2017年01月21日

流石 プロ中のプロ


本日は、前々々回のブログで紹介した昨年12月27日(火)東京地裁提出の訴状で、私が、流石、プロ中のプロと感心した点について所感を述べる。

何がそんなに素晴らしいのか。お読みいただかないと分からない話かもしれないが、今までの訴状とは違った2点について、今後の議論に大きく貢献すると思われる部分を紹介する。

一つは、始めの方で、年金の種類について法制から説明し、老齢年金と障害年金とでは、要保障事由が異なることを具体的な条文を示して明らかにした点である。(後記、「差異はない」旨の部分関連)

今一つは、原告の主張に続いて、被告の「予想される反論」を予め挙げて、これに対する不合理の理由を5点に絞って述べたことである。

今までの判決を見てみると、本案支分権の消滅時効の取扱いについて、平成28年5月12日付福岡高裁の判決では、老齢年金と障害年金の違いを初めて認めているが、他の下級審判決では、「国年法では、年金給付を受ける権利の発生及び行使の方法について、障害年金と他の種類の年金との間に差異を設けていない。」と断言しているのである。

ここで押さえておけば、この議論に発展すれば、障害年金については、基本権と支分権を混同した抽象的観念論は通用しなくなり、被告国側の唯一の屁理屈さえ崩壊するのである。

「予想される反論」については、従来は、精々、「予想される争点」として、挙げていたに止まるものを、今回は、具体的に明確にその内容まで挙げていただけた。たぶん、我々との協議の後に法律事務所のボスが、挙げておいた方が良い旨を提案し、関係弁護士の協議で記載したものと思われる。

今まで、地方の裁判所では、この事案の請求の正当性すら正しく認識できず、「何を言っているのだ!?」、「名古屋の事件とは異なる事案ではないのか!?」といった感じの裁判長もいたが、これを予め述べることで、一流の弁護士の目で見ても、現在の運用が不合理であることが強く認識され、どこがどのように不合理であるのかが、議論をし始める前にはっきりしてきて、焦点を絞って議論できることに繋がるように感じられる。

今まで、国を勝たせてきた下級審判決の判決理由は、以下のとおり、判を押したように同類のものである。読者の方は既にご存知のように、これは老齢年金の一般的事情の場合にのみ許される曲論であり、障害年金について考えた場合、前提条件とされた事実までが、事実誤認に基づいているものである。

「このような裁定の法的性質に照らすと、裁定前における支分権は、現実に年金の支給を受けることができないという意味では具体的な権利ということはできないが、権利の発生要件及び内容(年金給付の支給時期、金額等)は客観的に定まっている以上、客観的に年金給付を支給すべき事由が生じた後は、抽象的な権利として順次発生しているものと解すべきである。そして、受給権者は、客観的に年金給付を支給すべき事由が生じている場合には、裁定請求をすることができ、この裁定請求をしさえすれば、裁定を受けて年金給付の支給を受けることができる。そうすると、基本権について裁定がされていないことは、支分権の行使について法律上の障害には当たらないというべきである。」
 と判示する。

この読んでいて恥ずかしくなるような判決文の中には、3つの明らかな誤りがある。
@ 裁定の性質は、「単なる確認行為ではなく、確認行為型の裁定は、裁量権のある行政処分である」こと
A 障害年金については、「権利の発生要件及び内容(省略)は客観的に定まっていない」こと
B 障害年金については、「裁定請求をしさえすれば、裁定を受けて年金給付の支給を受けることができる仕組みになっていない」こと
である。

「B」については、障害年金については、原告が、裁定請求をしても支分権の行使が実際に期待できないことがあるからと主張していることに対して、「消滅時効とは、権利の不行使という事実状態が一定期間継続した場合に、権利の消滅を認めるという制度であるから、支分権の消滅時効の起算点を論じるに当たって、年金の支給要件を満たしている者を前提とすべきである。」と嘯いている。机上の模擬討論ならこの考え方で進めてもよい。

しかし、事は、現実の法的対処可能性の問題である。原告は、初めて裁定請求するのに、既に支分権の消滅時効が完成しているという取扱いに異議を唱えているものであるので、この説示は、自己満足だけで、意味をなさない。この問題の解決には、一番肝心な裁定請求時に既に支分権の内容が分かっている必要がある。

執行権を持つ者は強いもので、裁判官は、上記の抽象的観念論を正しい解釈と心証を形成しているのであるから、今後これを誤ったものである旨修正していくことは容易なことではない。

ほとんどの下級審の述べる推論には、必ず論理の飛躍や論理矛盾が存在するので、これをいかに分かり易く説明していくかにかかっている。しかし、東京には、優秀な裁判官が集まっていると聞いているので、実体の合わない障害年金についてまで、読んでいて恥ずかしくなるような判決文は書かれなくなるかもしれない。もし書かれれば、共同受任弁護士事務所のボスのブログ「N.Gが斬る」で発信してくださり、色々なところで取り上げられることになるものと期待している。この期待は、被告国側の理不尽な主張に対しても、同じである。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 16:43| Comment(0) | 1 障害年金
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