2015年09月05日

異議申立書、訴状の主張構成の全面改正について

3か月ほど前から、遡及5年を超える年金支分権消滅時効問題について、NTT OBでもある、私の開業当初のお客様が、再度挑戦する旨の意思表示をしてくださり、それを期に異議申立書の主張構成を全面改正した。

この方は、ペースメーカーを入れてみえることもあり、最終的には、本人訴訟支援まで進み、訴状の提出をされたのだが、裁判所の雰囲気に馴染めず、血圧が異常に上がってしまい、健康第一と考え、訴状を期日指定前に取り下げた方である。

なぜ全面改正をする必要があったのかであるが、一言で言えば、原告の主張を正確に理解し得ていない判決が見られたからである。最も新しい金沢の事件については、最終的には、受任弁護士が、私との十分な打合せを避けられた事案であったのだが、ご本人に送っていただいた判決書を読むと、「遡及5年分の年金を受けているのだから、支分権の消滅時効が完成していた」といった趣旨の判決理由であったのだが、この分の支払は、裁定(決定)通知の翌月であるので、このような事実が支分権消滅時効が完成する理由になるわけがなく、年金法が良く分かっていない弁護士と裁判官に問題があると判断したからである。

今までの主張内容を見ると、消滅時効の起算点に焦点を絞り過ぎており、説明(証明)に誤解が生じる可能性があったのではないかと反省したのだ。理論的には負ける筈のない裁判で、敗訴判決がみられることは、裁判所が行政寄りの判断をしていることもあるが、裁判所といえども、明らかに、法律的解釈、判断と言えないような判決は出し難くい(平成27年6月17日の名古屋高裁の判決は例外、裁定前の支分権を「抽象的な権利にとどまるとはいえない」とまで、最高裁判例に反し、被告の主張していないところまで判断材料にするのだから被告もびっくりしていることと思う)のであるから、違法の証明を分かり易く誤解の生じる余地がないようにする必要を考えてのことである。

それでは、今回の主張はどのように変えたのかであるが、「時効は完成していない」という証明ではなく、「未だ受給権は存在している」証明に変えたのである。これには、多数の事由があるのであるが、これをできるだけ、重要性に沿って、分かり易い順序で表現するのである。

この内一番大きな理由は、支分権について、消滅時効が完成するには、絶対的条件になる「継続5年間の権利不行使期間」が存在する必要があるが、それが存在しないところである。しかし、裁判であれば、ここで、被告から、基本権と支分権を混同した主張がされるので、最初から反論を予測した主張をする必要はないのだが、異議申立てでは、原則として、一方的な1回の主張書面で目的を達成させなければならないという難しさがある。

しかし、これは1回作ってしまえば、訴状にも利用できると考え、完璧に近いものを準備したのだが、完成までには約1か月を要してしまった。この異議申立書のパターンを訴状に変えるのは簡単と思っていたら、これも約1週間ぐらいを要した。現在95%ぐらいは完成しているが、これから証拠説明書を作ったり、書証を揃えたりするのに相当の時間を要する。

これらを考えると弁護士が高額な着手金及び成果報酬を決めているのは、成果が出るまでに長期間を要することを考えるとやむを得ないことの様な気がする。しかし 一般的には 経済的弱者である障害年金受給者のことを考えると、できるだけ、着手し易いように考えるのが社労士の心意気であると考え、私はそのような料金体系を採っている。

この消滅時効問題に限って料金面のことを言えば、結論から言えば、私をこの請求(この場合、いきなり訴訟とする)のための成年後見人に選んでいただけば、着手金も不要で、成果報酬も家庭裁判所が決めてくれる。

今回作成した訴状は、神戸家裁で、私をこのための成年後見人として選んでいただいた事件のためのものである。この例は、経済的側面のみをいったものであるので、実行するには、本人の状況、必要性、想い等色々な側面から慎重に考える必要があることは言うまでもない。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 14:59| Comment(1) | 1 障害年金
この記事へのコメント
「未だ受給権は存在している」と主張することは、当然に消滅時効の対象にされてしまい、5年を超える受給の道を自ら塞いでしまうことにはなりませんか。
Posted by hi-szk at 2015年09月09日 23:52
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