
この誤判断が、原審の違法を導いている決定的要素である。本件障害年金の問題を事情の異なる老齢年金と一緒にされ、違法に支給制限されるという理不尽は、どのように考えても許されることではない。

(2) 争点2について
これは、評価(認定)の問題であるので、本来、裁判所の判断に従うべき性質のものである。
ところが原審では、主治医の判断を無視して、かつ、本来不要である「本件追記」を、特別に定義してまで、原告側に不正があったかの如く誤った評価をしている。
ほかにも原審は、成年後見人の支援体制について、「未成年の一人息子、直人を成年後見人にすることができた」旨の被告の考慮を欠いた主張をそのまま認めたり、「時効停止及び期間についての被告の予見可能性を奪うものである」旨の主張をそのまま認めたりしているが、いずれも理由がない。
前者の誤りは、余りにも酷いものであり無責任極まりない。後者については、各年金事務所は、裁定請求時に「年金請求の遅延に対する申立書等」(甲第46号証)を提出させているのであるから、自らの違法に気付いており、このような主張の通らないことは明らかである。
そもそも、被告も原審裁判官も、重度の統合失調症がどのようなものかについて分かっていなかった。この傷病・障害がどんなに大変なもので、ほとんどの場合治らないものであることは、本件でいえば、主治医と本件代理人が一番よく知っていることである。いくら波があるからといって、本質的に急変するものではない。
端的にいって、本件治療経緯から見ただけでも判断可能である。
原告本人は一貫して行動は滅茶苦茶で、当時財産を管理できなかったことは明らかである。
本件で民法第158条1項が類推適用されない理由は存在せず、こんな場合こそ類推適用して重大な権利の侵害を救済しなければ、本条の立法趣旨にも合わなくなってしまう。

4 控訴人の経済的困窮理由疎明資料
  別紙4 年金の振込みを受けている預金通帳(写)のとおり

以上


追伸 添付資料である別紙1〜3については、最近のブログで類似案件について紹介しているので省略した。
   別紙4については、本論との関連性がないので省略した。
   関係書証については、紙面の関係上割愛した。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:57| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
【コメント対象部分…その1】
b 当然発生型の行政処分は、客観的に受給要件を満たした時が行政処分となり、その後に、行政庁が何らかの介在をしても、この種の行為は、手続的な要請に基づく事実上の行為であり、行政処分ではない(勧告的、仲裁的手段にすぎない)と説示している。被控訴人及び原審は、上記@の裁定を、この当然発生型の行政処分と誤認している。
【コメント】====================
(訴訟において、些末な学術的解釈論議は避けるのが得策である。)
「行政処分」といえるような権利者の意思の発動を伴う公権力の行使は、法律の根拠に基づき行われるものであって、「当然発生型」の範疇に属することはあり得ない。災害時の物資の支給や交通規制など単なる軽易な「行政行為」という程のものに限定される。
 国民年金の給付を受ける権利(基本権)は、法16条においてその成立過程が明確に規定されており、手続的な要請に基づく事実上の行為であるか否かにかかわらず、「裁定」によって決することとしている(法16条)。曖昧模糊として裁判官が裁定の学術的特質を判断しなければならないような余地がなく、当条の初歩的かつ著しい解釈の誤りである。
====
 また、「裁定」とは、「裁き定める」ことであり、裁定権者の公権力による意思の発動行為である。
 「行政不服審査法」においては、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くこととし(同法1条)、その対象になる処分には、公権力の行使に当たる事実上の行為を含むものとしている(同法2条)。現に、厚生労働大臣が発する国民年金の裁定通知書には、審査庁等の教示義務(同法57条)によってその旨を教示しているから、単なる「当然発生型の行政処分」ということはできない。「行政処分ではない(勧告的、仲裁的手段にすぎない)」とする解釈は、行政処分の特質を亡失しており、同法の著しい解釈の誤りである。
 以上のように法16条及び裁定行為にかかる著しい解釈の誤りがあるから、勝訴は確実である。

【コメント対象部分…その2】
従って、最初の支分権は、基本権の発生した翌月から発生し、その翌月が消滅時効の起算点となり、順次2ヵ月ごとに同様である、と誤った抽象的観念論に基づき誤った主張をしている。
【コメント】====================
(この段落は、基本権の成立した日を巡る解釈が争点になっており、原告は「裁定通知書を受理し た日に基本権が成立する」、一方被告国は「障害認定日に基本権が成立する」とし、これらのいずれかの日の直後に到来する支払期月の初日の到来をもって最初の支分権(第1回目の支分権)が発生するとの前提で以下に述べる)
 年金の受給権のような権利は、権利者の意思の発動を待って成立するが(国民年金法[全訂社会保障関係法2](編者:有泉 亨/中野徹雄、筆者:喜多村悦史)44頁10行目)、法16条においても給付を受ける権利(基本権)の成立過程を規定しており、意思の発動として厚生労働大臣の「裁定を受けて初めて年金の支給が可能になる旨を明らかにしたもの」(最高裁平成7年11月7日平成3年(行ツ)第212号第三小法廷判決、2頁11行目)であるからことは明白である。
 一方、障害認定日においては、基本権の成立にかかわる何等の意思の発動が見られず、従って、基本権は成立していない。「障害認定日に基本権が成立する」とするのは、著しく民法の時効の法理及び国民年金法の解釈を誤っていると言わざるを得ないから、勝訴は確実である。
=====
 そもそも、年金支給は、法16条の規定によって行われた裁定の日(基本権の成立した日)の直後から支給を開始するものである。
 裁定はしたが、支給は過去の日から行われるべきであった。従って、一方で、消滅時効は進行しているとしつつ、他方で、支給を法的根拠もなく事実上停止していることを由しとすることは法曹界の論議として成り立つものではない。支給を停止したら、時効の進行も停止するのが基本的な法理論である。
 支払期月は、この基本権の成立した局面において、一定の期日ごとに継続して支払を履行する月として、二ヶ月ごとに到来する偶数月とすることを定めたものである(法18条)。支分権は、基本権に付随して成立する所以である。仮に、基本権の成立する前から支分権が成立すると主張は、これから支払を履行しようとするときに、過去の日を指し示すことは的外れという外はなく、民法の時効に関する諸規定に著しく違反した解釈である。
 基本権の成立日は裁定通知書を受理した日であるが、その権利の進行は翌日からとなる(民法140条本文)。基本権の成立の後、支払期月の到来するまでは必ず時間差が生じるから、支払期月の初日の到来をもって年金を受給する権利が成立し独立する(民法140条但し書き)。この権利の独立をもって支分権と通称している。履行期限は月末となる(民法141条)。消滅時効の進行は支払期月の初日(支分権が成立した日)をもって権利を行使できる日となるから、この日を起算点として進行する(民法166条1項)。
支給が全額停止されると、消滅時効の進行も停止される(法102条2項)。
Posted by hi-szk at 2017年03月06日 10:20
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