2015年09月12日

メイさんの事件

私の応援団長であるメイ恵理香さんは、隠し事なし、何でもオープンにしてもらっていいとの合意であるので、本日は、実名で記載させていただく。

昨日、メイさんの訴訟代理人からレターパックが送られてきた。インターホンが鳴っていたようだが、妻が出ないので、郵便屋さんは留守だと思い郵便物を持ち帰ってしまった。本日午前中には届くよう再配達を依頼してあるが、たぶん中身は控訴理由書に対する答弁書だと思われる。

メイさんの裁判では、第1審での主張が認められなかったので、過日、控訴理由書を提出した経緯がある。
書類が届いたら、しっかり読みたい。

法務省内の社会保険関係訴訟事件の主管部門の元締めである社会保険実務家の研究会の見解ですら、結論として「国年法及び厚年法上の年金の支分権の消滅時効の起算点も右の原則に従い、裁定後の分については各支払期の到来した時であるが、裁定前に支払期が到来したものについては裁定時(ただし、初日不算入)が起算点となる。」と、誰が読んでも誤解の生じる余地のない表現をしているのだが、国の指定代理人はこの考え方に従う気持ちはないようである。

官僚も一部の裁判官も、頭が良すぎて分からない振りをしているのか、事の重大性を思うあまりに、政府の意に反するような行動に出れないのかは、言っていることが支離滅裂で判断がつかない。

この文献は、既に、メイさんの訴訟代理人から書証として提出済みで、その旨の主張も終わっているのに、第1審敗訴である。頭の良すぎる人たちには、結論だけを示しても、効果がないのかもしれない。

国も面白いところがあり、いわば、本庁の主幹部が言っていることと全く反対の主張ができるのだから、利益優先なら、このようなことも許されてしまうことになる。これは、民主的とも呼べないし、何と表現して良いのか分からない。

この結論部分の表現の前段では、『消滅時効の起算点について、 国年法102条1項は裁定前の年金給付を受ける権利につき支給事由が生じた日と規定している。 特別の規定がないものについては民法166条1項が適用され、同項の「権利を行使することを得る時」とは、権利の行使に法律上の障害がない時、すなわち法律上権利を行使し得る時と解される(最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決・民集28巻10号2072ページ参照)。したがって、 厚年法の保険給付を受ける権利の消滅時効の起算点も法律上権利を行使し得る時である』との表現があり、ここまでは、国も一部の違法な判決を出している裁判官も認めているのだから、これ以降が、全く正反対の結論になることは通常あり得ないことである。これはもう、異常と言うよりほかに適当な言葉は見付からない。 国の指定代理人も、そろそろ、屁理屈を続けることに自問自答すべき時期である。

出典
社会保険関係訴訟の実務   法務省訟務局内 社会保険関係訴訟実務研究会 平成11年5月30日発行  三協法規出版株式会社

なお、この研究会は、当時の法務省訟務局内行政訟務第2課長の高野 伸 氏が代表を務めてみえた。
タグ:指定代理人
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 13:13| Comment(2) | 1 障害年金
この記事へのコメント
消滅時効の適用に関しては、木戸先生も難儀しておられるご様子です。この場をお借りして、おかしいな悔しいなとの思いをしておられる多くの障害者のために、何かのお役に立てばとの思いから、論点が多岐にわたるので長文になり恐縮ですが、以下に述べさせていただきます。「異論あり」と思われる方はコメントしてみて下さい。

先生のブログ中の「民法166条1項が適用され、同項の「権利を行使することを得る時」とは、…」を国民年金法に当てはめたとき、ここで言う「権利」とは何を指すのでしょうか。
国民年金法で定める権利は二つあります。
一つは、誰もがいつでも行使できる「裁定請求をする権利」(裁定請求権)です。もう一つは、裁定を経なければ成立しない「年金を受給する権利」(年金受給権)です。
いずれも年金法16条をよく読むとこの二つが規定されているのが浮かび揚がってきます。結論から言えば、この「権利」とは年金受給権を指しています。以下に理由を述べます。

まず、何故、「よく読む」必要があるかいとうことに関してです。16条がトリック的解釈を要する規定だからです(トリック的規定は他にも二つあり、後述します)。
即ち、「裁定請求権」を16条では「その権利を有する者(以下「受給権者」という。)」と言っているので、多くの場合、「年金受給権」と誤解してしまうからです。
しかし、これから請求しようという局面においては、後述のように「年金受給権」は付与されていません。この「受給権者」の文言に「年金受給権者」を当て込んで解すると、未だ権利は発生していないので、誰一人として請求できなくなってしまいます。更に、現在、厚生労働大臣が支給している全ての年金も、無権利の「受給権者」からの請求に基づいて支給していることとなり、全て違法な支給とになってしまうからです。

多くの民法学者や裁判官も知ってか知らずか、更には、16条のトリック的解釈性に悩まされてか、この「受給権者」のことを「年金受給権」としているように思われます。この方々の論述の中で述べられている「年金受給権」を「裁定請求権」と置き換えると、筋の通った納得の行く論理となるからです。

話を元に戻しますが、ここで言う「権利」とは、この二つの権利のうち「年金受給権」を指していると解するしかありません。「民法166条1項が適用され、同項の「権利を行使することを得る時」とするときの「権利」とは、「年金受給権」を指していることになります。最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決・民集28巻10号2072ページで指している権利です。
なお、これとは別に「裁定請求権」を消滅時効の対象としている法律があります。保険法です。「第九十五条  保険給付を請求する権利、(中略)、は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。」として「裁定請求権」を消滅時効の対象にしています。が、国民年金法にはこのような規定はありません。

「年金受給権」は16条に基づき、厚生労働大臣の裁定によって付与されます。年金は一種の分割払い債権(定期金債権)なので、その支分権の元となる権利として「基本権」と呼ばれます(多くの民法学者・裁判官は、厚生労働大臣の「裁定権」が年金受給権の成立の障害になるこを軽んじていると思われます)。

具体例をあげます。平成18年5月8日が初診日のとき、障害認定日は一年六ヶ月後の平成20年11月8日となりますが、この裁定請求(年金請求書(障害基礎年金)の提出)を平成27年3月1日に行い、平成27年7月11日付けで年金決定通知書が郵送され、その3日後の7月14日に年金請求者が受領したとすると、「基本権」は平成27年7月14日に成立します。この日が先に述べた最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決で判じている「権利を行使することを得る時」です。
「権利を行使することを得る時」を細かく分解して拡大解釈するなど何某かの理由を付けてこの日より前に成立するという主張がありますが、16条の規定を覆すことができません。16条の規定を無視して違法な主張です。

分割払いを受ける権利を「支分権」と呼んでいます。
ここでは、年金の計算期間を何時から何時までとするかを論じるものです。

まず、何時からとするかです。
結論から言えば、支分権の計算期間の初月として「障害認定日」を規定しているものの、この日が消滅時効の起算点には該当しないということです。
国民年金では「基本権」が成立すると、分割払い(支分権)の履行期限が次々と「芋づる式」に派生し到来します。これは18条で規定されていますが、次に述べる「支給すべき事由が生じた日」が消滅時効の起算点となるか否かという点において、あたかもこれに該当するかの如くの文言なので、これもトリック的な解釈を要する規定です。即ち、
「第十八条  年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。」としています。「支給すべき事由が生じた日」とは何時の日を指すか、この日が消滅時効の起算点になるか…ということです。

「支給すべき事由が生じた日」は、30条(〜30条の4)に支給条件の一つとして「障害認定日」が規定されています。この規定があるからと言って、自動的に年金受給権は発生するものではありません。裁定請求することによって、厚生労働大臣が裁定の義務を負い、裁定されることによってのみ年金受給権は成立するからです。
即ち、厚生労働大臣の裁定は、@「障害認定日」が規定に適合しているか否か、A 適合していればその障害認定日にどの程度の「障害等級」(1級か2級か)に該当するか否か、B 保険料の納付要件に適合しているか…を16条を根拠にして公権力の行使として行われます。
消滅時効問題の視点からすると、裁定が行われる前の日となる「障害認定日」は、障害年金支給の初年月の基準となる日を定めているに過ぎず、消滅時効の対象となる年金受給権か発生している状態てはありません。前述の様に、支分権は、厚生労働大臣が裁定して初めて基本権が成立し、その基本権に付随する芋づる式権利だからです。

次は、何時までを計算期間(終年月)とするか…についてです。これば消滅時効に関係します。
18条3項本文では「年金給付は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月までの分を支払う。」として「それぞれの前月までの分」と計算期間を区切っています。この区切り規定から、支分権の計算の終年月は、通常なら奇数月となります。そしてその翌月…いわゆる偶数月に支給されることになります。このとき、第一回目の支分権の計算期間が長大になることがあります(先の例では、平成20年12月から平成27年7月までの6年8ヶ月間となります)。(但し書きで例外を定め、これ以外の月…つまり奇数月でも支給される場合があります)。第二回目以降の支分権の計算期間は、通常、二ヶ月間となります。
ここで、第一回目の支分権に対し、時効の援用を主張されて未支給となっている年金については、年金決定通知書の受領日の属する月の翌々月(先の例では平成27年9月1日)以降、履行遅滞が発生しているので、消滅時効が進行中となっています。従って、裁判や審査請求その他の時効中断の法的措置をとらないと未支給分の権利はこの日から5年で消滅してしまいますから注意が必要です。

このように、支分権は、派生して到来する権利なので基本権の成立日より前(例えば「障害認定日」の直後の偶数月)に発生することはあり得ません。
この点に関して、国民年金関係では多くの方々が「基本権の成立日より前に発生する」と何某かの理由を付けて主張していますが、基本権からいわば「芋づる式」に派生する権利なので、あり得ない主張が繰り返されされているところです。
「障害認定日」説を唱えるということは、先に述べた最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決で判じている「権利を行使することを得る時」と異なる主張をしているのです。これが単に学術論文における諤々たる主張であれば、実務には何の影響もないのですが、行政執行や裁判で取り入れられているところに大きな問題があります。

更に、国民年金法の消滅時効の規定(102条)も、トリック的な解釈を要する条文です。即ち、
「第百二条  年金給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる給付の支給を受ける権利を含む。第三項において同じ。)は、その支給事由が生じた日から五年を経過したときは、時効によつて、消滅する。」として「その支給事由が生じた日から五年を経過したときは、時効によつて、消滅する。」とするうち「その支給事由が生じた日」とは何の日を指すかです。この条文は基本権と支分権の双方を規定しているものと解されます。

二つの説があります。一つは「障害認定日」説です。もう一つは「裁定請求者が決定通知書を受領した日」説です。
「障害認定日」説は基本権に関する主張であり、その第一回目の支分権の履行期限は障害認定日の直後の偶数月となる主張です。
条文の文言「その支給事由が生じた日」からして最もらしい解釈ですが、既に述べたように、厚生労働大臣の裁定を受ける前には「年金受給権」たる基本権は「裁定権」が諸害になって成立しないので、従って、支分権も成立していない。成立していない時点を採って「消滅時効」を主張することはナンセンスな主張という以外に形容のしようがありません。
しかしながら、ナンセンスな主張は繰り返し行われています。が、その内容があらかじめ想定されるので、その非を明らかにする主張が可能な訳ですから、相手の主張を待たずに前もって丁寧に防御的に行うことが欠かせず、手抜き弁護とならないようにする必要があります。また、双方の主張に不十分な点があると、裁判官も過去の判例を参考にするなどしてこれを補った判旨を独自に仕てる必要が生じ、このような論理が法廷で繰り返される可能性が高くなるものと思われます。
国家賠償法を適用する場合についても同様です。裁判官は、厚生労働大臣に替わって裁定をしてその損害額を確定し判決を下す必要があるからです。

時効の法理を適用すると、「裁定請求者が決定通知書を受領した日」説をもって「その支給事由が生じた日」と解するほかはありません。先に述べた最高裁昭和49年12月20日第二小法廷判決で判じている「権利を行使することを得る時」がこれに当たるからです。

これを先の例に適用すると、基本権の成立日は平成27年7月14日となります。また、第一回の支分権の履行期限の到来は平成27年8月31日 となり、この翌日、平成27年9月1日から履行遅滞が生じ、消滅時効が進行していると解されます。

長文になりましたが、最後までお目通し下さりありがとうございました。
Posted by hi-szk at 2015年09月13日 17:36
コメント内容の【誤記の訂正】です。

「具体例をあげます。平成18年5月8日が初診日のとき、障害認定日は一年六ヶ月後の平成20年11月8日となりますが、…」中の「平成18年5月8日」→【平成19年5月8日】に訂正します(一年ズレていました)。
長期間気づかずに失礼しました。

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ついでながら、基本権の成立と支分権の関係について、比喩的な事例を挙げて追加説明を加えさせて下さい。

基本権(年金受給権)の成立は、いわば「親の誕生」です。親の誕生後に直ぐに「子が誕生」する関係にあるのが年金の支分権です。
親の誕生前に既に子が生まれているということは決してありません。

支分権は、親の誕生直後に到来する偶数月の末日に第一回目が誕生します。以後、二ヶ月毎(偶数月の末日)に履行期限が次々と到来するので、派生的に年子のように芋づる式に誕生し、誕生とともに独立して一人歩きする構造をとる権利です(実際には偶数月の15日に慣例として前倒しして支給しています。が、権利が確定するのは月末です)。

一旦、確定して、仮に、未支給となっていても、既に独立しているので、その履行期限の翌日から、消滅時効が進行しています(この点で、18条3項但し書きの適用を誤った判例がみられます)。
また、この進行を止める様々な法的措置(例えば「催告」「差押」「訴訟提起」など)をとる必要があります。仮に、この措置を否定するとすれば、時効の進行をも否定している自己矛盾を起こしていることになります。

このような関係は、他の定期分割払型の債権債務関係においても共通するもので、年金債権に限ってこれと異なる関係が生じることは決してありません。

先の例で「障害認定日説」の間違いは「親が生まれる前に、すでに子が生まれている(支分権が確定している)」と主張していることにあります。
「権利が誕生しているから、その権利を消滅時効にかけられる」という主張です(このように主張しないと、消滅時効にかけようがないからでもあります)。

どのような理由・理屈をつけ、法律的用語を羅列してもっともらしくカムフラージュしようとも、このようなことは起こりようがありません。それは暴論です。

公的年金、特に、障害基礎年金に発生しやすい遡及請求に限って、このような解釈・運用をするのは、(一部を除く)行政および司法関係者による障害者に対する差別意識が働いているというよりほかはありません。





Posted by hi-szk at 2015年12月21日 16:18
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