2016年05月21日

半歩前進 !!

今週の5月17日(火)、神戸地裁において、障害年金の消滅時効を争う事件の第4回期日が開かれた。私は、この事件につき、法定代理人成年後見人として本人訴訟をしている。当日は、同日付の被告第2準備書面に対する反論及び原告の主張を補充する内容の第3準備書面を持参しする予定であったが、「急がば回れ」と決め込んで提出を伸ばした。

結果運良くこれが正解であった。裁判長が替わっており、3点の要請事項があったのと、この間にも、この事件に関係する新しい動きを掴むことができ、これを書証として提出することも可能となったからである。(前の裁判長は、比較的お若い気取らない女性でったので面白い面があり、ある意味残念!?)

新しい裁判長は、予備的主張である民法第158条1項の類推適用の方で決着を着けたく思っているようである。なぜそれが分かったかというと、ラウンド法廷での裁判長から次の資料要請があったからである

1 初診日以来のカルテの提出(これには、1病院かどうかの確認があり、ご配慮が窺われた)
2 今までの就労状況が分かるもの
3 成年後見審判の申立て日が分かる資料
である。

しかし、この報告を受けたご本人は、これでは、仮に勝訴しても、「同じような境遇にある人を救えない」という。先生も、「多大な苦労をして、何のためにやっているのか分からなくなるのではないのか」、といった趣旨を述べ、長くかかってもいいから、主位的主張で頑張ってくれという。

私としては有り難い話ではあるが、その趣旨は、別の受任事件でも果たせるので、先ずは、受任事件についても、勝訴の形で1件落着を見たい思いもあったが、多分、次回で結審の打診がなされるが、次回提出する第3準備書面に対する反論を受けたい旨の主張をすることで納得していただいた。詰り、結果は、裁判長の判断に任せるということである。

今一つ注目すべきことがあって、従来の高裁判断は、老齢年金と遺族年金及び障害年金との間には、「異なる立法政策を、見付け出すことができない」という趣旨のであったが、この間に、私が唯一受任している遺族年金の事件について、5月12日の福岡高裁の判決文が届き、「遺族年金と障害年金を同じ土俵で論じることはできない」旨の判断が下されたのである。

私は、これを、「半歩前進」と思っている。従来の高裁判決等では、上記のとおり、「老齢年金と遺族年金及び障害年金は、異なる立法政策を採っているとは認められない」旨の判断であったが、今回は、遺族年金と障害年金の違いを認めた。

「基本権としての発生要件としての被保険者の死亡という明確な事実を要件とする遺族年金と、様々な症状のある障害等の存在を要件とする障害年金とを同列に論じることは相当ではなく、失当である。」(判決文4頁5行目) としている。

私たちは、一貫して、「老齢年金と遺族年金及び障害年金は異なる」と主張しており、現実には、遺族年金においても、生計維持要件の認定で、棄却されているケースは多くあるものと思われ、親しい社労士に実例を照会したところ、当面、生計維持要件の認定において棄却されている事件を2件確認(実際には、棄却の前提になる「受付」さえされないケースがもっと多い)できた。

従って、福岡高裁は、誤った判断をしていることになるが、これについては、最高裁に分かり易く訴えるより方法がない(実は、今一つ方法があり、厚生労働大臣に対する異議申立てを平行実施する)。

今後は、老齢年金と遺族年金の違いを認めさせれば一つの糸口になるので、活動範囲を広げ、継続的な運動を強化する所存である。

私が、成年後見人として、又は補佐人として、受任事件について裁判に直接係わることができるようになったのは、社労士法が改正施行された平成27年4月と時期が合致しているので、概ね1年間に「半歩前進」ということになる。これが、遅いか早いかは、人それぞれに感じるところが異なるが、これが現実であるので、じれったいがそれは我慢しよう。

平成19年からこの裁判を争ってきて、分かったことが色々あるので、近く、某専門誌に記事投稿を予定しているが、一言でいうと、この裁判は、第一審でとことん議論して勝ってしまわないと苦しくなるということである。ところが、私は、この肝心な第一審から参加できていないのである。補佐人としての参加は、その全部が高裁からの参加で、かろうじて間に合ったと思っていたが、そうではなかったのである。

第一審に負けてしまうと、次回以降は、公平・公正である筈の裁判所を敵に回すのと、実質的には一緒のことになってしまう。そして、高裁では、1回の期日で結審となり、込み入った議論はできないに等しい。この手の行政訴訟では、実質的には、三審制は保障されておらず(簡裁が第一審であれば、三審制になるが、行政訴訟は、簡裁に提出しても地裁に移送されてしまう)、実質的には、高裁判決が確定と同じことになっているのである。最高裁に上告や上告受理申立てをしても統計的には97%は受付すら叶わない。

この事件は、権利の重要性、遵法精神第一である筈の国の違法行為性、及び行政の暴走による国民の権利侵害といった極めて重大な事件であるが、正に、「判断しない最高裁」である。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 11:18| Comment(0) | 1 障害年金
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