今週は、嬉しいニュースが入った。障害年金に該当する程度の障害の状態にないとされていたお客様の再裁定請求が下りて、年金証書が届いたとの電話連絡を受けたのだ。このお客様は、ある信用金庫にお勤めで、ご自分で、脳溢血後遺症による障害を理由に裁定請求した結果、障害厚生年金3級には該当しないが、障害手当金には該当する障害の状態である旨の不支給決定の通知を受けていた方である。
当初の受任は、その信金の私の知り合いの勤務社労士が、私が、公的年金の消滅時効問題について取り組んでいることを紹介してくれたので、障害手当金の消滅時効理由の不支給に対する審査請求事件として受けたものである。この問題は、障害年金でも障害手当金でも理屈は同じであり、矛盾だらけの不合理を正し、運用改正なり法改正に持っていくのが私の使命と思っているので、その材料を提供してくださるお客様は大歓迎であり、仲間からの紹介でもあるし喜んで受けた。
この消滅時効問題は、社会保険審査官では、答えは却下又は棄却に決まっているので、社会保険審査会に望みを託して、両者のセット料金として、着手金31,500円で受任した。相当の工夫をこらし様々な書証を整え審査請求したが、社会保険審査官は予想どおり棄却してきた。しかも、自己に不都合な資料は審査資料としないという棄却時の社会保険審査官の常套手段を用いてである。結果は、申立て前に分かっていたが、これには正直腹が立った。
当然予想された結果であるので、本来ならば、直ちに再審査請求をするところ、依頼者と色々な遣り取りをしている内に、新しい情報を掴むことができた。昨年11月1日に信金内で異動し、新しい環境で仕事をしているが、気心の知れた人がおらず仕事がスムーズに行っていないこと。及び、実は目の障害があり右目がほとんど見えない半盲の状態であることである。後者は片目ずつで見ると認定基準の障害に該当しないが、両目を明けてみると右目が機能しなくなってしまうという、障害認定基準上は単独で当て嵌める障害の状態が存在しない余り例のない状況であった。
しかし、日常生活や仕事上障害になっているのは偽らざる事実であるので、これは総合認定の一つの認定要素として認めてもらうべき主張することとして、依頼者には、再審査請求の前に再裁定請求をすることを勧めた。同じ事案については、一事不再理の考え方に従って、受付けされない筈であるが、申請する障害の状態も、日常生活能力等の状態も変わっているので、これは受け付けてもらえた。
先ず、11月以降の診断書を用意する必要があるが、依頼者の通院していた病院は、県下では有名な、厳しい診断書しか書かない病院であった。社労士等が理由を説明して訂正を依頼しても中々訂正してくれない旨の情報を、障害年金を専門にしている仲間の社労士から得ていたので、奥さんに日常生活上の状況を陳述書として書いてもらい、職場では、障害者雇用枠での雇用である旨の証明書を人事部長からもらうことにした。これを病院にも年金事務所にも提出し、眼の方の障害に関しては、分かり易い写真も用意した。
これらを持って、診断書の作成を依頼したところ、主治医は、余り例を見ない、診断書の訂正をしてくれたのである。仲間の社労士からは、近くの病院に変えて、そこから診断書をもらえるようにした方が早い旨のアドバイスを受けていたが、始めの感触から順調に進んだ。しかも、主治医からは、「言ってくれなければ分からない」と言われたようである。
準備万端、再裁定請求をしたのだが、年金事務所のお客様相談室長経由で、再審査請求期限間に結果が出そうかどうかをお聴きしても、参考になる情報は得られなかった。仮に、このまま消滅時効問題について再審査請求をして、両方が認められ再審査請求の結果が早く出てしまった場合、早く結論の出た方が優先適用され、これに、行政行為の公定力があると言われてしまうと非常に厄介なことになるので、少し前のブログで紹介したように、この場合どのような取扱いになるのかを同相談室長経由で日本年金機構に照会してもらった。
結果、理由はよく分からないが、年金優先との回答をいただいたので、念のため、新しい書証を追加して、障害手当金の消滅時効問題についても再審査請求をした。
ところが、これを提出して間もなく、障害厚生年金3級の年金証書が届いたのである。例え、3級でも、障害手当金のような一時金と比べれば、受給権者の受ける利益は、格段に年金の方が大きいので、本件については、これで終結することにして、社会保険審査会には、近く、取下書を提出する予定である。2級相当と主張し審査請求しても棄却される可能性が大きいので、これで一件落着である。
私は、何事につけ、社労士の仕事に関しては、ご本人が手続できる場合は、先ず、これをやってみることを勧め、またそのような方を支援している。しかし、何度も言うが、ご自分でどこまでできるかの見極めが重要である。これを間違うと、重要な権利につき取り返しのつかないことになってしまうので、これだけは頭に叩き込んでおいていただきたい。
東京のお客様で、私に名古屋高裁の判決文をほしい旨依頼してきた方がみえ、デイケア―には通ってみえるが、時々音信不通になってしまう方がみえる。電話に出るのも怖いと言われる。この方は、統合失調症で障害基礎年金2級の受給権者であるが、何人かの弁護士でも負けている時効消滅とされた5年を越える分の年金の支給を求め、審査請求、再審査請求、及び訴訟を一人で行ってみえる。
この行為が、ある程度の知識があるのでなされているのか、統合失調症を患っているのでなせる技なのかが私には分からないので、心配で、私の頭から消し去ることのできない事案である。事情次第で、極力資料提供してきたが、矢張り用途と相手を考えなければ、反って迷惑になってしまうことが分かってきた。ご自分での手続きをどこまでやるかの見極めどきを検討してほしい好事例である。
2014年12月20日
再裁定請求の成就
posted by 326261(身にロクに無い:身に付いていない:電話番号!!) at 15:55| Comment(1)
| 1 障害年金
"再裁定請求の成就"へのコメントではありませんが、書き込みします。
今回、私は障害厚生年金の事後認定で3級の認定を受けました。ただ、事後認定だったので、すこし疑問ももちました。
わたしの場合、初診日は変形性膝関節症で約15年前でした、その後の障害認定日には障害等級には該当しませんでした。その後、平成24年4月に両膝を人工関節にして障害の該当状態になりました。しかしながら、障害厚生年金の制度を知らなかったので、その時すぐには請求することができませんでした。
平成26年の3月になって、偶然障害厚生年金の制度を知って、あわてて申請を行いました。
事後認定であったので、平成26年5月からの支給開始となり、平成24年4月から26年3月の期間2年間については遡及ができませんでした。
この事後認定の申請について、障害状態にありながら、制度を知らなかったので申請が出来なかったのに、その期間は給付をしない、というのはとても疑問に思います。今回私は偶然知ることが出来ましたが、もしその偶然がなければ、知らずに1円も給付を受けることがなかったと思うと、申請しないともらえない(権利があるのに知らないだけ)、知らない人には給付しない、というこの制度にとても疑問を感じます。
さらに、今回の加入期間の月数は初診日までで、認定障害の状態になるまでの月数はカウントされてません。支給開始が平成26年5月であれば、せめて障害の状態になった平成24年4月までの月数までカウントするべきだと思うのですが。
今回、申請制度と月数のカウント、そんな事後認定の制度を疑問に思って、メールしてみました。