会場には、当事者を含め多くのご家族の参加者がみえ、補助椅子を設けても間に合わないほどの盛況であった。私が参加したのは、 記念式典、記念講演、及びシンポジウムである。記念講演の講師は、愛知県精神保健福祉協会会長、名古屋大学医学部附属病院精神科教授、遺伝カウンセリング室室長の尾崎紀夫先生であった。講演のテーマは、「精神障害はどうして起こるのか? 遺伝? 育ち? 遺伝カウンセリングって何?」であった。
難しいテーマに対して、自然流で分かり易く説明され、講演後の質問に対しても、臨機応変に 余裕をもって回答されていた。お話の概要は、例えば統合失調症が、どうして発症するのか、 未だ完全には分かっていないが、小さい頃養子に出されて統合失調症を発症した方の、元のご家族と、養子先のご家族での統合失調症の発症頻度を比較検討した結果、育て方で発症する病気ではないことが分かってきたといわれる。また、一卵性と二卵性の双子を対象として、 統合失調症発症の一致率を検討した結果、遺伝だけで決まるものではなく、遺伝と環境の双方が発症に関係することも判明してきたそうである。
最近、人の遺伝子(ゲノム)を解析する方法が進歩し、精神障害の発症に関わる遺伝子も徐々に分かりつつあるとのことで、例えば、そのうちの一つ、22番染色体の欠失と呼ばれるものは、数十の遺伝子に影響を与えて、小さな頃には自閉スペクトラム症や注意欠如多動症、思春期以降には統合失調症の発症に関わること、心臓病やホルモンバランスや免疫の乱れなど身体の病気にも関わること、さらに遺伝子が関係していても90%以上が親から子に伝わるるものではないことが分かってきている。平成27年に「難病」として国の医療費助成等の対象となる病気の数が、110から306 と増え、この22番染色体の欠失も難病に指定され、他の難病と同様、22番染色体の欠失が、どのような機序で精神障害や身体疾患を引き起こすのかは未だ不明で、今後の研究が必要だそうだ。精神障害の本態を突き止め、より良い治療法や診断法に見出そうとする研究がなされているが、これらの研究は、当事者、あるいは家族のご意見を取り入れながら、進めていくことが大事だとの進言であった。
この講演の後、県の所管課長、愛知県精神科病院協会、支援施設運営者兼精神保険福祉士、及び当事者の代表者の立場から各々15分程度の発表があり、尾崎先生がコーディネーターとなり、補足、まとめ、及び質疑応答の時間が持たれた。
当事者及び支援家族を含め数人からの質問があったが、その質問内容・態度から、参加者の取組みの真剣さが窺えた。
私は、まだ読んではいないが、創立50周年記念誌をいただいてきたので、この貴重な資料により歴史を含め色々な側面から勉強させていただく積りである。
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