2016年10月29日

民事訴訟の証明責任の誤解!?


10月8日のブログで紹介した岐阜地裁の判決文の結論部分を引用する。「・・・、すべて当然に時効により消滅しているというべきであるから、他の争点について検討するまでもなく、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。」というものである。

ここで少し臍を曲げて考えてみよう。裁判での証明責任は、原告及び被告の双方にあり、そのいずれもが自己の主張の正しいことを証拠に基づき証明することになる。この証明責任の問題は、双方が証明を尽くしてもなおかつ真偽を確信できない場合に、どちらに証明責任を持たせるかの問題である。

私が、この事件の遣り取りを客観的に見ると、議論の核心部分である前提事実自体を双方が間違って認識しており、この間違った前提事実を正しいこととして議論を深めているので、なんとも論評のできないところであるが、本日は、冒頭の「原告の請求には理由がない」に焦点を絞り、話を続けたい。

裁判という手段自体を考えれば、この請求が認められたときに利益を受けるのは原告であるので、真偽がどちらにあるとも確信が持てない場合には、原告に証明責任があるように感じられる。そして、そのような考えが一般的であるとも思う。

しかし、この問題は、原告が損害賠償を求めている事案ではない。損害賠償の事案であれば、問題なく上記の考え方を支持できるが、この問題は、本来、保険者が受給権者に支払わなければならない障害年金を、保険者が、法律解釈を誤って消滅時効が完成しているとして支給していないのが実体である。

そうであれば、この場合の証明責任は、保険者にあるのではないかという見方が本日のテーマである。

岐阜地裁は、原告の請求には理由がないというが、それでは、被告の主張には理由があるというのか。岐阜地裁が何を考えているのかさっぱり分からないが、私から見ると、被告の主張には理由がない。

この判決理由では、負けた原告は納得し難いだろうから、仮に同じ結論を下すにしても、原告がなるほどと納得できる判決理由を出すべきである。そのように努力すれば、真実を探究する姿勢も変わってくるので、最重要な前提事実を間違って議論を続けることもなくなるものと思われる。それは、裁判所の責任ではないが、的確に進行上の指揮権発動ができるかもしれない。土俵外の事実で事が決まってしまっては、国民は堪ったものではない。

これだけ読んでも、何が間違ったまま議論されていたのかは、相当の専門家でも分からない。少し解説すると、問題になっている重要な前提事実は、支分権(基本権に基づき発生し、月単位で支給されている具体的請求権:月単位でもらっている年金と考えてください)の納期(支払期月)である。

被告は、支分権は、基本権の発生した日の属する月の翌月から順次2ヵ月ごとに発生し、その翌月の初日から消滅時効が起算され、5年経過ごとに、会計法の規定に基づき順次自動的に時効消滅する、と主張している。

ところが、これは、抽象的観念論にすぎず、過去分の支分権の支払期月は、長年にわたり繰り返えされていたのではなく、5年間分の支払いと同様、納期(支払期月)は両者を含め1回しかないのである。

本案では、他の事柄においても、このように、前提事実が異なったまま、推論を積み重ねているので、多くの下級裁判所において、本質論とはかけ離れた理由から間違った判決が多く出されている。

私の関与する神戸の事件については、過日10月26日(水)に結審したので、来年1月17日(火)13:10に判決が下される。

私は、どちらに証明責任があるかは別にして、十分に証明責任を果しているので、理不尽な判決理由は出されないと思っているが、お客様は、他の裁判で、ほとんどが国が勝っているので、私の見通しを信じてくれず、次回の大阪高裁の交通実費を概算払いしてくれた。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 15:50| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
「岐阜地裁の判決文」に関し、「請求の趣旨」の立て方に何か問題があるのではないでしょうか(請求内容を見ないと何とも言い切れませんが…)。

「会計法を適用して…云々」とありますが、
会計法を適用しているならその「違法確認」なり、国が現行法下の時効の援用をしているならその「無効確認」なりを併合訴訟として請求しておかないで、
いきなり、未支給分の請求をすると、当然に立証責任が請求者側に課せられるように思われます。

なお、基本権の成立日は、裁定請求者が年金決定通知書
を受領した年月日であり、
波及的に成立する支分権は、その受領日の直後に到来する支払期月(偶数月)の到来と共に成立するものと思われます。



Posted by hi-szk at 2016年10月29日 23:34
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