2016年07月02日

上告受理申立て理由補充書

昨夜、遺族年金の消滅時効に係る福岡高裁で棄却された事件に対する受任弁護士の上告受理申立て理由書(案)が届いた。丁度、私の上告受理申立て理由補充書(案)も、ほぼ出来上がっていたので、本日は、その概要を掲載する。

まだ、素案の段階のものであるが、最高裁は、これでも「判断しない最高裁」の姿勢を続けるのか!? といった、抗議の意味を込めて、敢えてアップするものである。ブログとしては、長いものになってしまうので、内容の中身の多くを割愛させていただいた。

平成28年(行ノ)第??号 
上告受理申立人  ?? ??
相手方 国

上告受理申立て理由補充書


平成28年7月15日

最高裁判所 御中

                  上告受理申立人補佐人 木戸 義明 ㊞
 
本書では、以下の3点につき申し述べる。

@ 本申立てが受理要件に該当すること
A 本案を巡る問題が、司法及び行政で大きな問題と化している事実
B ほとんどの高等裁判所で誤った事実認定及び誤った評価・判断が下されており、中には、本論とは別の理由で結論ありきの判決が下されている事実

第1 受理要件該当性について
1 原判決に最高裁判例と相反する判断があること

   以下割愛
2 高等裁判所の判断が割れていること
本案の中心的争点は、裁定前に支分権の消滅時効が完成するのかしないかにある。平成24年4月20日の名古屋高裁判決(甲第7号証)は、裁定前には支分権は具体化していないので、この状態では権利行使できず、未裁定の状態は、時効進行上の法律上の障害であり、支分権の消滅時効の起算日は、年金決定通知書が受給権者に届いた日の翌日であると判示する。そして、この考え方は、上記の最高裁の考え方とも合致しており、他の関連事項とも整合している。
しかし、原審を含め多くの下級裁判所では、回りくどい理屈を付けて、基本権に対する権利不行使を、支分権に対する権利不行使と混同させ(みなし)て、未裁定の状態であるにも拘らず、支分権についても、継続5年間の権利不行使があったと判断し、本案支分権の消滅時効は完成していると判示している。
この判断は、基本的な重要な判断であるので、本来、法律解釈を職責とする高等裁判所で割れていてはならない事柄である。
このような状況下、いつまでも貴庁が判断を下さないのは、訴訟経済上も多大な損害が発生する原因となっており、社会的にも大きな問題である。
3 本案は、その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件であること
本案については、この権利自体が、老人、寡婦、及び障害者に係る重要な権利(譲渡、差押え、担保も禁止され、障害年金及び遺族年金に至っては公課も禁止されているほど)であり、最も遵法精神が問われる国家による違法行為が公然と長年続けられているという特異な事件であることに鑑み、貴庁が判断を示すこと自体に重要性が認められる事件である。

第2 本案は既に司法及び行政の大きな問題と化していること
 本案は、年金支分権の消滅時効の問題であるので、本来支分権について、継続5年間の権利不行使があったのかなかったのかを認定すれば十分である筈の単純な問題である(以下、これを「正論」という)が、年金法の不備もあり、単にそのような判断では、公正が保てない現実が現れてしまい、ほぼ相手方の主張を認めた、下記の判決が示すような、正論とは別の論理(以下、これを「曲論」という)が構築された。

@ 東京高等裁判所平成23年4月20日判決(乙第11号証)
A 東京地方裁判所平成22年11月12日判決(乙第12号証)

しかし、これは、老齢年金(通算老齢年金)の事件であり、老齢年金の一般的事情の場合は、補佐人もこの論理を許容しているが、これは、一般的な老齢年金の場合にのみ認められる例外的な論理構成といえる。従って、この解釈が許されるのは、一部の例外である筈が、これを原則であるかのごとく、これとは実態の合わない障害年金や遺族年金にも拡大解釈した下級審判決が普遍化し、最早、法治国家とは言い難い大変な現状となっている。
補佐人が既に提出している賛同者は一部の例であり、刻々と事態は変わっており、最近だけでも2件の資料要請(参考1及び2)があり、本件補佐人が法定代理人成年後見人として争った事件(甲第5号証)の謄写記録等(参考3)でも、遠方からも名古屋地裁まで謄写申請に来ているのが現状であり、年金マスターの資格を持つ先輩社労士も、「いずれは、国も法改正等余儀なくされるものと確信していますが、・・・」(参考4)と補佐人の考え方に賛同してくれている。

第3 ほとんどの下級審における事実誤認及び誤判断の実例について
 1 原審の事実誤認及び誤判断
(1)判決文の明文カ所

@ 「公権的に確認する行為にすぎず、裁定を受けていないことが「法律上の障害」とはいえない。」(4頁14行目)
  正しい解釈 以下「正しい解釈」は割愛
(甲第46号証、940頁6列目、同頁左から2列目から941頁1列目まで)
A「基本権が現に存在することについての確認行為であって、裁量的判断を含まないものと解されることも原判決の判示するとおりであって、控訴人の主張は採用できない(・・・生計維持要件についても、その要件は明確であって、裁量の余地はないと解される)。」(4頁16行目)
B「基本権の発生要件として被保険者の死亡という明確な事実を要件と
する遺族年金と、様々な症状のある障害の存在を要件とする障害年金とを同列に論じることは相当ではなく、失当である。」(4頁22行目)
C「基本権の発生要件並びに支分権の支給時期及び金額等については旧厚年
法において明確な規定が設けられていることから、上記裁定は、給付主体と相手方との間の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、・・・公権的に確認する行為であるにすぎず、裁定及びその後にされる支給の額、時期について裁量的判断を含まないものと解される。」(引用の第一審9頁下から9行目)
D「支分権の権利の性質に照らせば、その権利行使が現実に期待できるも
  のであるということができる。」(引用の第一審9頁下から1行目)
E「そして、支分権に基づいて支払われる年金の支給時期及び支払期月については、「年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め」るものとされ(旧厚年法36条1項)、・・・」(引用の第一審10頁2行目)
F「各支払期月の翌月の初日には、支分権の行使に関する法律上の障害がない状態となると解される」(引用の第一審10頁6行目)
G「したがって、各支払期月の翌月の初日が消滅時効の起算日となるというべきである」(引用の第一審10頁10行目)
H「原告はその翌月である同年4月から年金の支給を受けられたものである(同法36条1項)」(引用の第一審10頁10行目)
(2)判決文の黙示カ所
 ア 相手方の運用根拠は「内簡」又は「特別の法律に基づかない行政措置」以外にはないこと

   以下割愛
 イ 個別の時効援用がないのに時効消滅させていること
   以下割愛
 2 喉頭がんの事例を実態の異なる精神障害の事案に当て嵌めたカンニングペーパーのような不適切な高裁判決について
以下割愛
 3 遡及方法を年金制度の在り方と連結させた誤判断による高裁判決について
以下割愛
以上

参考1 新潟県の弁護士事務所からの資料要請の手紙
  2 沖縄県の弁護士からの資料要請のメール
  3 甲第5号証事件の謄写申請記録
  4 年金マスターの資格を持つ先輩社労士の賛同意見を書いた手紙
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 10:01| Comment(0) | 13 社会・仕組み
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