2015年12月26日

垂直思考と水平思考


最近、年金支分権の消滅時効問題について感じていることだが、国の指定代理人もほとんどの下級裁判所の裁判官も、立場上の行為ではなく、本当に原告等の主張の内容を理解していないのではないかと思うようになった。

国の指定代理人は、支払いたくない一心で、無理を承知で屁理屈ばかりを捏ねているのだが、裁判官までが、これと同じ考え方になる必要は薄い。しかし、平成23年4月20日の東京高裁判決(不思議なことに、私の事件の名古屋高裁判決の丁度1年前)が、結果、「裁定前にも支分権の消滅時効は進行している」と判示しているので、この影響を強く受けており、判決理由も酷似しているのである。

しかし、この事案は、通算老齢年金の事案であり、しかも、年金時効特例法の適用の可否、及び公定力のある行政処分の取消を求めた裁判であるので、私が、争っている消滅時効という事実行為の成否の事件とは事件の位置付けが相当に違うのだが、ほとんどの裁判官は、その違いにも気付いていない。

裁判官の判決理由を熟読すると、垂直思考には優れているが、水平思考には優れているとは言えない。むしろ欠けている。原告側により主張されている重要な争点自体を見逃がしていたり、前提となる事柄に対する事実誤認や論理の飛躍、及び他の主張との矛盾点を見逃がしていたりするのだから、これは、故意に触れずにいるとは思えない。

少なくとも私は、時効の起算点だけを争点とはしていない。保険者国の基本権と支分権の権利の混同、法定の納期(支払期月)、継続5年間の権利不行使期間のないこと、障害年金は停止条件付き債権であること、国の運用の根拠は法令ではない内簡のみであること、支分権は会計法の規定では自動消滅しないこと、国会答弁で「今後は、個別の事案ごとに時効の援用をしたもののみを時効消滅させる」旨、時の内閣総理大臣が答弁していること、及び国の主張の論理的矛盾等についても主張しているが、ほとんどの下級裁判所では、この点の争点を無視して、「時効の起算点」一つに絞っているのである。これでは、水平思考に欠けるとの指摘も受け入れるより仕方ないことであろう。

私は、メイさんの事件の控訴審では、私の事情により、補佐人ではなく、陳述人として意見書を提出したのであるが、これは、一証拠としての位置付けにしかならないので、ほとんど無視されている。裁判所が、わざと触れないでいることも可能性としては残る。

私が問題にしている事件の中心は、年金法の解釈の問題である。これを、2つの視点から、民法の問題にすり替えようとしているのが国の作戦である。一つは、基本権と支分権の権利の混同を正当化する論理の問題であり、今一つは、時効進行上の法律上の障害論(逆から言えば、事実上の障害論)である。

事は単純な話であるが、国が複雑な論理を展開するので一般の人には理解できない状態になっている。これを打開するのには、社会保険にも一般的な法解釈論にも、この両方に精通した者が当たらなければ、国の屁理屈に負けてしまうのである。

そこで、メイさんの事件では、最高裁からは、私が、補佐人の選任を受け現在上告理由書、及び上告受理申立理由書を鋭意作成中である。最高裁では、ほとんどの事件(97%)が受理されない。そして、残った3%の内、議論が可能となるのは数字上では、その1/3(詰り、全体の1%)であるらしい。しかし、これが実際に受理されるかされないかは数字上の問題ではない。

いかに下級審がいい加減な判断をしていたかを明確にして、大逆転を期している。ここで発揮すべきは、垂直思考ではなく、どちらかというと水平思考である。私の立場は、弁護士の先生が主張した内容を補充する位置付けであるので、7点に絞って原審の違法を指摘する。

しかし、ほとんどの裁判所は、被告側の事実誤認に基づく論理や論理の飛躍に気付かずに、これを正しい運用であると判示するのであるから、私にとっては、被告や被控訴人等だけが相手方ではなく、裁判所も相手方と考えた方が当っている状況である。頭の固い、水平思考の苦手な裁判官に理解していただくには、一工夫も二工夫も必要である。

この事件の中心を占める事項に関しては、最高裁判例は、一つしかないのだから、真坂、最高裁で議論して負けることはないと思っているが、受理されなければ、負けと同じであるので油断はできない。

これからは、私が直接、成年後見制度を利用して、法定代理人として本人訴訟をする機会が格段に増えてくる。保佐や補助相当でも代理権付与されれば、付与されたものがその件に関しては法定代理人となれるのだから、私が本人訴訟できる機会は格段と増す。保佐や補助なら、ほとんどの精神障害者が該当し、市町村によっては、「成年後見制度利用促進事業」が充実しており、特別な事情のある方以外は、 本人や支援者が希望すれば、実現する環境になったのである。

従って、私は今後色々な裁判官に遭遇することとなる。しかし、ここでも水平思考を誘発させて工夫の成果を発揮したい。

裁定もしていない内に、具体的請求権である支分権の時効が進行するといったフィクションを現実の法解釈で許していてはならない。障害年金について言えば、実際に行使できなかっただけではなく、自分が障害年金を貰えることを想像すらできなかった人の権利を奪ってしまっているのだから、これは、明らかに違法である。国民の重要な権利に対する侵害であり、憲法第29条1項(財産権の侵害)にも該当する重大事である。遵法精神の模範となるべき国が、公然と違法行為・憲法違反を繰り返していては、我が国は法治国家とは言えない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 08:53| Comment(0) | 1 障害年金
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