先週末に私が支援している時効問題に関する名古屋地裁の判決結果のご報告を受けた。ご本人のお父さんからは、全文にして提出し直した書証を読んでいた裁判長が突然立ち上がり結審を宣告して奥に引っ込んでしまった、と聴いていた。この終り方で、原告敗訴はおかしいので、原告の勝訴を期待していたが、また、「裁定請求しようと思えば、いつでもできるのだから」という理由に基づく、基本権に対する権利不行使と支分権に対する権利不行使を混同した判決に逆戻りした。
結審当日、嫌な予感がした私は、ご本人とお父さんに、もし、結審の打診があったら、「まだ、十分に議論していないので、期日を継続していただきたい」旨の申し入れをしてくれるよう依頼しておいたが、その暇がなかったという。しかし、裁判の指揮権に係ることであるので、これに対しては控訴以外に不満を晴らす道はないようである。統合失調症による障害基礎年金2級の者の本人訴訟ゆえ、当初、被告は、「本人の訴訟能力についても主張する予定である」旨の答弁をしていたが、これについては、裁判長の配慮もあり、主張しないことで切が付いていた。
しかし、一般人が法廷に立つということは、相当の負担があり、メモがあっても頭の中が真っ白になってしまい言葉にならなかったこともあったようである。お父さんとは、支援してくれている弁護士の先生に代理人委任しようかと話していたところであったが、突然の結審であった。この判決には、関係者全員がこの判決理由に納得していないので、来年1月5日(月)には控訴状を提出し、今度は、代理人弁護士を立てて控訴審を争う予定となっている。
私がざっと読んでも判決理由として無理な個所が8カ所もあったので、今後受任弁護士と協議して行けば、私の気付いていない点についても反論していく場面が出て来るものと思っている。
判決内容については、事実関係からも法解釈論からも許されるものではない。一般常識からは、裁定請求をする能力のない者に、「裁定請求をしようと思えばいつでもできる」(事実上の障碍論からは、そのようになる)と無茶なことを言っているし、法解釈論からは、基本となるところで要件事実を誤って認識して結論が導かれている。
従来の判決理由のような権利の混同は、本来、あるべきことではないので、最大限認めたとしても、老齢年金の一般的事例のみに限られる筈である。ところが、原判決は、「別異に解することを相当とする理由は見い出し難い」としている。この原判決による権利の混同は、特段の理由なく裁判官の観念のみによって行われた。万に一つもあってはならない論理の飛躍と矛盾を抱えたままである。障害年金の特性という事実認定を誤った判決である。しかも、先に述べたように、本判決は、重要な論点につき議論が尽くされていないまま結審となっている。
なお、一番重要な基本権と支分権の混同については、基本的な大前提として、本案は、支分権についての消滅時効の問題であり、支分権に対する権利不行使期間が「5年間あったかどうかを問題としなければならない事件」である。ところが、原判決は、この混同を止むを得ないことと認めるべき特段の事情のないまま独立した権利を混同させている。
また、法律の条文と事実との関係では、受給権者を一番よく診ていた主治医と被告の指定医の間でさえ、障害の有無及び障害の程度の認定に大きな差があり、障害年金については、被告が主張するように、客観的に受給要件を満たした時に発生するとは言えないことである。このことは重要な事実であるので見逃しはできない。
従って、原告は、障害年金の支分権消滅時効については、この障害認定行為等一連の手続きを停止条件付き債権と同様の効果を認めるべきであると主張しているのである。
今回のような判決が出たということは、私が思っていたように、この問題は「コロンブスの玉子」ではなかったということである。名古屋高裁の私の事件のときよりは分かり易い主張をしているのだから、人(裁判官)によって評価が分かれたのである。そのように考えると、本案については、本当に正しい結論は即座には見出し難い問題ということになる。本当の正解は歴史が解決することになるが、現下では法に従って解決しなければならない。判決文の結論は、明文の法律の規定(国年法第18条3項ただし書き)に反し、内簡の考え方に従ったものである。内簡は法令ではない。被告は、5年間遡及分の支払を国年法第18条3項ただし書に従って行っているが、これは、遡及5年を越える分についても根拠規定が変わるものではなく、被告には適用に関する裁量権はない。そして、内簡と同様の内容の法令は、実定法として存在しないのである。
2014年12月27日
逆戻りした判決理由
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 16:23| Comment(0)
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