私のお客様は、障害年金を受給しているほどの精神障がい者の方が結構多いのだが、私は、そのお客様から教えられることが多く感謝している。何といっても、割合でいえば、統合失調症の罹患者が一番多い。この方たちからは、時には、私の予測できない、思わぬ行動を強行され困ることもあるが、それには、れっきとした因果関係があるのである。
本日は、既に、このブログにも何度も登場しており、都合により東京と神戸を行き来しているN.F様のことを書かせていただく。そもそもの彼女との縁は、ある新聞で私の事件の名古屋高裁での勝訴判決の記事を見た彼女からの突然の電話である。行きなり、判決書の写がほしいと依頼された。余りの熱意に暫くして送ったのだが、それから相当の長期間音信不通であった。
この間、何をしていたのかと言えば、デイケアの仲間や行政の窓口の担当者等の支援の下、審査請求、再審査請求、及び別件としての訴訟の提起をご自身の名前で行っていたのである。
現在は、私が、成年後見人に就任しており、その立場で私が法定代理人として障害年金消滅時効事件の本人訴訟をしている。
今日の話題は、彼女と私の事件の裁判記録との関係である。彼女は、この記録の写を全部ほしいというのである。市販のファイルに換算すると、厚目のファイルで3冊分程度にはなるのではないか。私が協力して、謄写ができるようになったとしても、自分でコピーするのには、品質保持上ADFではできないので大変である。 その間担当の書記官は監視を余儀なくされる。地元弁護士会に頼んでやってもらうと1枚45円 だという。仮に、1,000枚あれば最低でも4万5千円と郵送料等が必要となる。
私は、それでもほしいという彼女の気持ちが分からず、彼女には、今、実際に行っている自分の裁判の記録を保管していけば、これよりもずっと充実した資料だと説得するのだが、聴く耳を持たない。
私の、一部手書きの図解入りの書証やピアノを教えていた私の妻の当時の行動に関する記録や長年闘ってきた歴史や全てが大事で、ご自分のお守りとして、写をずっと持っていたいというのである。ご本人の母親も病歴があり、私の調査では、平成9年5月5日、母55歳、本人33歳の時に死んでしまった。4月30日に入院し、病院に居ながら、どうしてこの病気で一週間で死んでしまうのか。原因も知らされず、ずいぶん辛い思いをしたようである。これらのこと全てが、裁判記録と絡んでおり、切っても切り離せないのである。
仕方ないので、経緯等を確認後、 私が必要ということにして私の名前で地元弁護士会に謄写申請を出すことにした。私が話を聞く前に、既に3度程は、東京や神戸から名古屋地裁を訪ねてメモを録ったり、謄写を依頼したりしていたようである。正規の謄写の申請資格はなく、 私は、突然の電話で、現場まで、来てくれと依頼されたことも、そのための委任状を依頼されたこともある。
ご本人は元々裁判所の傍聴等は好みのようで、暇さえあれば近くの裁判所に出向き傍聴していたようである。私が成年後見人に就任する前から、不服申立制度や裁判の制度についても興味を持っていたようである。
偶然とは恐ろしいもので、彼女が私の高裁での判決書を根拠に提訴した東京地裁での裁判長が、私の事件の名古屋地裁での第一審の裁判長と同一人物であった。このM.M裁判長は、中味がよく分かっていたので、彼女の事件については、却下(一部棄却)判決を下したのだが、別途、給付請求訴訟は可能である旨を判決文の中に書いてくれた。
おまけに、その時の担当書記官の上司が、その時の提出先窓口は、行政訴訟の窓口とは異なる民事訴訟の窓口である旨非公式に伝えてくれた。この言葉が頭から離れない彼女は、私の作った訴状をコピーして、これを基に、地元の社労士が作ってくれた「私の気持ち」や、法テラスで知りあった弁護士の作ってくれた「請求の趣旨」及び「請求の原因」を脈略なく提出し、正本と副本が違うとか、書証の番号が合わないとかの指摘を受けながらも、裁判所の書記官が付番してくれたりして、私の知らない内に、東京における身上監護等を目的に追加就任した別の成年後見人と、息子さんの名義で民事訴訟(その意味も分からず)として、もう一件の提訴をしてしまったのである。
私は、今からでも遅くないから、請求の原因を書いてくれた弁護士が代理人になって続けてくれないようなら、取り下げた方が良い旨のアドバイスをしているが、彼女は中々決心がつかない。
こんな彼女であるので、自身の裁判については、色々な面で興味を示し、本件でも、乙号証として提出されている平成26年5月号のジュリスト(労働判例研究 第1226「 公的年金支分権の消滅時効の起算点 -障害基礎年金支給請求事件」 東京大学労働法研究会)に、東北大学の岳さやか准教授が書いた私の事件に関する記事に話が及んだ。もう約1年9カ月も昔のことになるので、私は気にもしないでいたが、実は、私は、その時に13カ所の問題表現を見付け、発行元の有斐閣の担当者と電話とメールのやり取りの後、有斐閣と著者に抗議文書を送っているのである。これに対しては、何の返事もなく失礼なことと思っていたところ、彼女は、国がこの記事を書証として提出して、学者でも国の主張が正しいと支持している、と主張しているのだから、その時の抗議文を書証として提出し、国の主張は間違っていると主張すべきだという。
全くそのとおりで、私は、本件及び補佐人として提出済みのメイさんの上告絡みの理由書にも、福岡高裁の控訴理由書にも、この書証を追加することを決意した。 正に、お客様は神様だ !! 用法がおかしいかな !?
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