2015年05月16日

結果重視と受任の諾否

 4月1日に相談を受け、即日受任した再審査請求手続き代行に関する補充意見書が昨日完成した。 この事件は、社会保険審査官の棄却決定が平成27年 2月5日付であった。再審査請求可能期限は迫っていたので取り敢えず、社会保険審査会には再審査請求の意思のあることと、 主張の方向性のみを伝えてあったものである。

 不服の内容は、障害基礎年金受給権者の障害状態確認届で、障害等級3級と認定され 支給停止処分とされたことに対する不服である。この方は、就労支援施設での就業であるが、一応は就労しており、一人住まいの女性であるので、ほとんどのケースで支給停止とされているモデルケースである。本件につき受任を躊躇した一つの理由は、審査請求を担当した社会保険審査官が、いわゆる良識派の温厚な人であったからである。本件委任契約は、請負契約のように仕事の完成を約束する契約ではないが、例え委任契約と言えども、社労士が一旦仕事を引き受けた以上、目的が成就することが相当に期待される事が多い。これを考えた場合、果して、受任して、お客様に喜んでもらえるのかどうか迷ったのである。

 結果、長い時間を要せず受任を決意したのは、就労先の施設長が、既に、当時の現症診断書を書いた主治医の先生宛に、診断書の内容につき再考を依頼する旨の状況報告書を出されていたことが決定的要素であった。

 4月 17日(金) この施設長を含め、母親と4人で対処方針等について打ち合わせをした。 当面、引き続き不服申立の手続きは継続するが、先輩社労士のアドバイスもあり、加えて現症の診断書等を用意し、支給停止事由消滅届も併せて提出することとした。

 この打合せの中で、私は、当時の診断書に2ヵ所の誤記があることを発見した。一つは、父母との同居表示。当時既に独居であったこと。いま一つは、本人の就労は、正に就労支援施設であるが、その表示のないことであった。日常生活能力については、母親及び施設長との聴聞結果と診断書の表記に大きなギャップがあった。

 私は、果してどちらが実態を正しく表しているだろうかと考えた。。これについては、一番長い時間、隣の席で仕事の指導や日常の態度を観察してみえる施設長の方が正しく把握しているに違いないと判断した。この表記は障害状態確認届提出時の病状について、本人が主治医の先生に自分の現状を正しく報告していないことが原因であると考え、施設長に社会保険審査会への意見書を作成していただき、これを主治医の先生にも予め私の依頼文と共にFAX送付させていただき、訂正依頼のため本人が再度受診した。

 主治医の先生は、私や施設長の意見に従い当時の現症の診断書の訂正と共に、日常生活能力に係る7つの項目のうち6つについてまで大幅に変更してくださった。これは本人が自身の病状を正しく把握しておらず、主治医の先生に正確に伝え切れていないことをお認めいただいた上での評価に基づく訂正である。医師が一旦書いた診断書を訂正することは大変なことで、確たる根拠なしには成就しないことである。

 施設長との最初の打ち合わせに先立ち、私は、豊田年金事務所経由で、事務センターが障害等級3級相当であると決定した主な理由を聞いておいた。それは
1 数年間目立った症状はなく、状態として安定していた。
2 前回更新時も安定していたが、一応経過観察として認定した。
3 次回更新時も安定しておれば、支給停止となる旨の通知をしている。
 というものであった。

 これに対して、実態はどうであったか。
 周りには、施設長を始め、障害者支援の資格を持った専門家が多数おり、勤務時間、 休暇、休憩等についても特別な配慮を受けながらの就労であり、通常の勤務とは程遠い勤務実績であり、収入面においても生活を賄えるには程遠い金額である。一言で言えば、就労せず家庭にいる障害者よりも恵まれた環境で過ごしているとも言える。

 就労については、事務関係の仕事(事務補助)ゆえ、本人が外に不具合が現われないように、各段の努力をしていたに過ぎない。母親が家族会での会議での基調講演で、自立支援に関する話があり、これは良いことだと本人に勧めたものである。当初は、本人は躊躇していたが時間をかけ将来を考えての親の説得に応じて試験的に実施していたものである。本人や家族が真面目に真剣に自立及び支援に取り組んできた賜物である。

 本人が就労や独居において現在の状況にあるのは、障害者が本来あるべき道を目指すものであり、厚労省も障害者の就労に関して推奨している方向に合致したものである。これを単に表面上又は形式的な側面のみから判断し、治ってもいない今の段階で支給停止処分とするのは本末転倒であり社会正義にも反する。

 これらの状況や診断書に基づき書き上げた私の補充意見書(案)に対して、ご家族からは、私たちの気持ちを理解していただき、言いたいことを十分に表現していただいているとの感謝の言葉があったが、結果、社会保険審査会が原処分を取り消してくれなければ、絵に描いた餅である。

 これら類似の事件は多くあるが、本件の場合、専門職である私が、伝わり易い表現に変えただけではなく、重要な判断要素となる「医証」そのものが大幅に訂正されているのだから、容認される可能性は増したが、決して油断できるものではない。

 考えようによっては厳しい仕事であるが、お客様の喜ばれる笑顔が見たくて、日夜、歳に負けずに頑張っている。
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 09:40| Comment(0) | 1 障害年金
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