障害年金の支分権の消滅時効に係る国の姿勢には理解できないことが多い。私の考え方を一つでも認めれば、芋づる式に申立人が出現し、そのために支払う資金もないからという立場は分かる。しかし、それでは国は、今のような矛盾だらけの不合理な運用を半永久的に続けることができるのか。それは、困難である。
関係条文の解釈について、最高裁や社会保険審査会でさえ、支分権は裁定前には行使できないといっていることに対して、国の主張の矛盾をどのように解消するのかというと、その方策がない。これでは単に、お金を払いたくないだけのことになってしまう。稼得能力を失ったり減退させている障がい者に対して、命綱ともいえる障害年金、これは、既に個人の財産となっている支分権であるので、この権利を違法な手段で制限しているのだから、国の行為は、憲法第29条1項にも違反する憲法違反である。
3月16日(水)の神戸地裁の第3回期日後には、原告に当たるN.F様に、名古屋の事件の謄写資料の後半の部分を持参願い、要所をコピーした。
そこで分かったことだが、私が一度も電話照会を受けたこともない、ある大阪の弁護士が、わざわざ、名古屋まで出向き、この資料の閲覧申請をしていたのである。そこまで価値のある判断に対して、国は裁定前には支分権を行使できないことまでは認めているのであるが、そこからの論理がどうにも成り立たない。根本として、この年金の消滅時効は、継続5年間の権利不行使がなければ消滅しない。これは、何人も変えられない厳然たる事実である。
この問題は、年金の支分権の問題である。従って、これを時効消滅させるには、支分権に対する権利不行使が絶対に必要である。ところが、基本権と支分権は、各々独立した権利であるので、裁定前には、権利行使できない支分権に対する権利不行使期間が存在せず、権利行使する機会さえもなかったのであるから、国の推論は続かない。どうしても、論理の飛躍ができてしまうのである。
これが成り立つためには、現在の国の運用を決めた内簡による以外手段がないのであるが、これは、法令ではないので、国はそれを認めていない。国のこの内簡による運用は、年金法、会計法、及び民法を解釈した結果であって、この内簡に基づき運用しているものではないというのである。
そうであれば、裁定前に支分権に対する権利不行使期間は存在しないのであるから、支分権の消滅時効が完成する筈がないのである。これを完成させるには、 前述のように、支分権に対する権利不行使が絶対に必要となる。そこで国は、基本権に対する権利不行使を支分権に対する権利不行使とみなす主張をしているのである。その理屈は、国の指定代理人によって、多少の違いはあるが、概ね、次のようなものである。
裁定請求は、年金法によって受給権者に必要な行為として予定されており、これを行うことに国は何の制限も負担も課していない。そして裁定請求しさえすれば、支分権は直ちに行使できるのだから、これをしなかったことは支分権を行使しなかったことと同じである。
民法第166条1項は、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」と定めている。この意味は、期限の未到来とか、条件の未成就のような権利行使についての法律上の障害がない状態を指すものであって(最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決・民集28巻10号2072頁)、権利者が権利を行使し得る状態にあることを知らなくても時効の進行は妨げられないと解されてされている(大審院昭和12年9月17日判決・民集16巻1435頁)。
また、同時履行の抗弁権が付着した債権など、債権者側の意思によって障碍を除くことができる場合には、時効の進行を止めないと解されている(我妻栄・新訂民法総則484、485頁、川島武宜編・注釈民法(5) 281、282頁 〔森島昭夫〕)。本件の場合、裁定請求をすることができる時が権利を行使することができる時に該当する。従って、請求分の最も遅い月分についても、この時から、既に5年間は経過しているので支分権の消滅時効は完成している。
従って、時効の進行は、法律上の障碍がない限り止められず、不知や病気等の理由は、法律上の障碍ではなく、単なる事実上の障碍である。さらに、法律上の障碍であっても、権利者の意思によって止めることができる碍害は、上記のとおり、時効の進行は止められないと解釈されており、本件の場合、裁定請求は、受給権者がしようと思えばいつでもできるものであるから、これを、法律上の障碍とした場合でも、時効は進行し完成している。
この国の主張には、障害年金の場合には成り立ち得ない部分が、複数あるのだが 読者の方々はお気付きでしょうか。私は、この理屈は、一般的な老齢年金の事情の場合には、許容している。しかし、これは、あくまで例外であり、基本から外れる。しかし、国や一部の裁判所では、この基本と例外を逆転させているのだから、これでは、我が国は法治国家とは言えない。
この国の無茶苦茶な主張に対して、精力的に継続的な改善活動を続けているのは、私と、過日紹介した私の後継者の最有力候補であるA.A様以外に、私は知らない。
残念ながら、私は、弁護士ではないので、全ての受任事件につき、議論できる体制で主張を展開できる環境が万全であるとはいえない。しかし、既に、来月に迫った改正行政不服審査法に基づく審査請求を1件受任しており、このブログでも紹介したことのある案件で、現在、事後重症による障害基礎年金を受給してみえるS.H様が、昨年10月から認められた方法を利用して、厚生年金期間の初診日による再裁定請求をされる旨の意思表示をされているので、この事件についても、消滅時効問題について、弁明書と反論書による論争ができる体制が確保されている。
裁判についても、佳境に入ってきているので、これを期に、国の屁理屈を壊滅させたい。これは、私の強い意思である。そして、下級裁判所が、ぐずぐずしているようであれば、この不合理を解消させるため政治的な活動も並行させる覚悟である。
2016年03月26日
国の屁理屈の内容
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 15:46| Comment(0)
| 1 障害年金
この記事へのコメント
コメントを書く